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シャルロットと精霊博士のサンクスギビング・ターキーデー
グレース皇子の非行?初めての夫婦喧嘩
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「遅いわね……」
屋敷の窓の外を覗くシャルロットの顔は曇っていた。
鈍色の空はすっかり真っ暗になっていて、寒さで寂れた庭には木枯らしが吹いている。
日中は家政婦を2人雇っているが、基本的に家事や料理などはシャルロットが担当していた。
皇子妃というものは思っていたより暇過ぎた。のんびりできる性格でもないので動いている方が気楽だ。
自ら率先して家のことはなんでもしている。
夕食を作るのもシャルロットの役目だ。
グレース皇子のアカデミーからの帰りを、シャルロットはずっと待っていた。
今夜のご飯は温かなビーフシチュー。
一人で帰ってきた騎士アヴィから「所用で帰りが遅くなる」と報告を受け、ご飯は先に食べ終えてしまった。
結局その日は就寝時間になっても帰宅せずーー。
この頃 毎週末になると、グレース皇子は夜に外出する増え、遅く帰ってくるようになった。
とはいえ、護衛にゲーテやユーシンが付いているようだから心配はいらないだろう。
一体何をしているのか?グレース皇子本人に聞いても口を割らず、はぐらかされる。
ゲーテに訊けば、「うるせえ!お前に関係ないだろう!」と逆上されるし、ユーシンは苦笑いするばかりで話してはくれない。
クロウは研究室で研究のお手伝いをしているので、最近はグレース皇子とも別行動をしており何も知らないそうだ。
「ふう……」
ベッドの寝室、眠れずにベッドの上で毛布を被り窓から見える月を眺めていた。
「ただいま……シャルロット」
「グレース様……おかえりなさい」
深夜2時過ぎにグレース皇子は気怠そうな様子で帰宅した。
足元はフラフラしているし、かなり酔っ払っているようだ。
湯浴みを済ませて、バスローブ姿になった彼はベッドに入るなりシャルロットに覆いかぶさった。
「……もう、こんな時間までどこに行ってたの?それに、お酒臭いわ!」
パチンッと手のひらで小さく彼の頬を叩いた。
「ううん……ごめん……シャルロット……」
眠そうだ。目は半分しか開いていない。
シャルロットの柔らかな胸元に顔を埋めて、ギュッと身体を抱き締めている。
「お酒弱いのに……あまり飲み過ぎないでください!あなたはクライシア大国の皇子なのよ?酔っ払って外で何かあったら……」
「……」
叱っている途中なのに微睡みの中にいるグレース皇子は、話の途中でシャルロットの口を塞ぐようにキスをした。
久しぶりのお誘いだけれど、今はそんな気分にはなれなかった。
「もう!話を聞いてちょうだい!」
「うん、あとで……」
「も、もうっ……!」
怒った顔のシャルロットに更にグレース皇子は無言でキスをする。
舌と舌が絡み合う深いキス……、そこでシャルロットは違和感を覚えた。
「…グレース様……?」
グレース皇子の顔を剥がし、彼の口を無理やりこじ開けた。
唇の先端にはシルバーに光る小粒のピアス、耳の上部にもイヤーカフが、それに首元には狼と月のタトゥーが……。
「なにこれ?どうしたの?」
グレース皇子らしくない装いだ。
「大丈夫だ。魔法で姿を変えただけ……時間が経てば消える」
「どうして……?」
朝になってグレース皇子が目覚めると、シャルロットが物凄く怒った顔をして隣に座り込んでいた。
すっかり酔いも醒めたグレース皇子は目を点にしている。
「グレース様!いつも夜遅くまでどこへ行ってるの!??」
「……シャルロットには関係ない!し、仕事だ!」
「私はあなたの妻よ?ただ心配してるだけなの、正直に話してくださらない?」
「それは……」
「そのピアスやタトゥーもあなたらしくないわ!どうしちゃったのよ。私に言えないような、やましい場所ですか……?」
「……放って置いてくれ、部外者のお前がいちいち首を突っ込むな!」
「なっ……!ひっ、ひどいわ!」
シャルロットは頰をぷうっと風船のように膨らませ、眉尻を吊り上げた。
グレース皇子も同じように眉間にシワを寄せてシャルロットを睨む。
かつてない険悪ムードに部屋はピリつく。
「たらいま~…、シャルロット、グレース……」
ベランダからクロウが寝室に現れた。
研究所から帰ったところで、人型のクロウはゲッソリとした顔をしてくたびれていた。
「どうしたの?2人とも…」
クロウは2人の顔を交互に見た。
「グレース様のことなんか、もう知らないわ!ばか!」
「フン!だから、最初から俺の事は放って置いてくれって言ってるだろ!」
シャルロットは枕をグレース皇子へ投げつける。
