カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

文字の大きさ
24 / 421
第一章 黒の主、世界に降り立つ

24:そして舞台は【混沌の街カオテッド】へ

しおりを挟む


■ミーティア・ユグドラシア 樹人族エルブス 女
■142歳 セイヤの奴隷 『日陰の樹人』


 イーリスの街では結局、四日ほど足止めをくらいました。

 淫魔族サキュリスの尋問はすんなり終わったそうで、報奨金は二日目には貰えました。
 街をスタンピードから救い、重要人物の魔族を確保したという事で、かなりの金額です。
 魔族自体が人類共通の敵ですので、街からだけでなく国からも出ているのかもしれません。

 時間がかかったのは魔物の解体のほうです。
 ゴブリンやコボルトはともかく、ウルフは毛皮を剥ぎますし、オークは肉が欲しい。
 オーガも皮は丈夫な防具となります。
 何より地竜ランドドラゴンは亜竜と言えどもさすがに竜種。
 捨てるところがないらしいので、優先的に解体していました。


 私たちの装備に使えそうな部位も少しずつ貰っています。ついでにオーク肉も。
 カオテッドの街で装備を見繕う際に活用できるようならしたい、という事です。


 装備と言えば、四日の間にタイラントクイーンのドロップの【鉄蜘蛛の糸袋】から反物を作りました。
 さすがに装備品を作り上げるような時間はありませんでしたが、反物にするくらいの時間はありましたので。
 とても綺麗な生地。
 樹界国の王家でも滅多に見られないような素晴らしいものです。

 これで侍女服をつくると言うのですから非常に贅沢だと言わざるを得ません。
 しかし私たちの場合、戦闘服も兼ねるわけですからそれも考慮してという事でしょう。


 そうしてご主人様が気になったものを買いこんだり、私たちへお小遣いを渡して自由に買い物などさせて頂きました。
 しかしご主人様、奴隷にお金を与えるのはどうかと……。
 しかも金銭感覚がどうも麻痺しているご様子……。
 とりあえず下着などの必需品や気になった調味料、香辛料を買わせて頂きました。
 それでもおつりが山ほど残りましたが。


 四日後、無事に解体が終わり、組合長のチアゴさんと臨時の依頼で賑わった組合員の皆さんに感謝されつつ、今度こそイーリスの街を出ます。

 狩りをするのも久しぶりという事で、さっそく街道を外れ、スタンピードの戦場となった森へと向かいます。
 しかしなかなか魔物に出くわしません。
 どうやらあのスタンピードは近隣の魔物を集めていたらしく、倒しきった今となっては極端に数が減っているようです。

 ならばと山沿いに進むことしばらく。


「……なんでこんなに山賊多いんだ」


 そうご主人様がぼやきます。
 すでに三組の山賊組織を殲滅していました。


「やはり魔物が一か所に集められていた影響で山賊が住みやすかったんでしょうか」

「カオテッドが栄えているというのもあると思います。そこへ出入りする商人狙いもあるでしょう」


 エメリーさんとイブキさんがそう言います。
 なるほど、確かにユグドル樹界国でも栄えている街の周囲は山賊や盗賊が多かった印象があります。
 カオテッドほどの街ならば闇組織もありそうですし、そことの繋がりもあるかもしれません。

 私は巫女として若干ではありますが国政に携わっていた経験もあり、そうした輩は出来る限り排除すべきだと思っています。
 こうして山賊を次々に退治していくご主人様を頼もしく思います。


「もはや山賊がCPと金にしか見えないな」

 
 それはどうかと思いますが……。

 ちなみに私のように捕らえられている人を見つけることは出来ませんでした。
 檻はあったのですでに売られた後なのかもしれません。

 そうして山賊の住処を潰し、魔物を倒し、山と森と街道を進むこと数日。
 我々の前にカオテッドの街が見えてきました。





 大陸の北部にはドラゴンが住むと言われる山々、【マツィーア連峰】があります。
 そこから南に流れる川はいくつもありますが、その中でも三本の大河があります。
 三本の大河は一つの地点で交わり、さらに大きな大河となって南に流れていきます。【Ψ】こんな形状ですね。

 大河は国境の代わりも果たします。

 南西が今居る【ボロウリッツ獣帝国】
 大河を挟んだその北側に鉱人族ドゥワルフなど『土の民』が多く住む【ドボルダート鉱王国】。
 獣帝国の東、大河を挟んで、私の故郷【ユグドル樹界国】。
 樹界国の北側はまた大河を挟んで、魔法技術が盛んな【エクスマギア魔導王国】となります。


 十年前のある日、三つの大河の合流地点、その中心に大迷宮の入口が突如現れました。

 川の中にポツンと地下への階段があるわけではありません。
 合流地点が大地の蓋・・・・で覆われ、その中心に迷宮の入口が出来たのです。
 迷宮への入口を中心に、大地の蓋の上に作られた都市。
 それが【混沌の街 カオテッド】なのです。


 そして当然のように四か国全てが迷宮の権利を主張しました。
 国境が大河なのであって、大河の上はどこの領土でもないのですから。
 迷宮という資源を求めるのは必定です。

 揉めた結果、大地の蓋を五つの区画に分割し、防壁で区切る事になりました。
 迷宮の入口がある中央区は迷宮組合による自治区。
 北東区は魔導王国領、南東区は樹界国領、北西区は鉱王国領、南西区は獣帝国領。
 それぞれ大地の蓋の端にさらなる防壁を設けました。

 つまり迷宮への入口を中心に中央区を囲む『第一防壁』。
 その周りに四か国の統治区があり、さらにその周りを囲むのが『第二防壁』となります。
 その外側には農耕地帯が広がり、カオテッドという巨大都市の食生活を賄っているというわけです。


「はぁ~、どうりでバカデカイ街なはずだ。防壁は見えるが一向に近づけないしな」


 街道の両側に広がる麦畑を見ながら、ご主人様が感心しています。
 ここから獣帝国側の第二防壁は左右にどこまでも広がって見えるのですから。
 あの先が全てカオテッドの街かと思うとその広さは想像を絶するというものです。


「ここはまだ大河の上じゃないんだよな。本当に大河の上に大地があるとは信じられないな。地下は川が流れてるのか?」

「それが不思議なことにを掘っても大河にはぶつからないらしいです。井戸とかは掘れるらしいですが」

「迷宮の入口も下層への階段だそうですが、大河で浸水しているという事もないらしいです」

「それなのに、大河は上流も下流も流れは変わっていない。カオテッドの下を流れているという証拠なのですが……」

「ほぉ~、つまり蓋も迷宮も異空間ってことか。イーリスの迷宮も異空間だったのかもしれないな」


 ご主人様は何か道理がいったようです。
 私たちは理解できないまま、カオテッドの在り方を認めるしか出来ないのですが。


「異空間ってのが分からないのか。うーん、なんと説明したらいいか……世界が異なるというのかな。俺の居た世界と今居る【アイロス】の世界は全く違うけど、俺はここに来ているだろ? その境界線みたいなものが『大地の蓋』だと思う。蓋の地面から下は別の世界。だから掘っても今居る世界にあるはずの大河に辿り着けないんじゃないかな。というか蓋自体が異世界なのかも。とすると、カオテッドは別世界の街ってことになるのか?」


 後半、考え込むように呟いていましたが、結局よく分かりません。
 私たちもそろって首を傾げます。

 ともかく歩きながら、話しながら進み、やっとのことで防壁まで辿り着いたのです。
 【混沌の街 カオテッド】。
 私たちの最初の目的地です。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります> 「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。  死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。  レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。  絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、 「え?、何だ⋯⋯これ?」  これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...