カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第一章 黒の主、世界に降り立つ

08:奇妙な主従関係

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■トルッティオ 多眼族アフザス 男
■43歳 奴隷商


 奴隷っつっても色々といるもんだ。
 借金苦や口減らし、契約違反者や犯罪者。
 まぁ犯罪者の場合は軽犯罪者ばっかりだけどな。重犯罪者は奴隷商ここに来る前に鉱山にでも行っちまう。

 攫われたり拉致されたやつが奴隷になる場合があるが、それは闇奴隷ってやつだ。
 立派な犯罪。
 攫うやつも売るやつも買うやつも、同じくクズだ。


 よく俺らと闇奴隷なんかを同列に見るやつがいる。人身売買してるのは同じだろうと。
 全然違うと声を大にして言いたい。
 俺はうちの奴隷たちをどうにか良い暮らしに戻してやりてえと日々思ってる。

 病弱な見た目だと印象が悪いから、ちゃんと食べさせるし病気なら薬も使う。
 不潔だと嫌がられるから毎日身体を拭かせるし、服も洗濯させる。
 少しでも良い所に売れるように最低限の教養も身につけさせる。

 そうして立派な奴隷となったところで、売る方にも目を向ける。
 奴隷を買いたいってやつも様々だ。
 貴族、商人、組合員、人手が欲しいやつはいくらでもいる。

 それでも奴隷を道具としか見ないやつや、性欲の捌け口と勘違いしているやつらはお断りだ。
 権力と金を持ってるやつに限って、そういうのが多い。
 それを見抜き、売った奴隷が虐げられないようなやつを選ぶ。
 それが奴隷商としての力量だと思ってる。


 ところが、その日は俺の目をもってしても見抜けないやつがやって来た。


「この二人を正式に俺の奴隷としたいんだが、契約を頼みたい」


 商売柄、俺は人種差別なんか絶対にしない。そう決めている。
 種族を色眼鏡で見ちまったら人を扱う奴隷商はおしまいだ。
 ……しかしそれでも怪訝な目を向けてしまう。

 だってよ、基人族ヒュームの男と、メイド姿の多肢族リームズ鬼人族サイアンだぞ。
 しかも二人とも美人だ。鬼人族サイアンは角折れだけどな。
 基人族ヒュームを主とするのか? この二人が。
 長年、奴隷商をやってきてこんな訳分からん客は初めてだ。


「えーっと……お二人はそれに同意してるのですか?」

「はい、もちろんです」

「むしろこちらがお願いしている立場です」

「そ、そうですか……」


 いかん、だいぶ混乱してきた。
 二人の左手の甲を見る。そこには丸い枠の奴隷紋痕が残っていた。

 奴隷契約を結ぶと、左手の甲に奴隷紋が入る。
 大抵は丸い枠の中に、主人を現す印や模様が描かれる。
 それは家紋のようであったり、種族を現すものであったり、幾何学模様であったりと様々だ。
 主人の在り方を示す模様だと言ってもいいだろう。

 奴隷商として数々の奴隷紋を見て来た身としては、良い主人ほど綺麗な紋が描かれる。
 逆に恐ろしさや暴力性が見える紋だと、その主人は信用ならない。奴隷が危険だ。

 この二人は丸枠の奴隷紋痕だけ。つまり「奴隷ではあるが契約者不在」の状態だ。
 かつての主人がいなくなったか、契約前に解放されたか、逃げて来たか。

 改めて奴隷紋痕を良く見る。
 紋自体が非常に荒い。おまけに契約魔法が体内にまだ残っている状態。
 つまり……


「闇奴隷ですね」

「そうなのか?」

「「……はい」」


 知らなかった基人族ヒュームと、うつむくメイド二人。
 どうやら聞く限り、攫われ闇奴隷として殺されそうなところを基人族ヒュームの男に助けられたらしい。
 そして彼を主人とし、正式に奴隷契約を結びたいそうだ。

 俺は正直、基人族ヒュームが彼女たちを助けたという事が信じられなかったが、二人の真剣な目を見るにどうやら真実らしい。
 これでも人の嘘を見抜いたりは得意だ。
 彼女たちは嘘をついていないし、本心で彼の奴隷になりたいと言っている。そう思えた。

 そこまで慕うものがこの基人族ヒュームの男にはあるのか。
 興味がなかったと言えば嘘になる。
 俺は彼女たちの意思を酌み、契約魔法を施すことにした。


 奴隷契約と言っても内容は千差万別だ。
 行動や思考を縛るような重い契約から、ほとんどの自由を与える軽い契約まで様々。
 それを説明し、三人と協議しながら契約内容を決めていく。


「自由でいいんじゃないか?」

「いえ、せめてご主人様に手を出さないとか反抗しないとか入れて下さい」

「ご主人様の不利にならないよう契約を結ぶべきです」


 縛りたくない主と縛られたい奴隷。
 なんともおかしな契約者だ。俺もつい笑ってしまった。
 こんな主従の形もあるのかと嬉しく思ったりもした。

 ある程度、奴隷側の意見を聞き入れたところで契約魔法を施す。
 三人の左手の甲が光を放つ。
 主人の左手は契約時に光るだけだが奴隷の二人にはしっかりと紋が刻まれる。
 そして丸枠の中に現れた奴隷紋を見て、俺は驚いた。


「こ、これは……!」


 その紋は女神を象っていた。
 丸い枠の中に、両手を広げ、後光を差した女神の姿。
 こんな美しい奴隷紋は初めてだ。


「創世の女神様……!」

「ウェヌサリーゼ様……!」

「くそっ! あの野郎!」


 左手を掲げ祈りを捧げる奴隷二人と、頭を抱え苦悩する男。
 奴隷の反応は分かる。
 神の加護だと言われても納得してしまうほどのものだ。

 だがなぜ基人族ヒュームの男は苦虫を噛んだような顔をするのか。
 基人族ヒュームの保護区の主教は創世教のはずだ。
 自らの主神を崇めこそすれ、嫌がるのはおかしいだろうに。


 ともかくこれで奴隷契約は為され、正式に彼女たちは彼の奴隷となった。
 項垂れたままの主と、非常に嬉しそうな奴隷二人。
 三人揃って商館を出ていった。

 なんとも不思議な関係性。
 最初から最後まで「奇妙」な三人だった。
 しかし気持ちの良い客だったのは確か。

 俺はうちの奴隷たちの世話を焼きながら、思い返していた。
 基人族ヒュームではあるものの、理想的な主というのはああいうヤツの事なのかもしれない。
 彼がうちの奴隷を買いに来たら、奴隷たちに対しても自信をもって勧められる。
 この人に買ってもらうといいぞ、と。

 窓から空を見上げ思う。
 祈った事もない創世の女神ウェヌサリーゼ様に向けて。


 ―――願わくばあの二人の奴隷に幸ありますように。


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