169 / 171
after1:あれから7年後の今
1-3:【輝星の六姫】
しおりを挟む「おいピーゾンどうしたんだ?」
「ん。ミルローゼ、だいじょぶ。久しぶりの考察モード」
「は? 職の名前を聞いただけで考察する余地があると!? 意味が分かると言うのか!?」
「んー、ちょっと静かに。考察モードは邪魔しちゃダメだから」
「そ、そうか……」
いや、そこまで難解な職ではないよ。
少なくとも私のパーティーメンバーだった面々に比べれば極めて普通な固有職と言える。
私だってあれから色々と固有職の人たちに出会ってさ、思わされたんだよね。
やっぱり【セクシーギャル】とか【ニート(の魔女)】とか【サシミタンポポ】とか【スタイリッシュ忍者】とか【泡姫】って固有職の中でも意味不明すぎる面子だったんだなって。
それに比べれば【重魔導士】のなんと平和な事か。
【魔導士】とついている時点で【魔法使い】系の職だというのは分かる。戦闘職で間違いない。
問題は『重』が何を表すかだ。よし、気合いを入れよう。
「うーん、ちなみにスキルは?」
「え、えっと、<生活魔法><杖術><重魔法>です……」
「<重魔法>? 魔法の種類は?」
「<グラビティ>となってますけど……」
「まじか!!!」
「うわっ! え? え?」
「知っているのか、ピーゾン!?」
思わず大声を出してしまった。
<重魔法>は未知の魔法属性だ。それが重力であればなーとは思っていた。浪漫があるし。
でも『気持ちを重くするデバフ魔法』や『重装備可能を表す″重″』みたいな可能性もあった。
しかし<グラビティ>となればもう重力で確定だろう。重力を操る魔法使いの誕生だ。
とは言え問題は山積みだ。まずは確認か。
私は背後に顔を向ける。
「ウェルシィちゃん、【重魔導士】って過去には居ないよね?」
「居ないですー」
「スキルや魔法に『重力』『引力』『斥力』とか入ってるヤツは?」
「…………ないですねー。聞いた事ないですー」
なるほど。ウェルシィちゃんが言うなら間違いない。
つまりは過去、重力系の能力を扱う職は存在しなかったと。
そうなるとやっぱり理解させるのがムズイんだよなー。
「おい、ピーゾンは何か知っているのか? 全く聞いた事のない言葉が次々出てきたんだが」
「んー、いつもの事。気にしたら負け」
「そ、そうか……」
ミルローゼさんがネルトと何か話している。プレリスちゃんは困惑気味だ。
ひとまず職に就いてから今まで何か試したのかと聞いてみたが、プレリスちゃんは怖くて何も試していないと言う。
私が毒を使えなかったのと同じだ。十歳にしてはかなり珍しい慎重派だと思う。
しかも私のように『毒』と分かりやすく危険を示唆するものではないのに使用を控えた……もしかしてシェラちゃんに近しい存在か?
ひょっとするとこの娘なら重力を理解し、安全に使いこなす事も出来るのではないだろうか。いやしかし……。
うーんと悩んでいる私にミルローゼさんが話しかける。
「結局何か分かったのか? ピーゾンは何を悩んでいるんだ?」
「えっとですね、何と言っていいのか、おそらくこんな能力だろうなっていう予想はしてます」
「「おお!」」
「でもそれを説明するのが難しいんですよ。私の想像通りだとしてもプレリスちゃんが理解するのも難しいですし、かと言って理解せずに間違った使い方をすれば事故が起きます」
仮に『重力で相手を押しつぶす』ような魔法だったとして、それが『相手を中心とした半径2mの効果範囲』だった場合、味方も巻き込むかもしれないし、屋内で使えば部屋がメチャクチャになる。
威力にもよるが意図しない死者が出てもおかしくはない。
だから十分に理解した上で慎重に検証すべきだと思う。
ミルローゼさんの顔は険しい。プレリスちゃんは絶望の表情だ。
「でもですね、能力を完全にものに出来たら、私とガチで戦って勝てるくらいになると思います」
「はあっ!? ピーゾンが!?」
ミルローゼさんが思わず席を立った。
もし重力なんか使われたら地面に伏して指一本動かせないまま死ねると思うんだよね。私は毒と魔剣しか手がないんだから。順当に負けると思う。
え? え? となっているプレリスちゃんを見たミルローゼさんは大きく息を吐いて席に戻った。
「君は王都の事も冒険者の事もまだよく知らないと思う。ピーゾンの事など全く知らなかっただろう?」
「は、はい……すみません」
「こんな身なりでもピーゾンは私が逆立ちしたって勝てない相手なんだ。国内最強の冒険者と言っても良い。こんな身なりでも」
「ええっ!?」
……いやそれは言いすぎじゃないっすかねぇ、ミルローゼさん。
というかなんで二回言うんですかね? 今じゃちょっとした王都のファッションリーダー気取りですぜ? ファンシー文化の先駆けですぜ?
「えっ、でも、ミルローゼさんってAランクじゃ……」
「それはそうだが……君は【輝星の六姫】を知っているか?」
「【輝星の六姫】ってあの英雄譚の、ですか? もちろん知ってますけど……」
「このピーゾンとそっちのネルトが、その【六姫】の二人だ」
「ええええっ!!??」
■プレリス 【重魔導士】 10歳
【輝星の六姫】というのは一番新しい英雄譚と言われている。
街中で吟遊詩人が歌っている時もあるし、実家の本屋にも並べられていた。多分一番売れていたと思う。
もちろん私も何回も読んだ。
【輝星の六姫】と呼ばれた女性六人の冒険者のお話。
それは今から数年前に実際起きた事件だ。王国を救った英雄たちの物語。
王国南部の都市オーフェンの近くにある山に強大な魔物が現れた。
フェンリルやグラトニースライム、クリスタルゴーレムといった伝説級の魔物。さらにはドラゴンも。
山や付近の森に居た魔物たちは、ある者は逃げ、ある者は共に人々を襲い始めた。
付近の村も襲われ、オーフェンにも魔物が迫ったと言う。
このままではオーフェンが危ない。そしてオーフェンが滅びれば魔物たちは北へと進み、やがて王都も危機に晒されるだろう。
そんな時、六人の女性冒険者が立ち上がった。
大人数のクランでも手を焼くほどの規模の魔物の軍勢。それをたった一つのパーティーで挑もうなど無謀にすぎる。
それでも彼女たちは魔物の巣食う山へと分け入った。人々を救う為に。
誰もが彼女たちの死を確信していた。もし生きて帰れればそれだけで御の字だと。
しかし彼女たちはたった一夜で強大な魔物たちを全て打ち倒した。
戦果を手に、六人揃って山を下りてきたのだ。
かくしてオーフェンも王国も救われた。
それは名前も知らない、年若い女性たちの物語。
こんな夢のような話が数年前に実際起きたなんて……英雄譚を読み終わった私の心は弾んでいた。
固有職となって戦闘職だと分かり、戦えるかどうかも分からないのに、最初に冒険者ギルドに登録したのはその英雄譚の影響もあったと思う。
少なからず憧れていた部分は否めない。
でも……でもまさか、王都に来た初日に【輝星の六姫】に会えるだなんて。
しかもそれが……相談所の所長さんで、白ウサギ!? どういう事!?
黒猫さんも【六姫】!? え!? ホントに!?
なんか受付でピースしてますけど!? 無表情でドヤ顔してますけど!?
11
あなたにおすすめの小説
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?
八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ
『壽命 懸(じゅみょう かける)』
しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。
だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。
異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
寿明結未
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる