ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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after1:あれから7年後の今

1-3:【輝星の六姫】

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「おいピーゾンどうしたんだ?」

「ん。ミルローゼ、だいじょぶ。久しぶりの考察モード」

「は? ジョブの名前を聞いただけで考察する余地があると!? 意味が分かると言うのか!?」

「んー、ちょっと静かに。考察モードは邪魔しちゃダメだから」

「そ、そうか……」


 いや、そこまで難解なジョブではないよ。
 少なくとも私のパーティーメンバーだった面々に比べれば極めて普通・・固有職ユニークジョブと言える。

 私だってあれから色々と固有職ユニークジョブの人たちに出会ってさ、思わされたんだよね。

 やっぱり【セクシーギャル】とか【ニート(の魔女)】とか【サシミタンポポ】とか【スタイリッシュ忍者】とか【泡姫】って固有職ユニークジョブの中でも意味不明すぎる面子だったんだなって。

 それに比べれば【重魔導士】のなんと平和な事か。
 【魔導士】とついている時点で【魔法使い】系のジョブだというのは分かる。戦闘職で間違いない。

 問題は『重』が何を表すかだ。よし、気合いを入れよう。


「うーん、ちなみにスキルは?」

「え、えっと、<生活魔法><杖術><重魔法>です……」

「<重魔法>? 魔法の種類は?」

「<グラビティ>となってますけど……」

「まじか!!!」

「うわっ! え? え?」

「知っているのか、ピーゾン!?」


 思わず大声を出してしまった。
 <重魔法>は未知の魔法属性だ。それが重力であればなーとは思っていた。浪漫があるし。
 でも『気持ちを重くするデバフ魔法』や『重装備可能を表す″重″』みたいな可能性もあった。
 しかし<グラビティ>となればもう重力で確定だろう。重力を操る魔法使いの誕生だ。

 とは言え問題は山積みだ。まずは確認か。
 私は背後に顔を向ける。


「ウェルシィちゃん、【重魔導士】って過去には居ないよね?」

「居ないですー」

「スキルや魔法に『重力』『引力』『斥力』とか入ってるヤツは?」

「…………ないですねー。聞いた事ないですー」


 なるほど。ウェルシィちゃんが言うなら間違いない。
 つまりは過去、重力系の能力を扱うジョブは存在しなかったと。
 そうなるとやっぱり理解させるのがムズイんだよなー。


「おい、ピーゾンは何か知っているのか? 全く聞いた事のない言葉が次々出てきたんだが」

「んー、いつもの事。気にしたら負け」

「そ、そうか……」


 ミルローゼさんがネルトと何か話している。プレリスちゃんは困惑気味だ。
 ひとまずジョブに就いてから今まで何か試したのかと聞いてみたが、プレリスちゃんは怖くて何も試していないと言う。

 私が毒を使えなかったのと同じだ。十歳にしてはかなり珍しい慎重派だと思う。
 しかも私のように『毒』と分かりやすく危険を示唆するものではないのに使用を控えた……もしかしてシェラちゃんに近しい存在か?
 ひょっとするとこの娘なら重力を理解し、安全に使いこなす事も出来るのではないだろうか。いやしかし……。

 うーんと悩んでいる私にミルローゼさんが話しかける。


「結局何か分かったのか? ピーゾンは何を悩んでいるんだ?」

「えっとですね、何と言っていいのか、おそらくこんな能力だろうなっていう予想はしてます」

「「おお!」」

「でもそれを説明するのが難しいんですよ。私の想像通りだとしてもプレリスちゃんが理解するのも難しいですし、かと言って理解せずに間違った使い方をすれば事故が起きます」


 仮に『重力で相手を押しつぶす』ような魔法だったとして、それが『相手を中心とした半径2mの効果範囲』だった場合、味方も巻き込むかもしれないし、屋内で使えば部屋がメチャクチャになる。
 威力にもよるが意図しない死者が出てもおかしくはない。
 だから十分に理解した上で慎重に検証すべきだと思う。

