ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

文字の大きさ
97 / 136
第5章 鳥籠の少女

52、宮村永遠の好きなもの

しおりを挟む
2回目。

「ウチ、秀頼と滑るの楽しみにしてたぞ」
「おー」

白と黒の色の着いたタンクトップビキニ、通称・タンキニの水着に身を包んだ咲夜は俺と手を繋いでウォータースライダーの上まで登る。
さっきの勢いの速さが脳裏を過る。
怖い以外の感想がない。

「秀頼、怖くなんかないぞ」
「咲夜……」
「怯えるな、お前は強い男だ。……でも、その弱さもまたお前の魅力だ」
「そう……か?」
「たまにはウチに甘えろ秀頼」
「咲夜さん……」

俺の手を握る小さな咲夜の手はいつもよりも強い手に思えた。
そして、目で安心しろと語っている。

「怖くないぞ、固定概念に負けるな秀頼」
「おう!怖くない!絶対負けない!」
「その調子でいくぞ秀頼!」
「おう!」

いざ、咲夜と一緒にウォータースライダーに乗り込んだ。



















「こえええええええええええええええええ」
「ムリィ……、ウチも無理……」
「なんだお前ええええええええ!?」

グダグダだった。




―――――


3回目。

咲夜と若干形は似ているものの、オレンジ色のタンキニの水着に身を包む津軽が相手だ。
緑色の髪に合わせた色に思える。
咲夜と一緒に選んでいたし、ついでにとか言って買ってそうだ。

「てか、なんで俺はお前とも滑らんとあかんの?」
「ふっふっふー、明智君の不幸はステーキの味」
「良い趣味してるよなお前って……」
「……なんか最近ね、明智君のこと、私の前世の知ってる奴とちょっと似てるかなー……って思ったり思わなかったり……」
「はあ?」

からかうように笑う津軽。
俺も微かになんとなく、そういう感情を津軽に持っているような気がしないでもない。
複雑な心境のままウォータースライダーで滑る準備が終わる。




















「とか言えば惚れる?」
「惚れるかああああああああああああああ!」

そういう奴だよなお前は……。
一瞬でも横文字が苦手なのが来栖さんと似ている気がするとか思ったとか言えねえ!
絶対前世はクズ女だわこいつ!





―――――


4回目。

胸の大きい理沙は、シンプルな藍色のビキニの水着を着ていた。
そこになんとなくタケルの趣味が見えて、嫌になった。

「本当にもう3回して疲れているだろうにこんなこと頼んでごめんね明智君」
「ううん、大丈夫だよ……」
「でも1回も2回も変わらないよ!ね、明智君」
「6回滑るんだよ、だいぶ違うだろ」
「そんな不機嫌にならないの。怖いならお姉さんに捕まって」
「お姉さんって、……お前はかなり誕生日遅いだろ」

理沙は3月後半の誕生日。
それより後の誕生日を見付ける方が大変である。

「そういうことじゃないって。ほら、私に身を委ねて」
「あ、ああ」

しっかり者の理沙の手に捕まる。

「本当、もう1人の兄さんみたい」

そのまま笑って一緒にウォータースライダーへ流されていく。

















―――――


5回目。

特にオチのなかった真面目な理沙が終わり、あと2回かとようやく見えた終わりに安堵する。
待っていると絵美がやって来た。

「素敵だよ秀頼君」
「ああ、俺も絵美は素敵だと思う」
「どうせ発展途上の胸ですよー」
「あはは……、冗談だよ」
「いや、それは冗談じゃなくてガチでしょ。何、笑って誤魔化そうとしているんですか!騙されません」

早口でメッチャ否定された。
絵美は白いワンピース型の水着を着ていた。
とても清楚で、ちょっと絵美を異性として見れなくもないくらいに恥ずかしい。

「これは確かに怖いね、秀頼君」
「だ、だよね……」
「秀頼君……」
「ん?」

真面目な声をして絵美が手を握ってくる。
そして、上目遣いで俺を見てくる。

「絶対にわたしの手を離さないで……。置いて行かないでね……?」
「ああ、絶対に離さない!どこまでだってお前を連れて行くさ」
「絶対に!絶対ですよ!」
「絶対そうするさ!」

