ひとりも、ふたりも

鈴川真白

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3.期待とひとり

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 それから、図書室に通う頻度が増えた。1人で行くこともあれば、想と行ったときは別々に過ごして、帰りは一緒に帰った。

「ええ、今日も匠ダメなの?」
「ごめん。今度は俺も行くから。つか、ゆっちとのがみみちゃん的にもいいんじゃねえの?」
「ゆっちも寂しがってるから言ってんの」

 ドス、と鳩尾にかわいい一発を食らって苦笑する。ここ最近の俺は完全に付き合いの悪い人間になっていた。

「みみちゃんはさ、付き合い悪いから俺をハブろうみたいな考えがねえのな」
「は? 当たり前でしょ。匠は匠なんだから」
「……いいやつだ」
「匠はあれだよね。変なとこ気にしぃ。うっとうしいから、さっさと冬木くんのとこに行け」

 教室から無理やり追い出されているのに、笑ってしまった。

「今度みみちゃんの好きなグミ買ってくから許して」
「物で釣ろうとするとこがうざいの! また今度遊んでくれたら許してあげる」

 みみちゃんが小悪魔みたいな微笑みを浮かべる後ろから「みゆ顔が怖いから」と、ゆっちが穏やかになだめる。

「うん、今度。俺から誘うね」

 俺はひとりにされたくないことを優先して、2人のいいところを全然わかってなかった。すぐになくなる居場所なんかじゃなかった。

 だからといって、2人にそれを謝るのも違う気がした。

 階段を駆け上がって、図書室の前でジャージを羽織る。図書室へ入ると、先に座っていた想が気づいて小さく手を振ってくれた。俺もそれに応えて、そのまま書棚へ向かう。

 そよそよと髪に当たる風が、いつもより優しかった。

 その後はいつもどおり読みたい本を読んで、たまに想とも話をして一緒の帰り道。

「匠におしゃれなカフェに付き合ってほしい」
「おしゃれな、かふぇ?」

 舌っ足らずになってしまった。想なら、1人でいくらでも行ってそうな場所だ。

 想の顔を覗き込むと、「気になるけど行けてなくて」とはにかんだ。

「そうなんだ? 想、おしゃれなカフェにいそうな人じゃん」
「前に行ってみようとしたんだけど、1人で並んでまでって気になれなくて諦めた」

 なるほど、人気店なのか。

 俺でいいなら、並んでおくのもいいかもしれない。あとから想が来るとわかっていれば、1人で並ぶこともできそうだ。

「霧島とは?」と、思いついた疑問はぶつけておいた。想の誘いを断るような人には見えないし、誘ったら来てくれるだろう。

「そこ、卵料理がメインのところなんだけど渉は卵が好きじゃないんだよね。それに匠から言われてたお礼にもちょうどいいかなーって。匠は卵、苦手じゃない?」
「俺は好きだよ。そのくらいならお安い御用だし、いつ行く?」
「土曜日は? ついでによかったら映画観ようよ」
「観る!」

 駅に着くまでに話がある程度まとまった。同じ時間で別々にチケットを買って、1人の時間を過ごした後にカフェまで一緒に行こうとなった。
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