ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

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第6章 偽りのアイドル

18、明智秀頼は体調が悪い

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和ちゃんら下級生のクラス名簿を見返しても、特に『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズのキャラクターは見られなかった。

今年は楽できるな。

しばらくは達裄さんとの修行に集中できそうだ。

「今月のスタチャの返信は何かなー」

絵美らに奇声・奇行を見られた時から普通に黙って手紙を読むようにしている。
おばさんから『当然です』と注意されたからな。

「えっとなになに……」

はしゃぎたい気持ちを抑えながら文章を読んでいく。
スタチャの気持ちになるほどなー、と感情移入をしていきながら読んでいく。

「…………」

全部読み終わった時、俺の頭は真っ白になった。
…………え?



















あれから1週間後。
俺は自宅にタケルを招いた。
最近は色々な感情が混ざり合い、ちょっと体調の悪い日が続いていた。

「どうしたんだお前?」
「…………」
「最近のお前なんか変だぞ?」
「…………」
「理沙もみんな心配している。なんだ、どうしたんだよ最近のお前!?」
「……それは、その………………」
「喋ろっての!なんなんだよ、お前!?」

タケルの突っ込みにビクッとしつつに、ずっと脳内に残っていたスターチャイルドの手紙の文章を思い出す。
そうだった、今日は時間がなかったんだ。

「実は、今日……スターチャイルドが家に来るって。だから1人だと緊張するからタケルに来てもらいました」
「スタチャがお前の家に来るわけねーだろ……」
「来るわけねーよな!?普通ファンの家来ないよな!?」
「な、何したのいったい……?」
「ファンレターに、『日曜日の昼前に明智さんの家に伺います』って……」

件の手紙をタケルに見せた。
「んなわけねーだろ」とか言っていたタケルの顔が手紙を読んで青ざめていく。
お互い大ファンのスターチャイルドだ。
ライブでは会えても、プライベートで会えるわけない人種なのはわかっていた。

しかも、今年に入り一気にスターチャイルドの人気に火が付いた。
1週間の内に3回は代表曲『あなたはチャイルド☆』をどのテレビ局でも見るくらいに育ったのだ。
そんなアイドルが果たして家に来るだろうか……?

「…………なんで来る直前でカミングアウトするの?」
「その……来るわけないと思いつつもしかしたらという思いがあって……。抱え込めなくなってタケルにだけ暴露した。あー、スッキリした」
「俺がスッキリしねーよ!はぁ!?ふざけんなよ!?せめて今日1日ずっと秘密にしてろよ!」
「でも本当ならスタチャに会える」
「た、確かに……」

無理なら連絡くださいと電話番号が書いてあるのだが、プッシュする勇気がなかった。
なので、ズルズルと当日を向かえました。

「これ、スタチャスタチャ詐欺じゃね?」
「なに?そのオレオレ詐欺みたいなやつ……」
「なんだ、秀頼知らねーのか」
「知るかよ」

タケルが手紙を俺に返しながら、コホンとわざとらしく咳き込んだ。

「最近ネットで話題の詐欺なんだよ」
「どんな?」
「スタチャ非公式グッズを公式グッズかのように売り出し、高い金額でメ●カリなどフリマアプリで販売している詐欺。通称スタチャスタチャ詐欺」
「ふーん……。…………今までの会話のどこにメ●カリって単語が出てたんだよ!絶対違うじゃん」

スタチャスタチャ詐欺はあったとしても、絶対にその詐欺内容とこの手紙は関係ないのはわかる。




「これ、あれだよ。お前が今までスタチャだと思って手紙を書いていた女の正体が詐欺師だったパターン」
「え?こ、コワッ!?次からタケルの住所で手紙出そう」
「いや、勝手に俺の住所使うなよ。そういうとこキ●ガイだぞお前……。てか偽物に俺の住所を送るな」

なんかそれっぽい気がしてきた。
スターチャイルドが来るわけねーじゃん。

「だよねー、最初からスターチャイルドなんか来るわけないと知ってたし」
「そのわりには、凄い服装をバッチリに着こなして格好付けてるじゃないか。始めてだよ、そんなに秀頼が凄いお洒落してるの」
「いや、普段この格好だけど?」

タケルが服装にいちゃもんを付けてくる。
特におかしなことはしていないはずだ。

「嘘付け!何ちょっとペンダントとか身に付けて格好付けてんだよ!普段ブレスレットとか付けてねーだろ!さりげなく香水とか使ってやがる」
「たまたまイメチェンしたんだよ」
「意図的なイメチェンだろ!俺普通の服装で来ちゃったぞ」
「んなことどうでも良いんだ。正午まで残り15分。スタチャが来るならそろそろだ」
「なんでスタチャが来る15分前に暴露にしたんだよ。せめて昨日辺りに言えよ」

昨日辺りは頭が真っ白で何をやってたかの記憶もないんだ。
咲夜に勉強教えたくらいしか記憶にない。

「やべーよ、腹いてぇよ……」
「バカお前!俺、1週間ずっとこの不安を抱えていたんだぞ15分くらい耐えろよ」
「1週間これ耐えたのかよ、強すぎるなお前……」
「やっぱり一人称って僕の方が印象良いかな?」
「知らねーよ、なんでも良いよ……」
「スターチャイルドって呼ぶべきかな?スタチャの方が短くて良いかな?」
「知らねーよ、なんでも良いよ」
「理沙も呼ぶ?」
「今日宮村とマスターの店行くって話してたよ」
「エイエンちゃんと同じクラスになったから親交深めてるんだろうね」

理沙のことは知らなくないらしい。
逐一理沙の1日の予定を把握してるのがちょっと引く……。

2人でバタバタして5分くらい過ぎた頃……。






ーーピンポーン。







来客を告げるインターホンが鳴る。

「……ウソぉ?」
「……ウソぉ?」

俺とタケルで顔を見合わせる。
お互い顔が青くなっていると思う。
「はーい」とおばさんが対応する声が聞こえる。


「行くか」
「行くか」

俺とタケルは立ち上がり部屋を出る。
物陰に隠れながら視線を玄関に送るとおばさんが家のドアを開けたところだった。

ゴクリ、喉がなる。
心臓がバクバクだ。

本当にスタチャ?、と楽しみな気持ち。
来るわけねーじゃん、と諦めの気持ち。
この2つがせめぎ合っていた。


ガチャ、と運命のドアをおばさんが開く。


























「おばさーん、こんにちは」
「絵美ちゃんいらっしゃい」

俺とタケルはずっこけた。
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