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4不埒な兄王子
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デイジーの部屋を出たクインスは顔を真っ赤にしながらため息を吐いた。
クインスはこの国の二番目の王子、上も下も兄弟は男だ。
女物の衣服など持っていない。
侍女に訳を話すと、すぐに侍女のお仕着せと下着を用意してくれた。そうして侍女の服を着せられたデイジーはやっと寝室から出ることができた。
尻尾はお仕着せの長い丈のスカートで隠れたが、猫耳はどうしても隠せない。
侍女に長い髪を編み込んもらって嬉しそうだ。
「お人形さんみたいですね~、すごくかわいいわ!」
「ありがとう~!」
クインスは眠り猫が人の姿になることは知っていた。
精霊では珍しくないことだったが、突然の事態で驚いた。
「クインス、どう?似合ってる」
「ああ、うん」
クインスは心ここに在らずだった。
トントンとデイジーの部屋の扉がノックされる。
「クインス、朝っぱらから騒がしいぞ。どうしたんだ?」
クインスの兄で王太子のリリウムだ。
リリウムにも羽化を自慢しようーーデイジーが身を乗り出すと、クインスはぐいっとデイジーの腕を掴んで寝室に押し込んだ。
その直後、リリウムがデイジーの部屋に入ってきた。
「なんでもありません、兄上。お騒がせして申し訳ございませんでした」
「焦っちゃってーなんなの?さてはお前、俺に隠れて美味いもんでも食ってたろ?」
「違います。出て行ってください」
「デイジーはどこだ?一回モフらせろ。最近レディーと別れちゃって夜よく眠れないからまた貸してくれよ」
「デイジーはモノじゃないですよ」
「何怒ってるんだお前」
リリウムとも何度か一緒に眠ったことがある。
不眠とは縁遠い能天気な男で、デイジーは陰ながらチャラ男二号と呼んでいた。
女好きで恋多き王子、貴族の娘から侍女まで節操なしに手を出しまくるのだ。
女性は全てレディーと呼び、付き合った女性の名前などまともに覚えていないだろう。
「隙あり!」
面白がりながらクインスの隙をついて寝室にドアを開けるリリウム。
扉の前にいたデイジーは突然開いたドアの弾みでその場で尻餅をついてしまう。
「ーーおお!」
尻餅をついたまま呆然としている羽化したデイジーを目にしたリリウムの顔がパァッと明るくなる。
クインスはすぐにドアを閉めた。
「もしかして今の娘、デイジーか!?可愛いじゃないか!」
「兄上、帰れ!」
「独り占めする気か?」
「帰れ!」
クインスは兄を部屋から締め出した。
侍女もぺこりとお辞儀をし退室する。
二人きりになると途端に沈黙するクインス、デイジーは恐る恐る寝室から出てきた。
「デイジー、兄上には気をつけろ。手が早いからな」
「だ……大丈夫よ。チャラ男二……リリウムの事そんなに好きじゃないわ」
デイジーはふるふると首を横に振る。
「はあ、飯にするか。ケーキを持ってこよう」
「あ、あの。今日はクインスと食べてもいい?せっかく人の姿になれたんだもの。一緒に朝ごはんを食べたいわ。クインスと同じものがいい!」
「侍女に用意させよう」
「わぁい」
二人でテーブル越しに向かい合って朝食を摂るなんて思ってもいなかった。
「ミオン、お洗濯手伝ってもいい?」
「デイジー、あら、手伝ってくれるの?じゃあシーツを干すの、手伝ってくれる?」
「はぁい」
人間の姿だと使用人のお手伝いもできる。
食っては寝るで申し訳ないと思っていたのだ。少しは働こうと前々から思っていた。
(人間の手って便利)
クインスはこの国の二番目の王子、上も下も兄弟は男だ。
女物の衣服など持っていない。
侍女に訳を話すと、すぐに侍女のお仕着せと下着を用意してくれた。そうして侍女の服を着せられたデイジーはやっと寝室から出ることができた。
尻尾はお仕着せの長い丈のスカートで隠れたが、猫耳はどうしても隠せない。
侍女に長い髪を編み込んもらって嬉しそうだ。
「お人形さんみたいですね~、すごくかわいいわ!」
「ありがとう~!」
クインスは眠り猫が人の姿になることは知っていた。
精霊では珍しくないことだったが、突然の事態で驚いた。
「クインス、どう?似合ってる」
「ああ、うん」
クインスは心ここに在らずだった。
トントンとデイジーの部屋の扉がノックされる。
「クインス、朝っぱらから騒がしいぞ。どうしたんだ?」
クインスの兄で王太子のリリウムだ。
リリウムにも羽化を自慢しようーーデイジーが身を乗り出すと、クインスはぐいっとデイジーの腕を掴んで寝室に押し込んだ。
その直後、リリウムがデイジーの部屋に入ってきた。
「なんでもありません、兄上。お騒がせして申し訳ございませんでした」
「焦っちゃってーなんなの?さてはお前、俺に隠れて美味いもんでも食ってたろ?」
「違います。出て行ってください」
「デイジーはどこだ?一回モフらせろ。最近レディーと別れちゃって夜よく眠れないからまた貸してくれよ」
「デイジーはモノじゃないですよ」
「何怒ってるんだお前」
リリウムとも何度か一緒に眠ったことがある。
不眠とは縁遠い能天気な男で、デイジーは陰ながらチャラ男二号と呼んでいた。
女好きで恋多き王子、貴族の娘から侍女まで節操なしに手を出しまくるのだ。
女性は全てレディーと呼び、付き合った女性の名前などまともに覚えていないだろう。
「隙あり!」
面白がりながらクインスの隙をついて寝室にドアを開けるリリウム。
扉の前にいたデイジーは突然開いたドアの弾みでその場で尻餅をついてしまう。
「ーーおお!」
尻餅をついたまま呆然としている羽化したデイジーを目にしたリリウムの顔がパァッと明るくなる。
クインスはすぐにドアを閉めた。
「もしかして今の娘、デイジーか!?可愛いじゃないか!」
「兄上、帰れ!」
「独り占めする気か?」
「帰れ!」
クインスは兄を部屋から締め出した。
侍女もぺこりとお辞儀をし退室する。
二人きりになると途端に沈黙するクインス、デイジーは恐る恐る寝室から出てきた。
「デイジー、兄上には気をつけろ。手が早いからな」
「だ……大丈夫よ。チャラ男二……リリウムの事そんなに好きじゃないわ」
デイジーはふるふると首を横に振る。
「はあ、飯にするか。ケーキを持ってこよう」
「あ、あの。今日はクインスと食べてもいい?せっかく人の姿になれたんだもの。一緒に朝ごはんを食べたいわ。クインスと同じものがいい!」
「侍女に用意させよう」
「わぁい」
二人でテーブル越しに向かい合って朝食を摂るなんて思ってもいなかった。
「ミオン、お洗濯手伝ってもいい?」
「デイジー、あら、手伝ってくれるの?じゃあシーツを干すの、手伝ってくれる?」
「はぁい」
人間の姿だと使用人のお手伝いもできる。
食っては寝るで申し訳ないと思っていたのだ。少しは働こうと前々から思っていた。
(人間の手って便利)
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