シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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恐怖のアンデットライン農園へ!首無し騎士と拗らせ女神のアイスクリームパーラー

デュラハンの魔法のナッツ

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 呉服店をハシゴし、すっかりシャルロットの着せ替え人形にされてしまっているデュラハンを、遠くからベンジャミンや騎士らは眺めていた。

「ほら、明るい色のブラウスもとても似合ってるわ。顔色も良く見えるし、このコートもよく似合ってますわ。どこかの国の貴公子みたいね」

「はう…。こんなにお洒落な洋服は……初めて買うよ」

 シャルロットに見立ててもらった服装で街を歩くと、周りの目がいつもと違っていた。
 いつもなら恐れられ、遠巻きに見られていたのだが、今は乙女や婦人からの熱視線が注がれて、デュラハンの方がビクビクしている。

 演劇が盛んな通りでは舞台役者にスカウトされるし、通りすがりの娘は頬を赤らめはしゃぎながら声を掛けられた。

 デュラハンは緊張し、オドオドしながらも笑って挨拶を返し、声を掛けてくれる街の人に魔法のナッツを配った。

「こんなに美味しいナッツは初めてよ。しかも、手荒れや身体の皮膚病が治まっているわ」

「私は唇や舌の出来物が消えてる!すごいわね~!あなたの魔法!」

「あら、目の下のクマも消えてるわよ」

 娘達はオーバーリアクションで驚いていた。
 デュラハンは嬉しそうにニコニコ笑った。

「致命的な病気や怪我は一粒では無理だけど……、ちょっとした症状なら薬を飲むよりも美味しくて効果的だよ」

 1人、また1人とデュラハンの側に人が集まってきた。
 大勢に囲まれテンパったデュラハンの首が落ちてしまい、一同はギョッとするが、シャルロットが機転を利かせて落ちた頭を直すとチャーミングに笑って誤魔化した。

「マジックよ!デュラハンさんってすごくお茶目な人でね、マジックが得意なの」

 エスター国で庶民の間で流行っていた奇術の一種だと説明すると、街の人たちは納得してくれた。

「へー、兄ちゃん、面白いなあ」

「マジックなの?クオリティー高いわね、どうなってるの」

 みんなが笑顔になっている。
 首無し騎士として、ずっと怖がられていたデュラハンは思わず感動して、今度はボロボロ泣きだした。
 シャルロットは苦笑しながら、彼の背中を撫でてあげる。

「よかったら、アンデットラインにも遊びに来てください。デュラハンはそこでカシューナッツ農園をやってるわ」

「アンデットライン……?あそこは葬式の時か、大学病院へ行く用事でもないとなかなか行けないわ」

「ゴーストが出るって噂だもんね~」

 みんなは同じ反応だ。

「あのね、アンデットラインに棲んでいるのはゴーストじゃないわ。精霊たちなの。精霊ってね、敬う気持ちや真心を持って接すれば、人間へ有り難い加護をもたらしてくれるはずよ」

「精霊……?」

「そうよ。お日様や木々や水、火や大地、この世の全てに精霊がーー魂が宿っているの。神様のようなものね。私達の事を支えてくれているのよ。恐ろしい存在ではないわ。アンデットラインの土地には不思議な力が宿っていてね、普通の人間では見ることのできない精霊の姿が見えちゃうのよ」

 シャルロットは熱弁した。
 こうして開拓地に理解を深めるのも、精霊王の末裔である自分の役目かもしれない。

 街の人とも少しだけ打ち解けることができたデュラハン。
 魔法のナッツのお礼にと、リンゴやスパイスクッキーを貰ってご機嫌そうだった。

「お姫様ってすごいですね、僕が何百年かかってもみんなと話すらできなかったのに…輪の中にすんなり入れるなんて」

「私の力じゃないわ。人間って知らないものを恐れる生き物なの。デュラハンさんの人となりを知れば、みんな好きになってくれるわよ」

「そ、そおかな……?」

 談笑しながら街外れまで来ると、シャルロット達の目前に銀色の馬車が停まり、中から黒いスーツ姿の白髪頭の男性が降りてきた。

「申し、そこのお方」

 彼はシャルロットとデュラハンに声を掛けた。

「……はい、どちら様ですか?」

「私はこの先にある城に住むエルジェーベト夫人に仕える執事のグラハムでございます。街の人から魔法のナッツについてうかがいまして…よろしければ私も魔法のナッツをいただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「良いですよ。待ってください」

 デュラハンは麻のバックに入れていた余った殻付きのヘーゼルナッツの実を握ると、祝福を掛けた。
 拳が白く光ったので、執事のグラハムは目を見張り驚いていた。

「ごめんなさい、さっき街の人たちに配っちゃって3つしか残ってないんですが…」

「構いません。親切なお方、ありがとうございます。私の主人も喜ばれます」

 執事グラハムは深々と感謝を述べて、デュラハンにお金を渡すとニッコリ微笑んで退散した。

「あっ……あの、お金は要らな……」

 馬車は走りだしてしまった。
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