カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

文字の大きさ
7 / 421
第一章 黒の主、世界に降り立つ

07:街にやって来た″異物″

しおりを挟む


■ポリッツ 兎人族ラビ 男
■25歳 Cランク組合員 レンジャー


 俺はポリッツ。アフォードの街の魔物討伐組合に所属している組合員だ。
 今日も依頼の討伐を何とか済ませ、アフォードの街へと帰って来た。

 すると何やら街の入口が騒がしい。
 何か問題でも起きたのかと覗いて見れば、そこには異様な光景が広がっていた。


 門番である衛兵と、街に入ろうとする三人の男女。それは別に問題ではない。
 指名手配の犯罪者でもなければ身分証明がなくとも仮の手続きで街に入る事はできるのだから。

 問題は、その三人が真っ黒の貴族服のようなものを着た基人族ヒュームの男と、それに付き従うメイド、多肢族リームズと角の折れた鬼人族サイアンという面子な事。
 しかもメイドでありながら武器を携帯している。戦えないはずの多肢族リームズもだ。

 いや、そもそも基人族ヒュームが保護区を出てこんな場所に居るのが不自然だし、立派な服装をしているのもメイド――それも角折れとは言え鬼人族サイアンのような強種族を引き連れているのも不自然。
 仮に俺が衛兵の立場でも訝しんで見てしまうだろう。

 おまけに今日の門番の片割れは虎人族ティーガルだ。
 種族意識が高くて嫌味な奴だ。俺も何度か嫌がらせを受けたことがある。
 あいつの前に基人族ヒュームなんぞが現れようものなら、もう下品な笑いを上げながら力でねじ伏せるイメージしかない。
 衛兵って身分を盾にして遊び感覚で殴ってくる最悪のやつだ。


基人族ヒュームなんか通すわけねえだろうが! とっとと帰りやがれ!」


 案の定、やつはそう言いながら基人族ヒュームに殴りかかった。

 ……が、俺はその時、虎人族ティーガルが過ちを犯したと思ってしまった。
 その基人族ヒュームに突っかかるのは間違いだと。

 俺は種族柄、危険察知能力に長けている……と思っている。
 25歳この年齢まで魔物討伐という危険な仕事を続けていられるのも、この能力のおかげだと思っている。
 その危険察知が俺に警報を鳴らすのだ。
 ″基人族ヒュームの男は危険だ″″関わっちゃいけない″と。

 きっと誰もが基人族ヒュームというだけで侮るだろう。
 でも俺は自分の能力を信じている。
 恐らくあの虎人族ティーガルは―――

 ―――ドグシャアア!!!

 と、そんな事を思うまでもなく、基人族ヒュームの男は殴って来た腕を掴んで投げ飛ばした。
 虎人族ティーガルの男は頭から地面に叩きつけられ、ピクリともしない。
 門の周りで立ち止まっていた人々が絶句する。
 そりゃそうだろう、基人族ヒューム虎人族ティーガルを一撃で倒したんだからな。


「おい、それでもう通っていいのか?」

「は、はいっ!」


 基人族ヒュームの男はもう一人いた衛兵に声を掛けると、メイドを引き連れて街へと入っていった。
 なんか、とんでもないヤツが来たな。
 いつまで居るのか知らないが、出来る限り会わずに過ごしたいものだ。





 依頼の報告をしに、魔物討伐組合へと帰って来た。
 するといつも以上に組合内が騒がしい。


「おいおい! てめえみてえなヤツが組合員になれるわけねえだろうが! 邪魔だからとっとと帰れや!」


 声を張り上げているのはDランクの熊人族クサマーンだ。
 あいつは新人いびりが趣味みたいな嫌なヤツだ。
 組合から何度注意されても治らねえ馬鹿だ。

 ……って相手は基人族ヒュームとメイドじゃねえか!
 会わずに過ごしたいって言ったのに、早速会っちまったじゃねえか!
 あいつら何しに組合なんかに来てんだよ!

 ……いや、話を聞く限り、組合に登録に来たんだな。
 で、基人族ヒュームなんかが魔物討伐組合なんかに入れるわけねえだろうと。
 そりゃそうだ。基人族ヒュームが倒せる魔物なんかほとんど居ないんだから。まあ普通の・・・基人族ヒュームならって話だけどな。


基人族ゴブリンごときじゃ、それこそゴブリンに殺されちまうぞ! ガハハハ!」

「ゴブリン?」

「ご主人様、基人族ヒュームはゴブリンと揶揄される場合があります」


 基人族ヒュームは他の種族に比べて極端に弱く、寿命も短い、なんの取り柄もない種族。
 秀でている所と言えば、狡賢く生きる事や繁殖しやすい事。
 だから基人族ヒュームの事をゴブリンと馬鹿にする奴がいる。
 そんな説明をメイドから受けている所を見るに、男はそう呼ばれている事を知らなかったようだ。


