シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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シャルロットと精霊博士のサンクスギビング・ターキーデー

グレイの幸せ

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研究所は吹き抜けで広かったけれど足の踏み場がないくらい本が山積みで、書類が散乱していた。
食べかけのパンや汚れた服がテーブルの上を埋め尽くし、なんとか客用のソファーとその周辺だけは片付けられている。

ソファーに横並びに座るオオカミ3匹とシャルロット、テーブルの上にちょこんと座っているスノウ。
傍目に見れば面白い図だった。

精霊博士ベンジャミンはスノウの前脚をギュッと握ったり、顎の下を押したりと真面目な顔で触診していた。
彼はスノウの口をぱかっと開けて覗き込んだ。

「お」

何かを発見したようだ。
そして今度はグレイの口を同じように両手で開ける。

「舌が真っ黒に変色してる、これはホゲホゲって言う魔物の毒だね。グレイ、最近 何か変なもの拾い食いしなかった?栗のような真っ黒い棘だらけの実とか」

ベンジャミンが紙の切れ端に描いたのは、栗のイガイガの中に目玉が入った気味の悪いモンスター。

「……街路樹の下に落ちてた栗を拾って食べた。苦くて不味かったから一個だけ」

「あれ食べるとね、身体の中に寄生して魔力を奪われちゃうんだ。グレイを経由してスノウの体内に入っちゃったみたい。まあ大人のグレイには害はないけど、まだ自分で魔力を作れない赤ちゃんには危ないかな」

ベンジャミンは寄生型魔物に効果がある解毒の実を倉庫から持って来た。
シャルロットはそれを受け取ると、小鉢で摩り下ろしハチミツとクラッシュナッツを加えて食べやすく加工した。

そしてスプーンで掬ってスノウの口に入れた。
スノウは食べてくれたが微妙な顔をしつつも、モグモグと咀嚼してる。
ついでに隣のグレイの口にも入れて食べさせてあげた。

「1週間くらいで完全に毒は抜けるよ、後遺症も無いと思う」

「ほんとね、舌がピンク色に変わったわ」

「やったあ!よかったなあ!我が子よ~」

フクシアも嬉しそう。

「すごいわね、精霊に詳しいのね」

「まあね~、俺のお祖父ちゃんが権威のある有名な精霊博士だったんだ。色々と教えてもらったんだよ」

「まあ、そうだったのね」

彼は一瞬だけ顔を曇らせ、そして次の瞬間には興奮しながらシャルロットに食いついた。

「そう言えば聞きましたよ!妃殿下、あなた、魔力もない人間ながら幻狼の子供を産んだンデスってね!?」

「え……エステルのこと?そうだけど……」

「俺はずっと……!精霊の子供を産んだ人間の存在なんて作り話だと思ってました!そそそそそれがっ……今俺の目の前に!」

ガッチリと手を握られ、間近に迫ってくるベンジャミンの顔。
シャルロットはフリーズしてしまった。

「あ……あの……?」

「どうやって精霊の子を身籠るんですか?身体の変化は?人間の妊娠出産との違いは!?どうやって……」

マシンガンで撃たれまくっているような質問責めに戸惑った。
学者のハートに火を付けてしまったのか……。

そして彼はシャルロットの顔をガッチリと掴み、口を無理やりこじ開けた。
禍々しい笑顔は目と鼻の先にあって恐怖した。

「~~!?」

「精霊の子を産んだ貴重な検体!研究のために妃殿下の唾液を摂取してもいいですか?それから血液検査に~身体検査、尿検査に膣鏡検査も~!脳の検査も必要かな~?ヒャヒャヒャ」

「!?」

シャルロットは顔面蒼白。
注射器やクスコを手に迫り来るマッドサイエンティストの狂気の笑みーー。

「だめぇ!」

クロウが果敢にもシャルロットの前に飛び出し、肉球でベンジャミンの顔をパンチした。

「く、クロウ……」

「シャルロットに手を出したら許さない!お前のお尻を噛んでやるんだから!」

「じゃあ、クロウが代わりに俺の研究のために身を捧げてくれる?」

「いいよっ、その代わりにシャルロットに変なことしちゃダメだからね!」

「クロウ……」

騒がしいやりとりをしている側で、グレイはすっかり元気になったスノウの身体をグルーミングしていた。

「お母ちゃん~」

甘えたような声。
スノウは幸せそうにグレイのお腹にすり寄った。

「……」

クライシア大国のお城でブロンズ像の姿で何年も閉じ込められていたあの頃。
自分がこうやって子供を成して親になるとは考えていなかった、想像すらできなかった。

過去のあれこれはどんなに後悔しても拭えずーー自分は幸せになっちゃいけないってずっと思っていた。

凍てついた心を溶かしてくれたのはシャルロットと、番のフクシアだった。

「グレイ~もう拾い食いすんなよな~」

「うん……」

ずっと子供を望んでいたフクシアもすごく幸せそうに笑ってるーーグレイはつられて微笑した。
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