27 / 262
*シャルロット姫と食卓外交
湖畔で美味しいカスタードプリンを
しおりを挟む「わぁ~~」
市場に次いでシャルロットがグレース皇子に連れて来られたのは、城の近くにある美しく広大な湖だ。
湖畔の緑の上に布を敷いて、そこにグレース皇子と二人で座り白い水鳥を眺めていた。
「グレース様。わたし、たまごプリンを作ってきたんです」
「シャルロット姫はいつも変わった料理を作るな」
この世界にはケーキやタルトなどのスイーツの類あるが、日本で一般的に食べられているようなプリンは無かった。
材料もシンプルだし前世でもよく作っていたので試してみたのだが、思った以上によく出来ていた。
蒸し器なんてないので、代用品探しに苦労はしたが美味しく完成して満足だ。
「騎士の皆さんもいかがですか?」
「そんな……畏れ多い…」
「お気になさらず!今日もわざわざお付き合いいただきましたので、ちょっとしたお礼ですわ。みんなで食べた方が美味しいわよ」
「お前らも食べるといい」
恐縮して遠慮する騎士二人に白い器に入ったプリンを手渡した。
グレース皇子の一言で素直に受け取った騎士の二人はおずおずと匙を手にして立ったままプリンを食した。
プラチナブロンドで碧眼の若い美少年騎士キャロルはプリンを一口食べると匙を咥えたままポッと頬を赤くして目を大きく開いた。
瞳をキラキラさせて無邪気な顔をしている。
とても美味しそうに幸せそうに食べる顔は可愛くてシャルロットは微笑ましくなった。
「初めて食べました。とても美味しいです、姫様」
もう一人の騎士アダムは穏やかにシャルロットに笑いかけた。
肩まであるワンレングスヘアに緑色の瞳に彫りの深い顔をした、これまた美形だ。
「おかわりはいかがですか」
「え!」
シャルロットは騎士キャロルにもう一つプリンを渡す。
キャロルは嬉しそうな顔をするが、横からアダムが苦笑いをする。
グレース皇子はふっと柔らかく笑い言った。
「構わん、シャルロットは騎士に餌付けするのが趣味だからな。遠慮するな、食べるといい」
「はい。えっと、姫様、いただきます!」
「ふふ、どうぞ」
好評なようだし、今度は騎士団のみんなにも作ろうか。
でも数が数だし大変だろうか…?シャルロットはワクワクしていた。
*
「グレース」
雨の昼下がり。
自室でいつものように書類に目を通しているとバルコニーに人影が突如現れた。
「クロウ?」
グレース皇子がバルコニーに目を移すと、そこには漆黒の髪と黄金の瞳を持つ美丈夫が気まずそうな顔をして口をもごもごさせながらグレース皇子の様子を伺うように立っていた。
幻狼クロウの仮の姿だ。
長くグレース皇子と離れて過ごした影響で力が尽きたんだろう。
仮の姿は省エネルギーらしい。
狼の姿ではないが、尻尾と耳がしゅんっと垂れ下がってるのが容易に想像できた。
遠く離れていて姿は見えずとも、互いの感覚を共有しており元気にやっていることは分かっているからさほど心配はしていなかった。
昔から兄弟喧嘩のような喧嘩を繰り返していたので、クロウの家出なんていうのも珍しくなかったからだ。
「ごめんなさい」
「……おいで、そろそろ昼食を取ろうと思っていたんだ。朝から仕事詰めだったんだ。先程、婚約者が軽食を持ってきてくれたんだが、お前も食べるか?」
グレース皇子が声を掛けると、侍女が近くのテーブルに料理の皿を置き紅茶の用意を始めた。
グレース皇子が席に座ると、クロウは仲直りができたことと美味しそうな料理を見て気分が上がったのか楽しそうに笑いながらグレース皇子の向かいに座った。
「わ、モンティクリスト?」
サンドイッチに卵液をつけて焼いた料理だ。
サンドイッチは一般的にあるのだが、グレース皇子は初めて目にする料理であった。
「知ってるのか?」
「昔の恋人がよく作ってくれたんだよ」
「ああ、お前が“人間”だった頃の話か?」
「懐かしいなあ、会いたいなぁ」
クロウはうわの空で小さくため息をついた。
思い出していたのは先日街で会ったあの少女の姿だった。
雨はしとしと降り続く。
恋い焦がれる幻狼クロウの感覚につられてグレース皇子は共鳴する。
こんな風に感覚を共有してしまうから厄介なのだ。
グレース皇子の父・クライシア王と契約を結んだ幻狼コボルトなんてまさにややこしいことになっている。
王が愛する正妃はグレース皇子の母親ただ一人。
それなのに王の幻狼コボルトが王妃ではない女官に恋をしてしまったからそれは大変だった。
幻狼コボルトが恋し妻としたのはバルキリー夫人。
王と言えど一夫一婦制が常識で側室制度もない国であったため、対外的には現王の公妾となっている。
貴族たちは額面通りに受け取っているが、実際には王と夫人は愛人関係ではない。
実にややこしい。
「お前、バルキリー夫人とコボルトの旅行に同行してたって本当か」
「楽しかったぞ、海も近くて」
「コハン団長が疲れ切っていたぞ、散々振り回したんだろ」
「あの人、第二騎士団長で獣人のくせに体力がないんだね~」
クロウは笑った。
グレース皇子は苦笑した。
「そうだ、クロウ、今度俺の婚約者を紹介しよう」
「良い感じの子なの?」
「ああ、お前もきっと気にいるよ」
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
若返った老騎士の食道楽~英雄は銀狼と共に自由気ままな旅をする~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
あるところに、数百年周期で現れる魔王がいた。
人族から生まれ、闇に魅入られし者、妖魔を統べる魔王と呼ばれる存在。
度々現れては、人々を恐怖のどん底に貶めてきた。
此度、その魔王との戦いに終止符を打った男がいた。
名をシグルド卿といい、六十歳を迎えた老人の男だ。
元平民にも関わらず、爵位を得て史上初の将軍にまで上り詰めた英雄である。
しかし、魔王と一騎討ちの末に相打ちになった……と世間では言われていた。
当の本人は実は生きており、しかも若返っていた。
そして自分が生きていることが知られると、色々と面倒なことになると悟った。
それにどうせなら、自由の身になって世界を旅したいと。
これは役目を終えた英雄が旅をし、様々な人と出会い、美味い物を食べていく物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる