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第二章 毒娘、王都デビューする
40:か弱い少女ですがまた変質者に不法侵入されました
しおりを挟む王都に来て四日目。
今日も今日とて、王都近郊での魔物討伐を基本とした実戦訓練に励む我ら【輝く礁域】。
王都に三か所ある城門、東・西・南門から出た先は、どこも同じような平原+丘陵+森という感じ。あっても丘陵の有無くらいかな。
少し離れると、山だったり砂漠だったり湿地だったりと特色が出て来る。だけど王都近郊であればどこも同じだ。
ただ東・西・南の森によって魔物の生息が多少異なる。
そこから平原に出て来る魔物も同様だ。
南はコボルトが多く、東はゴブリンが多かったりと、多少は違いがある……というのを資料室で調べた。
そんなわけで今日は南の森に少し潜ってみようかと来たのだ。
昨日はかなり浅いところで特訓したけど、今日はもう少し深くまで。
「右前方から五体来るよー。多分コボルト!」
「了解! 二体もらいます!」
「あいよー、麻痺なし毒なしで行くからね! 気を付けて!」
「ピーゾンさんもミンチにしないで下さいね!」
「HAHAHA! 言いよる!」
森は木々が邪魔で魔剣が扱いづらい。そこを何とかしようと私は頑張っています。
ポロリンとの連携も考えつつ、何体か押さえて貰いながら魔剣で制圧していくスタイル。
毒はコボルト相手だと100%成功しちゃうから使わない。
ポロリンの<呼び込み>をすれば連戦し放題なんだけど、万一近くで狩りをしているパーティーが居た場合、その獲物を引っ張る恐れがある。
獲物の横取りは冒険者的にマナー違反……だと思う。知らないけど。
だから使っても視認範囲内に冒険者が居ない場合に限り、尚且つ連発しないようにしている。
まぁ絶対に横取りしないと分かっていて、レベル上げ目的ならばガンガン使うと思うけど。
で、問題は私の魔剣の攻撃力が高すぎること。
コボルト程度だとミンチにしてしまう。
下手すると討伐証明部位を破壊する。
なので、峰打ちにしたり、わざとカスらせたりして手加減している。これがなかなかムズイ。
というか、峰がある魔剣で良かったと、生まれて初めて鉈の有難みを感じた。
鉈って本当はいいヤツなんだぜ……?
「ポロリン! こっちはあと一体! 回避練習するから<挑発>使わないで!」
「了解! こっちも終わります!」
「おっけー! ナイスセクシー!」
「その掛け声やめて!」
「ナイスマッソー!」
「それがいい!」
コボルトを危なげなく撲殺していくポロリン。だいぶ余裕が出て来た。
もうコボルト程度じゃ問題ないね。もう少し奥に行ってみようか。
♦
時刻は夕方前、私たちはギルドに戻って来た。まずは依頼票をチェック。
「コボルトは残ってますね。やっぱ数が多いから。もう常駐依頼にすればいいのに」
「毒草もあるねぇ、相変わらず不人気。ゲットしましょう」
そうして何点かの依頼票の残りを手にして報告窓口に並ぶ。
受注と同時に報告となるので、受注窓口ではなく報告窓口だ。
この時間は報告と買い取り窓口が混むんだよなぁ。もう少し早めに切り上げるべきか。
思案しているうちに順番がやって来た。
「はい、【輝く礁域】のお二人ですね。依頼票を拝見します」
「えっ、私たちのこと知ってるんですか?」
「まだ拠点変えてから三~四日なのに……」
「ええ、そりゃあウサギ少女と武術美少女のお二人は目立ちますし」
うわぁ……。
ポロリンも「うわぁ」って顔してる。
でもウサミミフードは取らないけどね。
これ<気配察知>でピコピコさせたいもんで。うかつに外せないんすよ。
それとねお姉さん、なぜ武術美少女に対して、ウサギ美少女じゃないんですかね?
そこら辺を聞かせて……あ、ポロリン、今「ボク美少女じゃ」とか言う必要ないから。今私のターンだから。
そんななんやかんやがあり、報告は終了。
続いて買い取り窓口でもやはり注目を浴びる。
「おい、どんだけ出すんだよ!」
「魔法の鞄!? あいつら新人だろ!?」
「あの魔法の鞄、なんでウサギなんだよ!」
「口がビョーンって! きもっ!」
いや、確かに量が入る魔法の鞄だから新人が持ってるのはおかしいかもしれないけどさ、出してるのは弱い魔物ばっかだよ?
せいぜいDランクのファングボアがいいとこだよ?
それときもいとか言うな。確かにウサギさんの口がビョーンってなってるけども。
そこから魔物の部位をオロロロって出してるけども。
これ注目集めてる間に「ファンシーショップ・マリリンで買いました!」とか言えばあの店もお客が増えて、私の恰好も目立たなくなるんじゃないだろうか。
もしやマリリンさんもそれを見越して私たちに安売りしたのでは……?
