ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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after1:あれから7年後の今

1-5:相談所所長の完璧すぎるお仕事

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■ミルローゼ 【ホーリーセイバー】 34歳


 私も数々の固有職ユニークジョブを見て来ている。
 新人の能力は把握する必要があるし、それを以って指導に当たるという役割もある。クラマスなのだから当然だ。
 大抵は自分自身の経験や過去の文献から推測するし、それでも分からなければ当人と共に管理局に赴く時もあった。

 とは言え名前から推測できないジョブやスキルもあり、そうした場合は非常に苦労する。

 私の持つ<聖なる恩寵>というスキルもそうだった。名前から効果が判断できない。
 結局は『武器に神聖属性を付与するスキル』だったわけだが、そのスキルを解析し自分のものとするまでには時間を要したものだ。


 しかし二年前からピーゾンが相談所を立ち上げた事で、その苦労は格段に減った。
 まぁ【輝く礁域グロウラグーン】として活動していた時から、どうしても分からない時は世話になっていたのだが、その頃から「どうしてそんな事が分かるのだ!?」と驚いたものだ。

 私たちが導き出せなかった答えを、まるで最初から知っているかのように提示してくる。
 その後相談所を設け所長の座に就いたのも、私からすれば当然の成り行きに思えた。

 あまりピーゾンに頼ってばかりではジョブに就いた本人の身にならないし、努力もせずに力を得るというのは、長い冒険者生活を考えれば危険なものだ。

 ましてや普通の十歳児であれば調子に乗りやすい。
 ただでさえ特別感のある固有職ユニークジョブに就いたのに、すぐさま強力な力を行使できるとなれば事故が起きるに決まっている。

 だからこそ最初からピーゾンに頼る事はしないし、プレリスにしても最初は連れて行くのを躊躇った。
 プレリスの慎重な性格と、<重魔法>という如何にも固有職ユニークジョブらしい謎スキルを得ていたからこそ連れて行ったのだ。

 まさか将来的にピーゾンより強くなる可能性があるジョブだとは思いもしなかったが……。


 今まで持ちかけた相談でも「多分こんな感じのスキルですよ」とか「こうすれば使えると思いますよ」とか「こう訓練させた方がいいですよ」とか、そうしたアドバイスのみで終わっていた。
 それでも私からすれば値千金の情報であり、まさしく相談役に相応しい助言であったわけだが。

 ところがプレリスに関しては「一週間預からせてくれ」と言う。こんな事は初めてだ。

 ピーゾンが直接指導する必要があると判断した。それほど難解なジョブとスキルという事だ。

 困惑もあったし不安でもあった。しかし同時に楽しみでもあった。
 あの・・ピーゾンに直接指導を受けたプレリスは一体どうなるのか。


 一週間後、待ちに待ったという思いでクランホームにピーゾンとネルト、そしてプレリスを迎え入れた。


「お邪魔しまーす、ミルローゼさん。お待たせしました」

「良く来たな、三人共」


 早速とばかりに応接室に通し、話を聞いてみる。
 プレリスの様子に変化はない。服装もあの時のままだ。


「とりあえずやった事は<重魔法><グラビティ>の検証と<杖術>の扱い、あとは座学が中心ですね」

「座学? 冒険者心得のようなものか?」

「いや物理学について」


 てっきり冒険者の先達として教えているのかと思えば、何やら知らない学問が出てきた。

 何だそれはと聞いてみれば、『ばんゆういんりょく』やら『せきりょく』やら知らない単語の羅列で頭が痛くなる。私は学校にも行っていないし頭が良い方ではないのだ……。
 ピーゾンの隣に座るプレリスはずっと苦笑いだ。その座学の辛さを物語っている。

 ともかくそうした知識を最初に詰め込まないと検証するのも危険と判断したらしい。
 プレリスは頭が良く、理解力もあるとはピーゾンの談だ。おかげで実践検証が早めに出来たと言う。