「ほお、上手い例えじゃないか。なかなか的を得ている」

「なんだ、嫌味も分からねえ阿呆かよ。いいk」

「俺がゴブリンならお前は熊以下だな、地べたを這いずるミミズかな?」

「!? てめえっ!」


 なんでわざわざ喧嘩を売るのか、あの基人族ヒュームは。
 まぁ衛兵の虎人族ティーガルを倒してたから強いのは分かるんだが。

 案の定、殴りかかって来た熊人族クサマーンの腕を掴み、捻り上げる。


「いてええええっ!!! この野郎!!!」

「あー、受付嬢さん。組合員同士の喧嘩ってやっていいもんなの? 罰則とかある?」


 基人族ヒュームは涼し気な顔で、熊人族クサマーンの腕関節を決めたまま窓口の受付嬢に質問している。
 目の前でそんな光景を見せられている受付嬢もしどろもどろだ。

 組合員同士の小競り合いなんか日常茶飯事だから罰則なんてない。
 ただもちろん殺したら捕まるし、一方的な過失なら罰則もある。
 それこそ熊人族クサマーンが日常的にやってるような新人いじめとかな。組合から注意喚起され、改善されなければ罰金や除名もあるだろう。

 今回のケースを見れば突っかかって来たのは熊人族クサマーンだから、ぶっ飛ばしたところで基人族ヒュームの男に罰則なんかない。
 まぁ組合長が熊人族クサマーンみたいに基人族ヒュームに対して悪感情がなければの話だがな。

 ともかく倒して問題ないと確認した基人族ヒュームは、そのまま熊人族クサマーンを殴って気絶させると、組合の入口に放り投げた。


「ミミズらしく地べたで寝てろ」


 そう言い放つ基人族ヒュームの男に口を出せるやつは組合の中にはもう居なかった。
 みんな感じたようだ。
 あの基人族ヒュームは普通じゃねえと。

 それから基人族ヒュームの男とメイドは組合の登録を済ませる。
 担当した受付嬢はまだしどろもどろを引きずっている。可哀想に。

 それで帰ると思いきや、今度は倒した魔物の部位を売りたいと、買い取り窓口に行った。
 小さな鞄が不自然だったが、やはりマジックバッグのようだ。
 あんな高価なもんを基人族ヒュームが持っている事に、さらなる違和感を感じる。

 しかし驚くのはそれからだった。
 マジックバッグから出て来るゴブリンの角やホーンラビットの角、毛皮、ウルフの毛皮も大量に出て来る。
 最後にはゴブリンキングが丸々そのまま出て来やがった。

 どんだけ容量のあるマジックバッグなんだよと突っ込みたいのが一つ。
 基人族ヒュームどころかメイドの鬼人族サイアンだって絶対倒せない相手じゃねーかと突っ込みたいのが一つ。
 野次馬の俺たちも、受付嬢も、組合の中にいる全てのやつが、目と口を開けたまま止まってしまった。


「どうした? 買い取れないのか?」

「……ハッ! い、いえ買い取ります! 計算しますのでしばしお待ちを!」


 どうにか立ち直った受付嬢の努力により、基人族ヒュームの男は結構な額の金を受け取っていた。
 それを羨ましいなんて思わない。
 やっぱりあいつはヤバイ、改めてそう思う事しか出来ない。
 願わくば、もう会わない事を祈るのみだ。





 獣神ダルダッツォ様はどうも俺の祈りを聞いてくれないらしい。

 組合を出て武器の修繕をしに、馴染みの武器屋に行ったら……また居た。
 基人族ヒューム多肢族リームズ鬼人族サイアン
 真っ黒な主と、戦闘メイド二人。謎の三人組。

 ここの親父は偏屈なんだが腕は良いと評判だ。
 当然「戦えもしない基人族ヒュームごときが武器なんか持つんじゃねえ!」と怒鳴るかと思ったが、どうやら男が持っていた細身の剣に目を奪われたらしい。


「なんだこの剣! 材質が全く分からねえ! こんな美しい剣を見るのは初めてだ! 傷一つねえがホントにこれで魔物斬ったのか!?」

「ああ、かなり斬ったぞ。修繕する必要がないのならいいんだ、一応見て貰おうと思っただけだからな」


 剣に惚れこんだ親父からなんとか奪い返した基人族ヒュームの男は、使わない武具を売りたいと言って、またマジックバッグから鎧や剣、盾なんかを山のように出し始めた。

 ……いや、お前あれだけ魔物素材入れてたマジックバッグに、まだこんだけ入れてたのかよ!
 国宝級のマジックバッグか!?
 さすがに突っ込みたいぞ! 口に出して!

 ……しませんけどね。

 ともかく、基人族ヒュームの男は驚く親父にそれらを押し付けて、買い取らせた。
 またもかなりの金を手に入れていた。
 全く羨ましくない。
 むしろ恐ろしい。
 絶対に何かよろしくない事態に巻き込まれそうな予感がする。
 俺は自分の危険察知能力をフル活用し、その場を後にするのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

処理中です...