吾輩は、猫であるかもしれない

時貴みさご

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2:どんな言葉でも

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 最近、私の飼っている『猫』たちは忙しない。
 常にあちこちとウロウロしたり、尻尾をゆらゆらさせながらしゃがんでいたりする。
 ……何かを、探しているんだろうか?

 私は心当たりを探ってみる。
 きっと上手くいかないからだ。こうやって、誰かに自分の一番柔らかいところを見せる事。上手く言葉にできなくてイライラする。今だってそうだ。文字に起こしながらも、自分が何を伝えたくてキーボードに指を走らせているのか、わからない。それにでさえ、イライラする。

 じゃあ、何をすればこのイライラは無くなるんだろう?

 薬?
 心理療法?

 ……それとも別の何か?

 ああ、そうだ、音楽だ。
 私は『音楽』が好きなんだ。ジャンルは問わない。大学は音楽学で卒業しているので、そこそこの知識はあると思う。幼稚園の頃からピアノを習っていて、その時理屈ではなく『叩き込まれた』音楽理論の知識は10才だった私に対して、中学生レベルのことをやっていたらしい。これは後から分かったことだ。

 なのに、私は、褒められて育てられなかった。

 ピアノであるコンクールを2回受け、一度目は奨励賞、二回目は予選通過。本選を通過していたら全国レベル。全国的に見ても、上位10%以上の実力があったらしい。でも、幼い私は褒められない=大した事じゃない。と捉えて、練習は強いられるのに褒められない。その積み重ねが私を壊した。
 幼かった私は何かよく分からない衝動に『コップの水が溢れるよう』にピアノの鍵盤に齧り付いた。きっとあの跡は消えない。もう実家にピアノはないけれど。

 でも『ピアノを弾く事』『音楽を聴いたり』するのは好きだ。クラシックでも、ゴリゴリバンドサウンドでも構わない。ただ『そこに含まれた』誰かの思いとか、逆に私を突きつけてくるようなものが好きだ。
 それを受け止めたり、考察するのが好きんだ。

 当時、私は周りのみんなが弾いている『キャッチーで王道な曲』を弾きたかった。
 でも、それは私には不可能だった。出される課題曲はコンクール対策、なんの楽しみもない。何で私はこんなことに精神を絞られていくんだろう。

 私はiPadからバッハのインヴェンションを流す。何も考えたくない時、そのシンプルな『歌声』は心地よかった。ポップスやロックでもいいのだけど、直接歌詞を拾ってしまって余計に気が散る。あんなに嫌だったピアノの練習曲の中で、バッハのインヴェンションは違っていた。本当に『歌う』ような旋律で、ただの『練習曲』だとは思えないくらいメロディアスだった。だから、それだけは嫌じゃなかった。1番と2番なら、音階で歌えるくらいには体に染み込んでいた。ブルグミュラーや、ソナチネ、ソナタもやっていたはずなのに、全く曲が出てこない。

 音楽を流し始めると猫は少しだけ、こっちを見た。


 
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