2人の夫婦喧嘩にクロウはオロオロと戸惑っている。
「ケンカはやめよ~」
ポンッとーーオオカミ姿に変化し、困ったように尻尾を垂らしながらベッドの周りをぐるぐる回った。
屋敷の窓の外を覗くシャルロットの顔は曇っていた。
鈍色の空はすっかり真っ暗になっていて、寒さで寂れた庭には木枯らしが吹いている。
日中は家政婦を2人雇っているが、基本的に家事や料理などはシャルロットが担当していた。
皇子妃というものは思っていたより暇過ぎた。のんびりできる性格でもないので動いている方が気楽だ。
自ら率先して家のことはなんでもしている。
夕食を作るのもシャルロットの役目だ。
グレース皇子のアカデミーからの帰りを、シャルロットはずっと待っていた。
今夜のご飯は温かなビーフシチュー。
一人で帰ってきた騎士アヴィから「所用で帰りが遅くなる」と報告を受け、ご飯は先に食べ終えてしまった。
結局その日は就寝時間になっても帰宅せずーー。
この頃 毎週末になると、グレース皇子は夜に外出する増え、遅く帰ってくるようになった。
とはいえ、護衛にゲーテやユーシンが付いているようだから心配はいらないだろう。
一体何をしているのか?グレース皇子本人に聞いても口を割らず、はぐらかされる。
ゲーテに訊けば、「うるせえ!お前に関係ないだろう!」と逆上されるし、ユーシンは苦笑いするばかりで話してはくれない。
クロウは研究室で研究のお手伝いをしているので、最近はグレース皇子とも別行動をしており何も知らないそうだ。
「ふう……」
ベッドの寝室、眠れずにベッドの上で毛布を被り窓から見える月を眺めていた。
「ただいま……シャルロット」
「グレース様……おかえりなさい」
深夜2時過ぎにグレース皇子は気怠そうな様子で帰宅した。
足元はフラフラしているし、かなり酔っ払っているようだ。
湯浴みを済ませて、バスローブ姿になった彼はベッドに入るなりシャルロットに覆いかぶさった。
「……もう、こんな時間までどこに行ってたの?それに、お酒臭いわ!」
パチンッと手のひらで小さく彼の頬を叩いた。
「ううん……ごめん……シャルロット……」
眠そうだ。目は半分しか開いていない。
シャルロットの柔らかな胸元に顔を埋めて、ギュッと身体を抱き締めている。
「お酒弱いのに……あまり飲み過ぎないでください!あなたはクライシア大国の皇子なのよ?酔っ払って外で何かあったら……」
「……」
叱っている途中なのに微睡みの中にいるグレース皇子は、話の途中でシャルロットの口を塞ぐようにキスをした。
久しぶりのお誘いだけれど、今はそんな気分にはなれなかった。
「もう!話を聞いてちょうだい!」
「うん、あとで……」
「も、もうっ……!」
怒った顔のシャルロットに更にグレース皇子は無言でキスをする。
舌と舌が絡み合う深いキス……、そこでシャルロットは違和感を覚えた。
「…グレース様……?」
グレース皇子の顔を剥がし、彼の口を無理やりこじ開けた。
唇の先端にはシルバーに光る小粒のピアス、耳の上部にもイヤーカフが、それに首元には狼と月のタトゥーが……。
「なにこれ?どうしたの?」
グレース皇子らしくない装いだ。
「大丈夫だ。魔法で姿を変えただけ……時間が経てば消える」
「どうして……?」
朝になってグレース皇子が目覚めると、シャルロットが物凄く怒った顔をして隣に座り込んでいた。
すっかり酔いも醒めたグレース皇子は目を点にしている。
「グレース様!いつも夜遅くまでどこへ行ってるの!??」
「……シャルロットには関係ない!し、仕事だ!」
「私はあなたの妻よ?ただ心配してるだけなの、正直に話してくださらない?」
「それは……」
「そのピアスやタトゥーもあなたらしくないわ!どうしちゃったのよ。私に言えないような、やましい場所ですか……?」
「……放って置いてくれ、部外者のお前がいちいち首を突っ込むな!」
「なっ……!ひっ、ひどいわ!」
シャルロットは頰をぷうっと風船のように膨らませ、眉尻を吊り上げた。
グレース皇子も同じように眉間にシワを寄せてシャルロットを睨む。
かつてない険悪ムードに部屋はピリつく。
「たらいま~…、シャルロット、グレース……」
ベランダからクロウが寝室に現れた。
研究所から帰ったところで、人型のクロウはゲッソリとした顔をしてくたびれていた。
「どうしたの?2人とも…」
クロウは2人の顔を交互に見た。
「グレース様のことなんか、もう知らないわ!ばか!」
「フン!だから、最初から俺の事は放って置いてくれって言ってるだろ!」
シャルロットは枕をグレース皇子へ投げつける。
2人の夫婦喧嘩にクロウはオロオロと戸惑っている。
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