シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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シャルロットと精霊博士のサンクスギビング・ターキーデー

ヤンキー少女と憧れのスイーツアートコンテスト

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騎士アヴィはヤンキー少女を追っていた。

彼女は尾行してくるアヴィに気付く素ぶりもなく、校舎を出るとチンピラのような見た目の男と合流した。
その場には高級スーツを着た鼻ヒゲの中年男性が居て、彼は少女が来たところで懐から札束を取り出して差し出した。


「受け取れ、チップだ」

「どーも」

「また次回も頼むよ」

言葉を交わす男らの脇で少女は浮かない顔をしてる。
スーツの男が立ち去ると、チンピラ男は少女に数枚の札を渡す。

「こんだけありゃあ、店のツケが返せそうだ。ったく、あそこで負けてなきゃ大儲けだったのによ~」

「……」

「お前、そういやあのオルゴールは売ったのか?どっかの国の王子が高値で買うって言ってたんだろ」

「売らないわよ。ママからもらったものなのよ」

「でも、それ売った金ありゃ、数年は遊んで暮らせるんだぜ?さっさと売っちまえよ」

「うるさいわね、もう今日の仕事は終わりでしょ。あたしは一人で帰るわ」

「あっ……、おい!……チッ」

スタスタと早歩きで退散したヤンキー少女、取り残された男は舌打ちして壁を蹴った。
隠れて見ていたアヴィは怪訝な顔をしてそのやり取りを見ていた。

あの少女の名前はジュリアン・スミスーーグレース皇子が追っていた人物で間違いなかった。

*

ヤンキー少女・ジュリアンは再び校舎の中へ入る。

どのフロアも人集りでお祭り騒ぎだ。
学生祭にやって来るのは何年ぶりだろうーー、懐かしさに目を細める。

小さい頃、死んだ母に連れられて毎年ここへ来ていた。
ここは母の母校で、卒業後は有名ホテルのレストランで働くケーキ職人。大臣をしていた父とはパーティーで出会い、私生児として未婚でジュリアンを産んだ。子育てのために夢を諦めて実家へ戻り、小さなケーキ屋さんを作って生計を立てていた。
貧しかったけど祖母と3人で幸せに暮らしていた。

ジュリアンが9歳の時に母は突然事故で死んでしまった。
それ以来、その後は祖母と二人暮らし。まだ成人前で学歴も何も無い自分が働ける場所なんて限られていて、生活の為に“悪いこと”をして金を稼いでいた。

父が西大陸からの移民二世ーー父系に魔人の血が入っていたようだ。
魔力が微弱なので魔法こそ使えなかったが、ジュリアンには精霊を見ることができた。

その能力を買われて、売人に依頼されて精霊を捕獲する仕事をし、ボーイフレンドのソンには助手をさせていた。

「……スイーツアートコンテスト……」

ガラス張りの壁の前に立った、まだ準備中で入場はできなかったが部屋の外から室内が見える。
芸術品のような大きなケーキが沢山展示されていた。
その周りには黒いスーツ姿の審査員や、エプロンを着た生徒たちが楽しげにおしゃべりをしてる。

母はこのコンテストで優勝したことがあるといつも自慢していた。
このコンテストを見るために毎年仕事を休んで学生祭に連れられた。

ジュリアンもケーキが大好きで、母と一緒によく家でケーキを作っていた。
母のようなステキなケーキ職人になるのが子供の頃からの夢だった。

自分も大きくなったらロレンス学園に入学して、スイーツアートコンテストで優勝するんだ!っていつも母に話していた。

「……それなのに、あたしは何をやってるんだろう……」

怪しい仕事にまで手を染めて、非行ばかりを繰り返して、心配してくれる祖母にまで反抗して夜遊びばかり…。

ジュリアンはケーキを見つめながら、ため息をついた。

ーー死んだ母からもらったアンティークオルゴール。
昔、父が母へ贈ったプレゼントらしい。

不思議なオルゴールで、ゼンマイを巻いてあの優しくて美しい音色を聴きながら眠りにつくと、死んだ母と一緒にケーキを作っている幸せな夢を見ることができた。

夢の中では、母の声も体温も匂いも生々しくて、ケーキの味もしっかりと感じることができた。
現実かと錯覚するほど夢はリアルで、まるで過去にタイムスリップしているような感覚になる。

西大陸からやって来たというグレースと名乗る王族の人間が、わざわざジュリアンに接触して来て、オルゴールを売って欲しいと頭を下げられた。

けれど、あのオルゴールを手放してしまえば、もう二度と母に会うことはできない。
どんなにお金を積まれても、それだけは失いたくなかった。

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