眠り猫と不眠王子のwin-winな関係

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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エピローグ

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朝ーーいや、もう昼間だ。
 身体は少し痛むし怠いけれど、スッキリとしている。

 目が覚めるとネグリジェを着せられていて、ベッドの横にはクインスの姿はなかった。

「痛たたた」

 歩くたびに、下半身が痛い。
 異物感はないけれど、そこがぽっかりと空いているような違和感がある。

 身体を乾いた布で拭きワンピースに着替えて簡単に髪をまとめて部屋を出ると、下の階からリリウムの叫び声が聞こえた。

 普段リリウムが占拠している居間を覗くと、頭を押さえてうなだれているリリウムの姿があった。
 その目の前には激怒したクインスの姿ーー。


「王太子を殴るとはどういうことだ!」

「デイジーに媚薬を盛ったのはお前だろ!」

「いいだろう、お陰でお前は美味しい思いをしたんじゃないのか!?」

 詰問されても悪びれる様子もないリリウムの頭を、クインスはまた殴った。

「痛ぇ!」

「今後デイジーの半径一メートル以内に近付くな」

「はぁ?」

「約束しろ、兄上」

「いーやーだー」

「殺すぞ?」

「怖い怖い怖い怖い」

「じゃあ、約束破ったら去勢するからな」

「それもヤダ~」

 兄弟喧嘩をしているようだ。
 デイジーは静かに笑った。

 ふとクインスと目が合った。ーー彼はリリウムの襟元を掴みながら、照れたように目をそらす。
 その隙にリリウムは逃げた。

「デイジー、またね!」

「兄上!」

 逃げ足の速い男だ。

「身体はもう大丈夫か?」

「うん、平気」

 デイジーは笑った。

「すごいクマ、昨夜は眠れなかったの?」

「寝れるわけないだろ」

「眠り猫のわたしがいるのに、眠れないことってあるんだね」

 ドキドキしながらクインスと見つめ合っていると、彼の手が頬に伸びてきた。

「クインス……」

「デイジー」

 名を呼ばれる。
 クインスの真剣な顔がデイジーの目と鼻の先まで近付いてきた。

 彼を受け入れるように目を閉じた瞬間。
 ポンッと何かが弾けるような音がして、目を開けるとデイジーは猫の姿へと変化していた。

 まだ大人になりたてで変化が不安定のようだ。

 クインスはクスクスと笑っている。
 デイジーは恥ずかしげにはにかみとクインスの脚にすり寄った。

「今夜一緒に眠らない?安眠を提供するわ」

「ああ、よろしく」

「うふふ」

 あのベッドは一人で眠るには広過ぎるんだものーー。

(わたしも、もう独り寝はできない身体になっちゃったかも)

 眠り猫と不眠気味の王子、二人のwin-winな関係?は始まった。
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みんなの感想(2件)

niboshi
2019.11.15 niboshi

早速のお応えありがとうございます。とっても嬉しい❗
期待度MAXでお待ちしてます🎶
よろしくお願いいたします❗

2019.11.15 ムギ・オブ・アレキサンドリア

そう言ってもらえて嬉しいです!

頑張って書きます(⌒▽⌒)♪

解除
niboshi
2019.11.15 niboshi

初めまして。
軽快な話し運びが面白かったです
チャラ男兄様のお話も覗き見してみたいです。

2019.11.15 ムギ・オブ・アレキサンドリア

感想ありがとうございます^_^

チャラ男兄のスピンオフも書いてみます♪

解除

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