絵美がそう言うなら離すもんか。
どこまでだって俺が絵美から手を離さない。

「あ。ちょっと!?秀頼君が台から飛ぶタイミング早い」
「え?」





















「あああああああああああああ」

すぐに絵美と離れ離れになった。






―――――


6回目。

いい加減に慣れてきた頃に最後だもんな……。
ぶっちゃけ、もう俺これ終わったら帰って寝たいぐらいの勢いだ。

「お待たせ、秀頼さん」
「え、エイエンちゃん……」

青いビスチェ水着が、永遠ちゃんのラインをよく引き出していた。
流石俺の憧れのヒロイン様だ。
幸せ……、感無量……。

こんな子とくっつきながらウォータースライダーに乗れるなら、もう怖いのなんか我慢できる。

「俺、……ハッピーっす」
「ふふっ、秀頼さんって面白いよね」

めっちゃ拝みまくった。

「秀頼さん……」
「どうかしたエイエンちゃん?」
「私、ようやく報われました……。この景色が見たかったんです。本当に……、本当に……、ずっと全員でプールに行く約束を果たしたい。心の中にはそれがずっと心残りのようにあったんです。ようやく叶っちゃいました!はは……、凄い……、本当に、こんな日が来るのはあり得ないと思っていたんです」

ゲーム中でも見たことないような、1番眩しい笑顔で美しく微笑む永遠ちゃん。
ああ、ようやく永遠ちゃんの夢が叶ったんだ。
原作のタケルでも叶えることができなかった夢。

永遠ちゃんが、秀頼と絵美と理沙と津軽とタケルに混ざって行くはずだったプールの約束。
咲夜とマスターは原作には登場しないけど、ようやくその約束が叶ったのかと永遠ちゃんルートの出来事を思い出す。

「これで満足しちゃあダメだぜエイエンちゃん」
「え?」
「まだこんなのはゴールじゃない。スタートに過ぎないんだ」
「秀頼さん……」
「もっともっと欲を見せていかないと、死んでも死にきれねえ思いだけが残ってしまうぞ!冬には全員で鍋パでもするか?」
「やりたーい!」
「じゃあまだまだ満足するんじゃねーぞ!」
「はい、秀頼さん!」

まだ原作は始まってすらいないんだ。
これから、タケルは様々な事件に巻き込まれることになる。

俺はゲームのエンディングには消えているかもしれないけど、永遠ちゃん、君はずっと笑顔でタケルの側で幸せになるんだ。


















「好きいいいいいいいいいいいいい」

永遠ちゃんが叫びながらウォータースライダーに乗り込む。
好きと叫び続けているので思わずなんのことかと聞き返す。



















「なにがあああああああ?」























「それはああああああああああああああああ」
























「きみ」

バシャーンと俺と永遠ちゃんはプールの地面に辿り着く。

「……」

終わった……。
俺は6回のこの地獄を耐え抜いた。

「おーい大丈夫か秀頼?」

タケルの声がして、プールで死んでいた俺の身体を無理矢理起こしてきた。

「チーン、死んでます……」
「よし、大丈夫だな」

冷たい声でタケルが手を離すので、そのまま倒れないように足に力を入れる。
そういえばウォータースライダーで滑っていた時の会話が気になってしまい、直接聞いてみる。


「それで?何が好きなのエイエンちゃん?」
「あ、あわわ……、えっとですね……」

慌てた声の永遠ちゃん。
さっきまで何が好きかと叫んでいた記憶がまだ残っている。
その答えを聞く前に、ウォータースライダーが終わってしまったのだ。



























「ゴミクズが好きです」
「は?」

顔を赤くした永遠ちゃんの残した言葉に素で返事をしてしまうのであった。













鳥籠の少女編、完結です!

本編始まって、半分以上が鳥籠の少女編で尺を使ってかなりビビりました。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...