 ミルローゼさんの顔は険しい。プレリスちゃんは絶望の表情だ。


「でもですね、能力を完全にものに出来たら、私とガチで戦って勝てるくらいになると思います」

「はあっ!? ピーゾンが!?」


 ミルローゼさんが思わず席を立った。
 もし重力なんか使われたら地面に伏して指一本動かせないまま死ねると思うんだよね。私は毒と魔剣しか手がないんだから。順当に負けると思う。

 え? え? となっているプレリスちゃんを見たミルローゼさんは大きく息を吐いて席に戻った。


「君は王都の事も冒険者の事もまだよく知らないと思う。ピーゾンの事など全く知らなかっただろう?」

「は、はい……すみません」

「こんな身なりでもピーゾンは私が逆立ちしたって勝てない相手なんだ。国内最強の冒険者と言っても良い。こんな身なりでも」

「ええっ!?」


 ……いやそれは言いすぎじゃないっすかねぇ、ミルローゼさん。

 というかなんで二回言うんですかね? 今じゃちょっとした王都のファッションリーダー気取りですぜ? ファンシー文化の先駆けですぜ?


「えっ、でも、ミルローゼさんってAランクじゃ……」

「それはそうだが……君は【輝星の六姫】を知っているか?」

「【輝星の六姫】ってあの英雄譚の、ですか? もちろん知ってますけど……」

「このピーゾンとそっちのネルトが、その【六姫】の二人だ」

「ええええっ!!??」



■プレリス 【重魔導士】 10歳


 【輝星の六姫】というのは一番新しい英雄譚と言われている。

 街中で吟遊詩人が歌っている時もあるし、実家の本屋にも並べられていた。多分一番売れていたと思う。

 もちろん私も何回も読んだ。
 【輝星の六姫】と呼ばれた女性六人の冒険者のお話。
 それは今から数年前に実際起きた事件だ。王国を救った英雄たちの物語。


 王国南部の都市オーフェンの近くにある山に強大な魔物が現れた。
 フェンリルやグラトニースライム、クリスタルゴーレムといった伝説級の魔物。さらにはドラゴンも。
 山や付近の森に居た魔物たちは、ある者は逃げ、ある者は共に人々を襲い始めた。
 付近の村も襲われ、オーフェンにも魔物が迫ったと言う。

 このままではオーフェンが危ない。そしてオーフェンが滅びれば魔物たちは北へと進み、やがて王都も危機に晒されるだろう。


 そんな時、六人の女性冒険者が立ち上がった。


 大人数のクランでも手を焼くほどの規模の魔物の軍勢。それをたった一つのパーティーで挑もうなど無謀にすぎる。
 それでも彼女たちは魔物の巣食う山へと分け入った。人々を救う為に。

 誰もが彼女たちの死を確信していた。もし生きて帰れればそれだけで御の字だと。
 しかし彼女たちはたった一夜で強大な魔物たちを全て打ち倒した。
 戦果を手に、六人揃って山を下りてきたのだ。


 かくしてオーフェンも王国も救われた。
 それは名前も知らない、年若い女性たちの物語。


 こんな夢のような話が数年前に実際起きたなんて……英雄譚を読み終わった私の心は弾んでいた。
 固有職ユニークジョブとなって戦闘職だと分かり、戦えるかどうかも分からないのに、最初に冒険者ギルドに登録したのはその英雄譚の影響もあったと思う。
 少なからず憧れていた部分は否めない。

 でも……でもまさか、王都に来た初日に【輝星の六姫】に会えるだなんて。

 しかもそれが……相談所の所長さんで、白ウサギ!? どういう事!?

 黒猫さんも【六姫】!? え!? ホントに!?

 なんか受付でピースしてますけど!? 無表情でドヤ顔してますけど!?


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