ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

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第6章 偽りのアイドル

11、佐々木絵美は会話が気になる

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「あいつら……、俺の居ぬ間に明智先生呼びパクリやがってぇ……」
「十文字君?」
「……お?理沙に佐々木たち。面白いタイミングじゃないか」

廊下でいつものメンバーで歩いていると、十文字君が教室の前に話を聞き耳立てていた。
「兄さん、あんた不審者よ……」と、理沙ちゃんに突っ込まれるも「ははっ」と笑いながら受け流す。

「どうかしたんですか?」
「どうかしたからここにいるのさ」
「ウチらにもわかる様に説明しろ」
「宮村も谷川も見ろよ」

十文字君の視線の先に、お目当ての人物がいた。
やはりというか、案の定秀頼君だった。
その秀頼君の会話に十文字君が混ざらないのは珍しい。

「秀頼君がどうかしたんですか?」
「どうせ野郎4人でくだらない雑談してるだけでしょ?」
「まあまあ。津軽も覗けって!意外とあいつらの会話面白いぜ。俺らがいないぶん秀頼の本音が聴けるってもんだ」
「悪趣味ですね兄さん」
「理沙ちゃん?ちゃっかり十文字君の隣でスタンバってるじゃないですか」

廊下を歩く人数名から怪しい目で見られたが、何がそんなに良い情報があるのかと、わたしたち全員で教室の会話を聞くことになる。

『明智先生、俺にも女を紹介してくださいよ』

秀頼君がクラスメートの山本君におねだりをしている場面だった。
…………これで秀頼君ツテに山本君紹介されたら、わたしショック過ぎて凹むんですけど……。

「秀頼ぃ、ウチ紹介したらぜっこーだー」

咲夜も同じ心配をしている。

『いや、モテないぞ……』

秀頼君はこういうこと言うんですよ。
何年も一緒にいて、常にモテる自覚がないんですよ。

『嘘ばっかりー。お前ギフト持ちだし、成績良いし、運動できるし。結構クラスの女子人気高いんだぜ』
『マジかよ!?誰?誰々?誰に告ればいける!?』
『すごい食い付きっぷりだな明智……』

うー……、結構人気高いんですよ秀頼君は。
頭も良いし。
頼られるとNOと言わないし。
露骨に『テスト範囲教えてー』みたいな女子にも本気でマジレスするんです。
接点持ちたいだけの下心丸出しな女子の意図を全く読めないんです。
初対面であるはずの他のクラスの子からも『勉強教えてー』って言われる状況の異常さに気付いていないくらい鈍感なんです。

「秀頼さんから告白されたら、私OK出しますのに……」
「ウチも」

永遠と咲夜がぼそっとカミングアウトしていた。
今、牽制しましたね。
サラッと永遠がやりましたよ。
策士です。

わたしは初対面の時から待ってます。
周りより長い期間、ずっと待ち望んでいるんですよ。

実際中学に入り男女混ざっての会話は少なくなります。
なぜならお互いを意識しているからです。
その意識をしている恥ずかしさを突っ切られる人のみが彼氏・彼女をゲットできます。

秀頼君は、中学に入ってから5通以上、ラブレターをもらっています。
しかし、本人は1通も知りません。
親友である十文字君が机を漁り、下駄箱を弄りラブレターだけを抜き取るからです。
十文字君曰く『秀頼が幸せを掴むためにその妨げになる女は認めないから』と言ってのけます。

直接『18時に校舎裏で』みたいに直接約束を取り付ける女子もいるみたいですが、すかさず十文字君が『あいつ18時無理っぽいって言われたから伝えた』と秀頼君と女子にフォローしまくるんです。
『秀頼の童貞は悪い女から取られない様に俺が守るんだ』と、いつかにわたしたちに宣言してました。
秀頼君がよくプレイしているギャルゲーとやらの親友役みたいな彼である(たまにあの男がわたしの横でギャルゲーをしている時があるから覚えた)。

『で、モテる明智先生よ。俺に誰か紹介してよ』
『仕方ない』

え!?紹介するの!?
周りの女子全員が顔を上げてみんなで顔を合わせる。

しかもサラッと言ってのけた。
消しゴム貸すよと言い間違えたかと錯覚するほど、躊躇のない返事だ。

「あいつ、この中の誰かの名前出したらぶん殴ってやるからな……」

十文字君が燃えています……。
何がそこまで彼を熱くさせるのかはわかりませんが……。

『え?マジで?』
『めっちゃ頭が良くて経験豊富な子を西山に紹介してやろう』
『うひゃー、めっちゃ楽しみ!しかも経験豊富とかやべー!』

どうやら、秀頼君の知り合いに経験豊富な人材がいるらしい。
わたしたちでは無さそうです。
……が。

「秀頼の奴、そんなビッチと交流関係が……?」
「あ、あ、明智君……。嘘でしょ!?」
「秀頼……、ウチは悲しい……」
「秀頼さん……、信じてたのに……」
「本当クズね」
「あの……、秀頼君はそんな人じゃないですよ……」

ブンブンと首を振る。
ないない、秀頼君をわたしは信じてますから。

『あぁ。木村を紹介してやる。子供5人持ち。かなり経験豊富だ』
『先公じゃねーかあああああああ!』

一安心です。
秀頼君はそんな人と交遊関係はありません。
わかってました。

「はぁ……。びっくりした。秀頼に限ってそれはないか」
「明智君は紳士です」
「秀頼は真面目だからな」
「秀頼さん、頭良いですね」
「クズ疑惑は解消する」
「手のひらくるくるですね……」

秀頼君の株が下がって上がってを繰り返していきます。

『僕はですねぇ、中田さんが気になりますねぇ』
『あぁ、中田な。良い感じに身体付き良いよな』
『なんかこう……エロいよな』
『つい腋に視線行っちゃうよな』

ついに、男子で恋バナを始める集団。
もうちょっと秀頼君は見られている意識をした方が良いと思う。

「うー、秀頼さん。そんなに腋好きなんだ」
「あいつ腋ガチ勢だから」
「気持ち悪いからそんな話しないで」

十文字君の言葉に冷たいニュアンスで円が割り込んだ。
「お、おう」と十文字君は、円にびびっていた。

『女子の幼馴染とか憧れますねぇ』
『憧れるよなぁ。女子の幼馴染とかどこで見付けるのか不思議だわ……。つい、花見の腋に視線行っちゃうよな』

「絵美が女子の幼馴染扱いされてないな」
「ひ、ひ、秀頼君とは幼馴染を超越した仲だからね!わたしも秀頼君を幼馴染扱いしてないし!」
「絵美がそう言うなら……」

いつか秀頼君の彼女になるもん。
なってやるもん!

そんなことを観察をしていた時だった。
わたしの心臓がビクンと動いた。

『山本は?山本は誰狙ってるのよ?』
『俺は……、佐々木さんとか可愛いと思う』
『幼い見た目だけど、しっかり者で良いですねぇ』

ええええぇぇぇ!?
山本君、わたしに気があるの!?

「山本君、ごめんなさい」
「本人知らぬ間に秒で振られたよ!?」

理沙ちゃんから突っ込まれるけど、ネタとかではなくて純粋な気持ちであった。
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