だとすればオネエ策士、侮りがたし。
そんなこんなで、まぁまぁのギルド貢献ポイントとまぁまぁの報酬額・買い取り額を叩きだし、尚且つ訓練も充実していたので満足です。
定宿ってわけじゃないけど連泊している宿屋へと向かい今日は終了。
こんな感じで続けられるんなら、もう少し良い宿を探すか、本格的にマイホームを見繕ったほうがいいかもしれない。
今の宿はギルドに近いのはいいんだけど、風呂はなし、食事は普通って感じだからね。
受付で戻って来た旨を伝え、鍵をもらう。
あとは夕食まで部屋で装備の整備とかやろうかね。
そんな事を思いながら扉を開ける。
ギィ……
「よお、おかえりー」
「ん。久しぶ…………うさぎ?」
……パタン
…………は?
デ、デジャブかな?
今なんか見知った無精ひげの変質者と無表情の日本人形みたいのが居たんだけど。
「ピ、ピーゾンさん、今の……」
「ああ、ポロリンも見えたんだね。私たち疲れてるのよ。見えてはいけないものが見えただけ」
「そ、そうですよね。鍵してあったし居るはずが……」
ガチャ
「そういうのいいからさっさと入れ」
「うっさい! 勝手に入るな、この変質者が!」
「騒ぐなバカ! また厄介な事になるだろうが!」
「あんたが騒がせる事してるんでしょうが! この変態親父!」
「へ、変態親父って今までで一番ひどいぞ!」
しかし変態親父の言い分ももっともだ。廊下で騒いだらますます注目を浴びる。
気が進まないがさっさと部屋に入ろう。
「はぁ……もう金輪際、勝手に部屋に入らないでよね。おっさんだったらいくらでもコンタクトとれるでしょうが」
「おっさんじゃねーし。確実で尚且つ穏便な接触手段だ」
「穏便って言葉の意味を調べ直して来なさい」
そう愚痴りながらポロリンと部屋に入る。
当然の権利のように椅子を占拠されているのでベッドに腰かける。
あ、ネルト、三日ぶり。ん? なんか目が私の頭から離れないんだけど大丈夫? もふもふ? ああ、そうだね、もふもふだね。触ってもいいかって? いいともさ、存分にモフればいいともさ。
ネルトは私の頭を撫で続ける。「もふもふ」と言いながら。
時々ウサミミをピコらせると、その都度「おお」と驚いた表情になる。
普段が無表情だから面白い。
ピコ「おお」。ピコ「おお」。面白い。
「そろそろいいか、ウサミミ毒娘」
「さっさと用件を言え、変態糸男」
「ピ、ピーゾンさん、辛辣すぎる……」
「もふもふ……おお」
収拾がつかなくなってきたので、おっさんの用件を真面目に聞くことにする。
「まぁ用件ってのはネルトのことだ。お前らのパーティーに入れてくれねーかなーと」
……やっぱりかい。そんな気はしてたけど。
「えっ、ネルトさんって戦闘職じゃないんじゃ……」
「その前にネルトは『職業専門学校』に行くんじゃなかったの?」
「あーそれなんだがなぁ……」
ネルトはモフってるので話し相手に出来ず、おっさんが説明するようだ。
あの後、ネルトは職管理局に引き渡され、そこの局員は進路を迷っていたネルトに改めて説明を行ったらしい。
翌日からは学校の見学にも行き、どういった勉強をするのか、どういう生活になるのかといった詳しい説明がされた。
ネルトが入学した場合、固有職の特待生となるので、試験なしでSクラスが確定。
入学金・授業料なし、制服支給、個人部屋付き、食堂で毎日三食無料となる。
おまけに自分の職とスキルに関して、固有職担当の熟練講師が親身になって教えてくれる。
自分一人では未知の職を調べるのは困難な為、知識豊富なプロを、ということだ。
まぁ国からすれば、そうして調べるのが第一の目的なのだろう。
学校という環境で隔離しつつ調べたほうが効率は良いし。
ともかく貴族や金持ち商人しか入れないような学校に、その待遇で入るというのは贅沢な話だ。
私やポロリンのように『なるべく他人に知られたくない戦闘職』というのでなければ冒険者になろうとは思わないんじゃないだろうか。
……そうなると【唯一絶対】とかいうクランがそんなのばっかなのか、という疑問もあるが、ひとまず置いておく。
ネルトはなぜ入学せず、冒険者に?
「学食が少ない」
「「えっ」」
「学食が少ない……もふもふ」
ウサミミをモフりながらそう言うネルトは相変わらず無表情だった。
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