 そのプレリスに新たな知識を教えるピーゾンの頭の良さが異常なのだが……。


「簡単に言えば<重魔法>ってのは『重さに関する事を操る魔法』なんだと思います」

「重さ、か。『対象の体重を重くする』とかそういう事か?」

「<グラビティ>はまさしくそんな感じですね。細かく言うとちょっと違うんですけど、攻撃魔法というよりデバフ系魔法の扱いに近いです」

「なるほど、行動阻害系の魔法使いというわけか」


 役割が明確というのはパーティー戦闘において重要な部分だ。
 特に固有職ユニークジョブの場合、尖りすぎているか、逆に何でも出来すぎてしまうというケースが多い。

 そして攻撃に特化する事の多いのが固有職ユニークジョブの特徴でもある。
 そう考えればプレリスの『デバッファー』という立ち位置はクラン的にありがたい。


「<リパルス>って魔法も覚えましたけど、そっちもデバフみたいなもんですし」

「ちょっと待て」


 新たな<重魔法>を覚えたのか!? つまりLv10を超えたと!? この短期間で!?

 そう聞けば、どうやら実践検証を王都の外で行ったらしく、その流れで魔物相手の実戦も行ったらしい。
 そして、どの程度の魔物にどの程度効果があるのか、それをピーゾンの興味本位で調べていったらしいのだ。

 結果としてレベルが上がってしまったと言うが、隣に座るプレリスは遠い目をしている。


「コボルトやブラックウルフだと単体相手であれば完封できますね」

「ブラックウルフと戦わせたのか!? Eランクでも上位だぞ!?」

「まぁ一体ずつですし。倒すのにもプレリスちゃんだけだと時間が掛かるんで、さすがに攻撃魔法のようにはいきません」


 いや、新人のデバッファーが単独でブラックウルフを倒せるというだけで大問題なのだが……。


「でも<グラビディ>の場合、相手が重ければ重いほど効果を増すのでオークとかトロールなんかは狙い目ですよ」

「オークにトロールだと!?」


 何をやっているのだ、ピーゾンは!
 オークはDランクだし、トロールなどBランクだぞ!?
 そもそもトロールなど王都付近に出るわけがない! どこで訓練したと言うのだ!


「場所については秘密です。プレリスちゃんを連れて行くにも目隠しさせましたし」

「ハハハ……なんか気が付けば山の中に居たんですよ……私もよく分からないんですけど……」

「はぁ……ならば私が聞く事も出来ないか……全く、これだからお前らは……」


 ピーゾン、というか【輝く礁域グロウラグーン】の連中は理解不能の面々だったからな。
 相応の秘密もあるだろうし、私に言えない能力の一つや二つあってもおかしくはない。

 ともかくプレリスはピーゾンに促されるまま、実戦を繰り返し、自身の能力とその扱い方について学んでいったようだ。
 装備はネルトのものを借りたらしい。猫のやつだな。

 ちなみに<リパルス>とかいう魔法は『対象を弾き飛ばす』ようなものらしく、その場合は<グラビティ>とは逆に体重の軽い相手の方が効きやすいとか。

 ……『弾き飛ばす』がなぜ『重さに関係する魔法』なのだ? 私には分からん。


 一通り、能力の説明が終わり、実際に見てみようという話になった。
 【唯一絶対ザ・ワン】のクランホームには訓練室がある。
 固有職ユニークジョブともなるとギルドの訓練場で大っぴらに訓練というわけにもいかないし、クランの皆は普段ここで個人訓練を行っているのだ。


「あー、屋内だと<重魔法>は使いたくないんで、そっちは今度王都の外に出た時にでも見てみて下さい」

「そうなのか。では訓練室に来るまでもなかったかな」

「せっかくだから<杖術>の方にしますか。近接の模擬戦にしましょう」


 プレリスそっちのけで、そうピーゾンが提案してきた。
 確かにプレリスが<杖術>を持っているのは知っているが後衛職には違いないだろう? なのになぜ近接の模擬戦など……。

