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第一章 毒娘、冒険者になる
14:ワイバーン君のおかげで小金持ちになりました
しおりを挟むあの後、逃げた若年冒険者たちが先輩冒険者の人たちを引き連れて救援に来てくれてね、まぁ全然遅かったんだけど。
結局ギルドまでワイバーンを丸ごと運んでもらった。
討伐証明部位とか分からなかったから助かったよ。
オーフェンに着けばみんなの注目の的。一気に騒がしくなる。
私はあんまり目立ちたくないので、そしらぬ顔でみんなに付いていった。
さもこの人たちが倒したんですよーって顔で。
救援に来た人、なんかCランクらしいし。
でもギルドに着けばそうはいかない。
速攻でギルド職員のお姉さんに確保され個室へと連行された。
登録の時の図書委員のお姉さんだ。この人もしかしてお偉いさん?
「で、ピーゾンさん。詳しいお話を聞かせて下さい」
「えっとですね……」
私はワイバーンに襲われた経緯を説明した。
やはり街の近く、あの河川敷にワイバーンが目撃された事などないらしく、お姉さんは大層驚いていた。
かなり離れた山に巣くっているという情報はあるみたいで、そこから何らかの理由で遠出してきたのでは? くらいの推測しかできないらしい。
「それでどのように戦い、どのように倒したのですか?」
「うーん、それ言っちゃうと固有職のスキルとか説明する事になっちゃうんですけど……」
「もちろん言える範囲で構いません」
ギルドに秘匿義務があるのは知ってるけど、固有職の情報は国で管理しているもののはずだから、全部説明するのはどうかと思うんだよね。
ましてや私の場合、ギルドからも危険視されそうだし。
ただ私が【毒殺屋】である事は知っているわけだから……
「毒で倒しました」
「やはり……あのワイバーンは解体しても大丈夫なのですか?」
「あ、それは大丈夫です。もう毒は消えてますんで」
ああ、それが心配だったのか。
毒殺したのは感づいていたんだろうな。
私の職を知ってて無傷のワイバーンを見れば分かるか。
「しかし……これは話せなければ話さなくて結構ですが、ピーゾンさんの使う『毒』は即効性……即死させるものなのですか? 私は毒=遅効性というイメージなのですが……」
「ん? 遅効性ですよ?」
「……だとすれば、毒が効果を現すまでワイバーンに攻撃されたのでは?」
「ん? されましたよ?」
「えっ」
「えっ」
何を当たり前の事を言っているのか、このお姉さんは。
お互いに聞きあう感じになってしまった。
……しかし即死させる毒か、あったら楽だったなぁ。レベルアップすればワンチャンあるか?
「……ピーゾンさんに怪我はない様子。という事はワイバーンの攻撃に晒されながら毒の効果が出るまで戦い続けたと……あっ! 森に逃げ込んで時間を稼いだと、そういう事ですか!」
あー、長時間の戦闘でノーダメージってのが理解不能だったのかな。
回避主体の冒険者だって居るでしょうに……初心者には無理だろうと思われたか。
まぁお姉さんを納得させるには、言うとおりに誤魔化しておいたほうがイイかもね。
というわけで、私は毒らせた後、森に逃げて倒れるのを待ったという感じにしておいた。
その後、評価の話になった。
Eランク冒険者がBランクの魔物を倒した事例は極めて珍しく、少なくともオーフェンのギルドでは初めてとの事。
……Bランクだったのか! ワイバーンくぅん!
