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第1話
しおりを挟むクローディアは中産階級の裕福な家の娘でお金にがめついお嬢様だった。お金では買えない身分を、伯爵であるヒーローと結婚して手に入れようとした強欲な娘。
それなりに猫かぶって彼を誘惑し良い感じになるが、彼女ははなからオスワルド伯爵の金や地位にしか興味がない。
過去の恋愛経験から女性不信になっていたオスワルド伯爵は束縛が激しく病んでいた、クローディアは彼に不満と狂気を覚えた。
新しい金ズルを見つけた彼女は彼を見限り、別れ際に暴言を吐き屋敷を出て行こうとした。
そんな彼女に失望したオスワルドは妻を屋敷の地下牢に連れて行き……。
その後 本編でクローディアは失踪者扱い、オスワルド伯爵は男やもめとしてヒロイン・ガーベラと出逢う。
教会でシスターとして働き、純粋無垢で明るく元気で笑顔が可愛らしい、まさにヒロインって感じの平民の少女。
生い立ちは不幸で孤独で、でも快活でいつでも笑顔を絶やさない。
そんなヒロインに心惹かれたオスワルド伯爵。
いつも寂しそうで、どこか陰があるけれどイケメンで、笑った顔はどこかあどけなくて抜けているところがあって、身分は高いのに孤児であるヒロインや教会の子供たちを差別しない優しい姿。教会にも多額の寄付をしてくれる。
そんなヒーローに彼女も惹かれていく。
中盤までは優しくカッコよくて紳士的に溺愛してくれるオスワルド伯爵。
夢のようなひと時、甘ったるいほどの蜜月。
ちょっぴり官能的なドキドキする夜の話、街で行われる平民たちのお祭りにお忍びで出掛けたり。
ところが徐々に暗雲が立ち込める。
偶然オスワルド伯爵の前妻クローディアの兄と出逢ったガーベラは彼の黒い噂を耳にする。
それでもオスワルド伯爵を信じたガーベラであったが、なんとなく入った地下牢で、裸のまま氷漬けにされた前妻クローディアの死体を見つける。
恐怖のあまり逃げようとした彼女を後ろに立っていたオスワルド伯爵は無表情のまま地下牢に閉じ込めた。
後半は怒涛の鬱展開。
何ヶ月も続く監禁生活、起伏が激しく精神不安定気味な彼による怒り狂った痛々しい拷問、かと思えば彼が優しく愛を囁き許しを乞う甘い時間。
1人で伯爵家周辺を調査していたクローディアの兄が地下牢に閉じ込められたヒロインを助け出そうとするが、オスワルド伯爵に殺されてしまう。
やがてエンディング。
既に心が死んだ廃人と化したヒロインに寄り添うヒーロー。
太陽の光も届かない地下牢で延々と愛を述べているオスワルド伯爵。
壊れたヒロインはヒーローに愛の言葉を捧げた。
そしてハッピーエンドみたいな締め括り。
(どこがハッピーエンドなの!?死人出まくりじゃない!)
心の中で叫び、床に這いながらオスワルド伯爵を睨む。
椅子に座り涼しい顔で食事を続けている知的な感じのイケメン。親の運営する商会と彼に接点があって、なんとなく私と縁談の話が出て、オスワルド伯爵は興味がないようだったが親のゴリ押しで無理やり食事を一緒にすることになった。
屋敷で日中だけ働いている中年の家政婦さんは食事を並べるとすぐに退室してしまった。
以降2人きり。
(でも、チャンスかも……。彼とは結婚したくない!殺されちゃうもの!幸いなことに決まってないみたいだし)
死にたくない。全裸で氷漬けなんてゴメン。手が恐怖でガタガタ震えた。
「どうした?寒いのか?」
「いっ、いえ!ちっとも」
で、でも、私が彼を回避できても、ヒロインちゃんが危険よね?会ったことないけれど、でも胸糞悪いわ。
この男、サイコパスなの?……性癖?、少なくともメンタルが正常じゃないわよね。
彼の恋愛遍歴なら小説内で記述があった。
過去の初恋の相手や前妻がよっぽどトラウマなんだろう。
「あ……あの、伯爵様」
ここは一発、説教してみるか!これで改心してくれたらいいんだけど……。
私は伯爵様の目を真っ直ぐと見つめた。
「恋愛っていうのは自分と相手、2つの心を通い合わせるものです!」
「……」
ハァ?って言いたげな顔をしてる。でも構うものか。
「一方的に相手を思うだけじゃダメ!そりゃ自分とは違う人間よ。考え方も違う。移り気するときもあれば、心がすれ違うときだってあるんです。相手は人形じゃありません。自分の思い通りにはならない時だってあるでしょう。だから全く違う人生を送ってきた方と奇跡的に思いが通じ合うことがどんなに貴重で、尊くて、素晴らしいことか……!
相手を思いやり、相手の幸せを願うこと、これが真の愛です!相手の気持ちを無視して我を押し通すのは愛とは言いません。ただの自己中です!迷惑以外の何者でもないし、虚しいだけです!言いたいことはそれだけです!以上」
たった18歳の少女が脈絡もなく必死にご高説を垂れている滑稽な図。
伯爵様は目を点にしてポカンと口を開けていた。
変な女だなぁ……。
そう思ってるんだろう。
流石にキレて襲ったりはしないわよね?心証が悪くなったところでこちらは困らない。
こんなおっかない男とは関わりたく無い。
今日の食事会はあくまで両親がセッティングしたもの。
本来なら父が招かれていたが、要らない気を回されて私が代理で来ることになった。
本来のクローディアは強欲で金の亡者って感じの高飛車なお嬢様。
伯爵家のイケメン?付き合えたらラッキーって感じでホイホイやって来るのよね……。前世の記憶が戻る瞬間までは、伯爵様にバリバリ媚びを売るような風で猫なで声でくねくねしながら色目使って喋っていたのに、突然人が変わったように説教って変な子よね。
我ながら電波……?
「想い合えるのは…奇跡、か。例え想い合えていても、人の心は変わる」
彼は寂しげな目で皿に入ったスープを見つめていた。
「当たり前です!生きてるんですから!良い方向にも、悪い方向にも人は変わります。この世に絶対なんかないですから」
そう絶対なんてない。
この人だってなにかきっかけがあれば凶行には及ばないと思う。
私だってそう簡単には死なない!
運命を変えるんだ…。
「あら、もうお帰りになるんですか?クローディア様」
「ご馳走様でした!お料理がどれも美味しかったわ!」
「どうも~。旦那様が女性をお招きになるのは本当に久し振りよ。また、いらしてくださいね」
感じの良い家政婦さんだ。
もう来ることもないけれど……、胸の内で呟きつつ伯爵家の屋敷を出た。
扉に手を伸ばした瞬間だった。
腕が伸びてきてバァンッ!っと激しく扉を叩いた。
恐る恐る振り返ると……
「オスワルド伯爵……」
イケメンの壁ドンは破壊力がありますね。
振り返り、お淑やかに笑ってみせた顔が痙攣している。
「またいつでもいらっしゃい」
「ええ、きっと、たぶん、いつか、さようなら」
永遠にグッドバイ!笑顔を作りながら心の中で中指を立てた。
しかし、運命とは残酷なもので……。
これは……ストーリー補正なの?
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