ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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第三章 毒娘、色々と出会う

80:五人体制、新しい日常・前編

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■ポロリン 【セクシーギャル】 10歳


 リーナさんとサフィーさんがボクたちのパーティーに加わって、かなり忙しくなりました。
 もちろん五人体制で冒険者パーティーを組むんですから、戦術が複雑になり、理解するのにとても苦労してます。

 だって、ボク以外のみんなが頭良いですし……。

 リーナさんやサフィーさんは学校でもすごく成績が良かったらしいです。やっぱ王女様と公爵令嬢様ってすごい。

 ネルトさんは孤児院出身ですけど、すっごく頭が良いんです。口数は少ないんですけどね。
 ピーゾンさんは言わずもがな。色々な意味で異常な人です。


 まぁ増えたと言ってもボクの役割は基本的に盾役タンクで固定という事で、皆さんみたいに状況によって色々と変わるってわけじゃありません。

 でも打撃属性の攻撃ってなると、ボクが主体になるようで(ピーゾンさんも峰で攻撃すればいいと思いますけど)敵によっては役割も変わってきます。


 他にも隊列の入れ替えや、位置取りも五人全員で考えながら動かないといけないので、どちらかと言えばそっちの方がボクは難しいです。

 ピーゾンさんも「こればっかりは頭で理解していても数こなして慣れるしかない」と言っているので、特訓ついでの魔物討伐が増えている印象です。


 そうなるとボクの<呼び込み>が活躍するんで嬉しいです。
 本当にボク以外の四人がすごいので、役に立てるって実感できる機会があまりないんですよね……。

 まぁ本業の盾役タンクで貢献したいところなんですけど。
 男として身体を張ってみんなを守らなきゃいけません。
 男はボク一人ですし。女の子を守るのは義務です。
 もっと特訓してムキムキマッソーになるしかありません。


 と、戦闘に関してはそんな所ですが、拠点をホームにした事でまた忙しくなりました。

 家事は五人で分担作業にしていますが、何せホームが大きいですし、リーナさんとサフィーさんは初めての家事という事で苦戦しているようです。

 ピーゾンさんは実家の食堂でお手伝いを率先してやっていたようですし、ネルトさんは孤児院で一通りお手伝いしていたようです。

 という事で、リーナさんとサフィーさんに色々と教えるのはお二人にお任せ。
 男のボクがやたら女性の部屋に入って掃除したり整理したりっていうのは、どうかと思いますし……。


 そんなわけでボクは自分の部屋の掃除と、お料理だけに集中させてもらってます。
 お料理に関してはボクがやりたいって言ったのをピーゾンさんが酌んでくれたので良かったです。

 まぁネルトさんも焼くくらいしか出来ないし、リーナさんとサフィーさんに至ってはキッチンに立った事がないそうですから。

 リーナさんは<解体>で捌くくらいは出来るそうですけどね。
 ともかくホームでのお料理はボクの担当なわけです。


「とても美味しいです、ポロリン様」

「これが庶民の家庭料理なのですわね~。屋台の味もよろしいですけど、こちらも大変美味しいですわ~」

「ん。ポロリン天才。おかわり」


 王侯貴族の口に合うか心配でしたけど、美味しいと言ってくれて一安心。
 きっとボクが食べた事のない料理を毎日食べてるんだろうなぁ。そんなの作れないんですけど。


「ポロリン、今後私の知ってる料理を作りたいんだけどさ、その時は手伝ってくれない?」


 ピーゾンさんがそんな事を言い出しました。
 きっとピーゾンさんの事だからボクらを驚かせるような『何か』が飛び出るんじゃないかと警戒しましたけどね。

 でもボクも知らない料理には興味がありますし、レパートリーが増えるのは嬉しいです。
 その時は是非、と返事しました。


 ……まぁ本当に驚きの料理だったんですけどね。

 まさか贅沢に油を使った料理だとは思いませんでした。揚げ物というそうです。
 ピーゾンさんの実家って小さな村だって聞いたんですけど、そこの食堂でこんな贅沢なの出してたんですかね?
 村の食堂で出せる金額の料理じゃないと思うんですけど。

 ……深く考えるのはやめましょう。ピーゾンさんですし。


 ともかくそうして作られた『フライドポテト』『トンカツ』などは皆さんに大好評でした。
 リーナさん曰く、王城でも出ないような美味しい料理との事です。
 もちろんサフィーさんやネルトさんも夢中。すっかり揚げ物の虜となりました。


「揚げ物は確かに美味しいけど、食べすぎると身体に悪いよ? 太るし」


 ピタッと手を止めるリーナさんとサフィーさん。
 ネルトさんは気にせず食べ続けています。口の周り、油でべっとりですよ?

