ショコラとレモネード

鈴川真白

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甘さに揺らめく

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 次の日の放課後、貴臣を待っている間にタツにお礼の品を渡す。貴臣がタツのためにとクッキーを作ってくれた。

 朝のうちに何となく話はしたものの、詳しい話は放課後に持ち越していた。昨日ちゃんと貴臣と話をして、丸く収まったことを伝える。
 
「てなわけで、無事に元通り? になったからタツに感謝の気持ち。俺と貴臣から」
「それが何で芹澤の手作りなの? すげー怖いんだけど」

 付き合えたとタツには言うべきか迷ったけど、貴臣に言ってもいいか確認するのを忘れてたのでそこは明言しないでおいた。すでにタツにはバレてそうな気もする。そのうち話そう。

「俺が適当なの買うか、タツにおごるって言ったんだけど、貴臣も感謝してるから俺が作るって言い始めて。張り切ってた」
「あー、お前が選んだものをおれがもらうのが気に食わないって話ね」
「どういう見方するとそんな話になるんだよ」
「おれはお前より賢いんだよ。ありがたくいただきます」

 さっそく一口かじって「うまっ」と声をあげるタツ。俺も1枚もらおうとしたらガードされてしまった。

「お前はどうせもらってんだろ。これはおれの」

 タッパーにぎっしり詰め込まれたクッキー。俺だってまだ食べられてないのに。

「そうだけど、1枚くらいはいいじゃん」
「感謝の気持ちはぜんぶおれがもらうから、雪斗はちゃんと雪斗の分食べとけよ。たぶん、これとは芹澤の気持ちが違う」
「よくわかんねぇけど、そうする」

 帰ったら、俺も食べるとしよう。昨日もらったけど、自分の分は学校には持ってこなかった。持ってくればよかった。

「雪斗、待たせてごめん。あ、宇野。クッキー味どうだった? フライパンでやったから、ちょっとふんわりしちゃったんだけど」

 戻ってきた貴臣が俺に微笑んだ後、タツに訊ねる。

「作り方とかわからんけど、すげーうまい。大したことしてねーのにありがとう」
「いやいや。すごい助かったよ。宇野には助けてもらってばっかでごめん」
「いーえ。こいつほんっとに鈍くて改めて苦労しそうだよなー。頑張って」

 何やら俺の悪口だなと思ったものの、俺は入れない会話だと察した。2人を背に、俺は帰り支度を始めた。

「そこが雪斗のいいところでもあるから、俺は気にならないよ」
「まあ、芹澤はすでに苦労してきてるもんな」

 この2人の会話って、いつも俺にはよくわからない。遠回しなような、直接的なような。気が合わないようでいて、合うから不思議だ。

「雪斗がいるから、ずっと楽しいよ。それに、宇野に言われなくてもがんばるから心配しないで」

 怒っているわけではないものの、どことなく貴臣の空気がぴりついているのを感じた。どこが気に障ったんだろう。タツはわかっているのか、クスクスと笑った。

「確かに。他人が言うことじゃなかったわ。これ、ごちそうさま」
「いいえ。じゃあ、またね」

 話が終わるタイミングでよし、と俺はリュックを背負う。

「タツ、またな」
「達者でなー。仲良くやれよ」

 タツから謎の見送り方をされて「何だそれ」と笑って教室を出ると、貴臣が「もういいでしょ」と俺の肩を押して前を向かせた。

 返事をせず、わかったと答えるように前を見て廊下を一緒に歩いて行く。これってたぶん、嫉妬だよな。タツの言う通り、俺は鈍い部分もあるんだろうけど意外と貴臣の嫉妬が多いのは、ちょっとわかったかもしれない。

 このくらいのことは、悪くないなと感じる。むしろ、まんざらでもない。にやつきそうな口元を押さえながら、貴臣を見る。

「何、その顔」
「いや、貴臣ってかわいいやつだなと思って」

 ポンポンと頭に触ってみても、貴臣はしれっとしていた。それどころか「ふぅん」と興味がなさそうに返された。

 ここは照れねぇのか。つまんないな、と俺は歩みを進める。

「今日も雪斗ん家に泊まっていい?」
「いいよ。貴臣がくれたクッキー食おう」
「それもいいけど、この前、必死にクリアしてたあれまた一緒にやろうよ」
「え、何だっけ?」

 いつの何のゲームかわからず、俺は首を傾げる。最近クリアしたのは1つあるけど、貴臣は眠ってしまってクリアを見届けていない。となると、その前のやつか?

 あれは必死というよりもサクッとクリアできたから、もう一度やっても同じだろう。

「ほら、俺が寝ちゃったときに雪斗がやってたゲームだよ」
「ああ、やっぱそっちなのか。って、何で必死にクリアしたって知ってんだよ!? まさか、あんとき起きてた!?」
「どうだったかなぁ。寝てたかも」

 悪戯っぽく貴臣が笑って、周囲を確認してから俺の指先をそっとつかむ。それから、手を繋いだ。胸の奥がきゅっと苦しくなって、俺は唇を結ぶ。

 何それかわいすぎる。ときめきすぎて死にそうになるというのはこういうことかと、俺は生まれて初めて実感した。
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