 ともかく今はピーゾンの言葉に従い模擬戦の準備をする。
 訓練室に居た面子の中で、私はシモンという男に模擬戦の相手を頼んだ。
 シモンはクランの古株で、今は皆の指導員のような立場だ。近接の模擬戦となれば適任だろう。

 ピーゾンは模擬剣置き場の中から『棍』を持ってきた。棍と言っても模擬戦用なのでただの鉄棒だ。

 訓練用の杖はある。一応<杖術>を持っている者が杖捌きを覚えるのに使うものが。
 だと言うのにピーゾンはなぜか棍をプレリスに渡した。


「プレリスちゃん、これでやってみて。私との模擬戦と思っていつも通りね」

「は、はい……」


 緊張でガチガチ。無理もない。ジョブに就いたばかりの新人なのだから。
 その様子はとても戦えるようには見えない。

 が、シモンとの模擬戦が始まるとその考えを改めさせられる事となった。
 シモンの直剣をことごとく捌く。受ける場合もあるが、その棍捌きは見事という他ない。
 何よりシモンの攻撃に怯まず、しっかりと見てから棍を操っている。身体がブレる事もない。

 不可解に思い始めたのだろうシモンは攻撃を徐々に激しくしていく。
 しかしプレリスはそれさえも捌き、同時にカウンターも入れ始めた。
 防ぐと同時に棍を回し脇腹への打撃を入れる。お手本のような攻撃だ。

 唖然とする私の横でピーゾンは口を開く。


「こんな感じなんで、プレリスちゃんに持たせる杖は金属製のスタッフがいいですよ。ネルトの魔剣みたいなやつがおすすめです」

「……普通の木製の杖では不足だと言う事か」


 棍捌きを見るに、Dランク……いやCランクの前衛でもおかしくはない。
 これに加えて<重魔法>があるのか……。むしろそちらが本線のはずだが。


「プレリスは騎士団員じゃないんだぞ? お前はどんな指導をしたんだ」


 ピーゾンは王国騎士団への剣技指導も行っている。
 まさかそれと同じように新人で後衛職のプレリスに教えたわけではあるまい。
 しかし目の前のプレリスの動きを見るに、過酷な訓練を仕向けたように思えて仕方ないのだ。


「単に後衛から魔法を放つだけだったらあそこまで鍛えなかったんですけどね。せいぜい杖での防御を仕込むくらいで」

「【重魔導士】は単なる後衛職ではないと?」

「多分ですけど、そのうちプレリスちゃんは目にも止まらぬ速さで動いたり、空を飛んで攻撃したりすると思います」

「はあっ!?」


 私には何を言っているのか分からなかった。
 魔導士のプレリスが素早く動くのもありえないし、空を飛ぶとか……御伽話の世界ではないか。
 しかしピーゾンは至って真面目に言う。


「<重魔法>をそうした『動き』の手段に用いた場合、攻撃は<杖術>に頼る事になります。まぁパーティーのサポートとか、今後覚えるであろうスキルにもよりますけど。ただ単独戦闘を考えないわけにもいかないので近接も覚えさせたわけですよ」


 一週間、『ついで』で覚えさせた結果が目の前の光景だと……。
 私はもう理解するのをやめたくなった。

 いずれにせよプレリスは即戦力が確定だ。<重魔法>を見るまでもない。


 そうしてプレリスは正式に【唯一絶対ザ・ワン】に加入する事となった。

 数年後、プレリスは【重圧の魔女】として名を馳せる事になるのだが、私にとっては当然と思えた。
 一週間でアレだからそりゃそうだろうな、と。


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感想 1

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みんなの感想(1件)

level42
2025.09.02 level42

とても読みやすくて、最新話まで一気に楽しく読ませて頂きました。
登場人物の数が丁度良くて、各人の掘り下げ具合がとても良いと感じました。
(同時にカスタム待女無双の方も読ませて頂いていますが
待女さんがとても多くて、私は追いつけない感じになりつつあります)
続きが楽しみですが、これで完結してしまうのでしょうか?

解除

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