 やっぱり皆さん女の子ですから『太る』というのは禁句なのでしょう。(一名除く)
 それからはやたらと「揚げ物食べたい」と言い出さなくなりました。(一名除く)

 ……ボクは食べたいんですけどね。ボク、男だから大丈夫ですよね? 気にしないでも。


 夕食が終わると、装備の手入れをしたり、談話室で喋ったりと色々です。お風呂は夕食の前ですね。

 お風呂もボク一人だけ男なので、なぜかピーゾンさんから最初に入るように言われています。
 男が先に入るというのが常識なのでしょうか? お風呂自体よく分かってないので従います。
 一番風呂というのは男の特権という事なんでしょう。とても気持ちいい。


「ああ~、気持ちいいですわ~」


 夕食後の談話室ではボクがみんなにマッサージします。
 もちろんピーゾンさんからの指示で、<ピンクマッサージ>のスキルレベル上げを狙っての事です。

 <ピンクマッサージ>は戦闘中使えませんし、ジョブレベルで同時に上がるタイプのスキルなのかも判明していません。
 だから毎日みんなをマッサージして、レベル上昇を狙っています。

 ……すっごく恥ずかしいんですけどね、ボク。

 だってリーナさんとかサフィーさんの背中とか足とか揉むんですよ?
 こんなの不敬罪で捕まりそうで怖いですし、女の子の身体をこんな触っちゃダメだと思います。

 ピーゾンさんは真面目にボクのスキルについて考えてくれているので、ボクもそれに応えようとはしてますけど……。


 ……でも皆さん、ボクが触っても全然平気な顔してるんですよね。

 ……恥ずかしがってるのボクだけなんですけど……気にするなって事ですかね?



■ダンデリーナ・フォン・ジオボルト 【サシミタンポポ】 11歳


 【輝く礁域グロウラグーン】に加入させて頂いてからの毎日はとても刺激的で、これまで王城や学校で送っていた日々がいかに無駄の多いものだったかと考えさせられます。

 もちろん、それまでがあってこその今。お父様を始め周りの皆さまがあってここまで成長出来たわけですから感謝するのは当然。

 だからこそ、今、わたくしは充実した日々を楽しいと感じる事が出来ているのだと思います。


 学校を辞め、冒険者となる。
 当然不安もありましたし、異例だという自覚もありました。
 しかしそれを押し切ってピーゾン様に教えを乞い、お仲間となれた事は、わたくしにとって間違いなくプラスでしょう。

 ピーゾン様はわたくしのジョブとスキルを解き明かしただけでなく、その危険性と利便性、運用方法についても考えて下さいました。

 そして包丁が武器だという限られたジョブ制限の中で、『二刀流』という新たな戦い方をも示してくださいました。


 サフィー様に関しても色々とアドバイスし、五人パーティーとしての考え方、動き方を提示する。
 まさしくパーティーリーダーのそれなのですが、提示し、指示し、実際に動かす。
 わたくしも学校では班のリーダーを務めていたのでその難しさは分かるつもりです。

 しかしピーゾン様は冷静に思慮深く、時に突拍子もないアイデアを次々に出す。
 わたくしなど足元にも及びません。これで年下だという事実に驚愕を覚えます。


 ポロリン様はわたくしが今までに見たどの盾役タンクよりも優秀ですし、ホームでは美味しいお料理を作って下さいます。
 公私両面でのパーティーへの貢献は尊敬に値します。

 何より容姿で騒がれる事の多かったわたくしにとって、人を魅了するポロリン様の美しさというのは本当に助けられております。

 その分、ポロリン様にはご迷惑をお掛けしてしまっている現状ですが、わたくしも新人冒険者としてパーティーに貢献する事で恩返し出来ればと考えております。


 ネルト様もまた稀有な人材と言えるでしょう。
 ご本人は「私は孤児だから」と卑下なさいますが、才能に溢れた素晴らしい方です。
 もしわたくしが【ニートの魔女】に就いたとして、この難しいジョブとスキルを使いこなすのは不可能だと思います。

 もちろんピーゾン様のご助力あっての事だとは思いますが、それでも尚、【ニートの魔女】は難しい。

 特にやはり<空間魔法>の扱い方でしょうか。<念力>も難しそうですが。

 ピーゾン様も何気なく教え、ネルト様も何気なく使っているようですが、わたくしが最初に説明を受けた時にはよく理解出来ませんでした。
 理解した後も、どうやって使いこなしているのか疑問に思うほどでした。


 <グリッド>一つとっても、何もない空中に対して場所を指定し、その内部を解析する。
 大きさや位置を変えるだけでも一苦労だと思います。ましてやそれを戦闘中に行うなど……。

 おそらく『空間把握能力』や『解析思考能力』といったものが優れていらっしゃるのでしょう。あえて能力を名付ければ、ですが。


 ともかく学校では出会えなかった稀有で強力な才能を持ったお三方。
 その中に入れて下さったというのは、わたくしの人生において非常に大きい。

 もちろん、サフィー様の存在も大きいです。
 サフィー様こそ才能に溢れた『最高の斥候』なのですから。わたくしが最も信頼するお一人です。


 とは言え、冒険者としては新人、さらに王城を出て暮らすのも初めてという事で何かとご迷惑をお掛けしているのが現状です。

 情けなく思う事も多く、だからこそ皆さんに教えを乞い、パーティーの一員として認めて頂けるよう努力する毎日です。


「二人には自分の部屋の掃除と整理整頓、それと自分の装備の手入れ、あとホーム内の魔石の魔力補充をお願いするよ」


 ピーゾン様はわたくしとサフィー様にそう仰いました。
 お料理はポロリン様、洗濯はネルト様が基本的に行い、掃除は各自分担して行うようです。
 家事が未経験のわたくしたちには、自分の身の回りの事と、簡単な魔力補充を、という事のようです。

 不甲斐ない気持ちもありますが、まずは与えられた仕事をこなさねばなりません。
 まずはホームの各所にある魔石に魔力の補充を行います。これは日課だそうです。

 毎日行わないとキッチンやトイレで水が流れないという事が起こるそうです。
 照明にも補充しないと真っ暗になると。

 普段、王城で何気なく使っていた物にこのような手間があったとは……今度帰った時は侍女や使用人を労いましょう。


 自室の掃除やベッドメイクも習いました。
 こうして自分でやってみると、侍女たちが普段、いかにわたくしの為に働いてくれていたのかよく分かります。
 きっとこの先、同じように気付かされる事が多くあるのでしょう。

 そうして過ごす事数日、ある日の夜にピーゾン様からご提案がありました。


「やっぱ掃除までは手が回らないね。仕事量減らせばいけるけど、今は特訓もしたいし」


 ホームの隅々まで毎日掃除するのは難しいという判断らしいです。ましてや庭まで手入れするには無理だと。
 冒険者というのは一回依頼を受けると、準備の為に数日空けるのが常識なようです。

 しかしわたくし達の場合ですと、今は第一に五人の連携、そして個人の特訓や模擬戦。
 そうした事に重点を置いている為、毎日王都外に出ていますし、そのついでに依頼をこなしています。

 そして帰ってから家事……となるのですが、そうなるとホーム全体の掃除までは手が回らないと。


「リーナの所からメイドさんとか借りられる? 例えば定期的に来てもらってホームの掃除をしてもらうだとか、掃除と庭の手入れを住み込みでっていうのでも良い。その場合は一階の客室になるけど」

「わたくし付きの侍女がおりますので、頼むのは問題ないかと」

「ワタクシも賛成ですわ。国王陛下も安心なさるでしょう」


 侍女を呼べばお父様が安心するというのは分かりませんが、ともかくそうしたご意見がありまして、王城へと相談をする事となりました。

 住み込みとなると掃除以外の家事にも手を付けそうですし、出来る限りわたくし達の手で行いたいという気持ちもあります。

 話し合いの結果、まずは定期的に日中、ホームと庭の掃除をお願いする事になりました。
 ホーム不在の際の警備についても話し合いが持たれましたが、とりあえずは掃除婦のみをと。


 話はすんなりと通り、わたくし付きの侍女であるセラが来る事になりました。
 わたくしとしても幼少の頃から傍にいる者ですから安心感があります。
 翌日の朝からセラがホームを訪れて来ました。随分と早いですね。


「ダンデリーナ様、何か不自由はされていませんでしょうか、お食事はちゃんととられていますか? 私がお作りしましょうか? お身体はお一人で洗われていらっしゃるのですか? 髪のお手入れは? 衣服にしわが寄っていますよ? すぐに脱いで下さい、私がちゃんとお手入れを。まずは身綺麗に、それからお部屋のお掃除と――」


 相変わらず心配性ですね。
 わたくしは王女ではなく冒険者としてここで暮らしているのですから、そこを理解して貰わないといけません。
 サフィー様とピーゾン様にもご協力頂き、掃除のみに従事するよう改めてお願いしました。

 随分と騒がしい朝になってしまいましたが、とりあえずホームの事はセラにお願いし、わたくし達は出ます。

 南門から出ての特訓、そして冒険者の仕事として依頼をこなさなければいけません。


「いってらっしゃいませ」


 セラのいつもの丁寧なお辞儀に、ピーゾン様たちは苦笑いしていました。


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