その少ない事例の中では例外的にDやCにランクアップされた事もあるそうだ。
でも基本的には格上の魔物を倒した場合、評価点がプラスになるだけでランクアップはしないというのがギルドの基本方針らしい。
つまりEランクの私がDランクの魔物を倒せば評価は2点。二回依頼を達成したことになる。
じゃあBランクを倒した場合はと言うと6点が最低値。
あとはギルド判断でどれくらいプラスになるか、という所らしい。
私は最低値でいいと言っておいた。
目立ちたくないし、実力に伴わないランクアップされても困ると。
と言うか、依頼を受けていないワイバーンを倒して評価点が貰える事自体がおかしいと思う。
これが許されるなら依頼を受けずにバンバン倒しまくればランク上がるわけだし。依頼報酬はないけど。
まぁ今回はワイバーンが街の近くに現れたって事で緊急依頼のようなものなのかもしれない。
要は特殊な状況だったってだけだよね。
貰えるもんなら貰っておいていいのかもしれないけど、今の私の目標的に急いでランクアップするメリットがない。
お金は稼ぎたいけど街から遠征して魔物討伐するとか、ダンジョンに潜るとかしたくないし。ソロで尚且つ初心者だからね。
だから今は地道に行きたい所なのだ。安全第一。
お姉さんはホッとしたような、でも残念そうな顔をして了承した。
まぁ話の流れでゴブリンとウサギと毒草採取の依頼達成報告もしたけどEランク的には評価つかないんだよね。
依頼報酬はもらうけど。
それからお姉さんに連れられ、ギルド内の解体場に向かう。
ワイバーンはすでにそこに置かれ、数人の職員が集まって見回していた。
と、その中の一人、ひげもじゃで血塗れエプロンのおっさんが近づいてきた。
「おっ! 嬢ちゃんか! こいつ倒したってのは!」
「シュラウトさん、こちらピーゾンさんです」
「こんちわ」
おっさんはシュラウトさんと言うらしい。何でも解体職人たちのリーダー的ポジションだとか。
私の肩を笑顔でバシバシ叩き「こんな綺麗なワイバーン見た事ねえよ!」とはしゃぐ。
痛いんですけど? 私、防御力に自信がないもんで。
聞けば、ワイバーンは捨てる所がないらしい。
竜とかも同じで、骨から血から全てが何かしらの材料になると。
ワイバーンも亜竜とか劣化竜種と言われるだけあって、竜に比べれば格段に質は落ちるが、それでも全て使うとの事。
だから傷一つなく血も残っている状態のワイバーンに、解体職人たちは大騒ぎのようだ。
肉とか食べるなら血抜きが必要だと思ったんだけど、魔物によっては血抜きせずとも肉の質が落ちないものもあるらしい。
ワイバーンとか強めの魔物には多く見られるとのこと。
初耳だ。うちの食堂は弱くて手軽なのばかりだったからなぁ。
血抜きしなくていいとか、さすが魔物。さすが異世界。
私も解体経験があり、今後の事も考えて解体を見てみたいというと、すぐに了承された。
シュラウトさんの指示で職人さんたちが動き出し、やっとかという感じで解体を始める。
どうやら倒した私の希望次第で処理が変わってくるので待っていたらしい。
なるほど、私が「装備に使うのでココとココは下さい」だとか「知り合いの錬金術師に頼むのでコレとコレは残して」とか言うと困るので、やたら解体できないという事らしいね。
まぁ装備に使うのは憧れるけど、どうしよっかねぇ。
ワイバーンの皮を使った服……私、軽鎧も装備できないからローブやマントか? うーん。
いや、オーダーメイドとかまだ早いでしょ。全部売ります!
今は金だ! 金、金、金! 騎士じゃないから恥ずかしくないもん!
♦
いやぁ本職の解体は勉強になった。
でも自分でワイバーンを解体しようと思ったらやっぱ出来ないと思う。持ち上げられないし。
せいぜい牙とか爪とか一部の皮・肉くらいかな。あと目玉とか。
……そう考えると、それらを入れる用の容器も必要なの?
どうせこの後道具屋さんにいくつもりだから、ちょっと見てみようかな。
と言うか村で買った私の採取用ナイフだとワイバーン相手には解体すら出来ないと判明した。
少し試させてもらったら鱗どころか皮膚も刺さらないの。
どうやらそこそこ値段の張る解体用ナイフが必須らしい。それもゲットしましょう。
で、解体料を差し引いた報酬をもらったんだけど……金貨三〇枚! 約三百万円!
これが安いのか高いのか分かんないけど、私にとっては大金だ。
これで一応、王都までの軍資金が一気に貯まった事になる。
まだ新しいスキルの事とかステータスアップした敏捷をアジャストさせたり、色々とあるからすぐには行かないけど、もうちょっと落ち着いたらボチボチ向かってもいいのかもしれない。
よし、とりあえず道具屋さんに行こう!
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