カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

文字の大きさ
46 / 421
第二章 黒の主、混沌の街に立つ

45:暴れん坊の竜人

しおりを挟む


■ツェン・スィ 竜人族ドラグォール 女
■305歳 セイヤの奴隷


「ツェン・スィ! 貴様は力に溺れ、酒ばかり飲みおって! さっさと誰ぞの元へ嫁げ!」


 だったらあたしより強いヤツを連れてこいってんだ。
 若衆じゃ誰もあたしに敵わないだろうに。

 竜人族ドラグォールは少ない上に閉鎖的だ。
 集落の連中はいっつも竜神様に祈って、適当に魔物を狩って、平々凡々に暮らしてる。

 そんな中であたしみたいなのが出てきたって不思議じゃないだろ?
 とにかくここじゃ毎日暇すぎるし酒も好きに飲めねえ。
 それだけで集落を出る理由は十分だ。


 出る時に師匠にこう言われた。


「力で負ければそれは命を取られたと同じ事。ツェン・スィ、もしお前が負けるような事があれば、そして命が残っているようならば、お前はその者の為に生きよ。全てを捧げ、仕えよ」


 そんなヤツいるもんかねぇ。
 竜人族ドラグォールって種族の強さ、それは外の街で色々な種族を見るたびに実感した。

 見た中じゃ鬼人族サイアンくらいじゃないか? 張り合えるの。
 それにしたって若衆の弱いやつと同等くらいだ。
 あたしの敵じゃない。


 山を下りてからはどんどんと南へ歩く。
 でっかい街、多すぎる人、飲んだことない酒、どれも面白い。
 集落を離れ、こうして見て歩くだけでも新鮮で楽しい。
 これだけで旅に出たかいがある。

 しかしやはり竜人族ドラグォールは珍しいみたいだ。どいつもチラチラ見てやがる。
 見てるだけじゃなく絡んでくるやつもいる。


「おう姉ちゃん何族だか知らねえけどベッピンじゃねえか、こっち来いグアアアア!!!」


 こういう無知な奴のほうが助かる。
 手加減して狩れば、金置いて逃げる奴もいるし、酒が飲みたいと言えばおごってくれる。
 見てるだけの連中を狩るわけにはいかないからな。

 あたしが来た鉱王国ってとこは鉱人族ドゥワルフが多いらしい。
 鉱人族ドゥワルフってのは鍛冶や鉱山掘りが得意なチビどもだ。
 揃いも揃って酒好きなのがまた良い。
 毎日のように酒場で盛り上がる。飲み比べだ。

 街から街へ、旅をするのに特に理由はねえ。
 街ごとに人もモノも酒も変わるのが面白いからだ。
 あたしは少しずつ南へと向かって行く途中、面白い話を聞いた。


「鉱王国の酒はどれも強すぎる。農耕で有名な南の獣帝国、そこで作られた麦は酒にしてもすげえ旨いんだぞ。それに樹界国の果実だ。あそこのワインも旨い。酒好きなら飲んで損はないぜ」


 どうやらあたしの飲んだことのない酒は色々とあるらしい。
 しかし南の獣帝国と南東の樹界国、どっちに行くべきか……


「そしたらカオテッドに行きゃあいいじゃねえか。知らないのか? 四つの国が重なった街があるのさ。鉱王国の酒も、獣帝国の酒も、樹界国の酒も手に入る。魔導王国の酒はよく知らないが何かしらあるだろ」


 そうしてあたしはカオテッドってとこに向かった。
 川沿いを行けば嫌でもぶつかる街だ。


 やがて着いたその街はとんでもない大きさ、とんでもない人の多さだった。
 規模の大きさに期待が膨らむ。
 さっそくぶらつきながら酒場を探した。

 しばらく絡んできた奴を狩り、酒場で騒ぎ続ける日を過ごした。
 そして南西区で麦酒を飲んでいる時に、男に話しかけられた。


「おめえか、最近よく聞く”酒飲み竜人族ドラグォール”ってのは」

「なんだそりゃ。あたしが竜人族ドラグォールなのは間違いないが」

「腕っぷしが強いんだろ? やりすぎってくらいウチの連中もおめえにやられてるそうだ」

「あたしを狩ろうとするのが悪い。弱くて狩られても文句は言えない」

「まあな、で本題だが―――うちで用心棒にならねえか?」


 あたしは結局雇われ用心棒になった。
 飯と酒と寝床もくれるらしいし、言われたヤツを狩るだけの仕事だ。
 暇つぶしにはちょうどいい。

 そうしてカオテッドの区画ごとの飲み比べをする素晴らしい日々。
 しかし楽しい毎日はそれほど続くことはなかった。


 あたしを雇ってた【鴉爪団】が狙う、【黒の主】とかいう基人族ヒュームが攻め込んできたらしい。
 見た事はないが知っている。
 基人族ヒュームは最弱種族だってな。
 しかしこの【黒の主】ってのは普通じゃないらしい。

 そしてあたしは【黒の主】と戦うことになった。


竜人族ドラグォールってのはみんなこんなに強いのか?」

「あたしは強い方だったさ。村を出てからも敵なしだ。そして今回も―――勝つ!」

「悪いがそれはない」


 ―――あたしは負けた。

 全力で殴り、最高速度で殴り、尾まで使って負けた。
 気付いた時にはあたしは瓦礫の山の中だ。

 体格も種族も経験もあたしの方が上。
 なのに完敗だった。
 悔しさ、悲しさ、憤り―――そんなものはない。

 あるのはただ″感動″のみ。


『力で負ければそれは命を取られたと同じ事。ツェン・スィ、もしお前が負けるような事があれば、そして命が残っているようならば、お前はその者の為に生きよ。全てを捧げ、仕えよ』


 忘れかけていた師匠の言葉を思い出した。
 そうか、あたしはあいつに……【黒の主】に命を捧げたのか。
 種族の弱さをものともしない、圧倒的強さを持つ【主】。
 あたしの力は【主】に捧げるためにあったのだ。

 しばらく呆然と瓦礫に埋もれたまま天井を見上げていた。
 気が付けば夜を越え、朝になっていた。
 ガランとした【鴉爪団】のアジトを出る。人っ子一人いない。

 あたしはそのまま中央区へと行き、話に聞いていた【黒の主】の屋敷へと行った。


「頼もーーーっ! あ、いたっ! 【黒の主】! あたしも奴隷にしてくれ!」


 【黒の主】―――セイヤはかなり渋った様子だったが、あたしを奴隷にすると認めてくれた。
 先達となるメイドたちが忠言したようだ。助かる。
 これであたしはご主人様・・・・のメイドとなった。




「ツェン、メイドではなく侍女です」

「お、おう」

「返事は『はい』です」

「は……はい」


 エメリーはおっかない。
 何だろう、妙な迫力がある。
 種族に囚われない強さってのは、ご主人様譲りなのか。

 あたしの驚きの日々が始まる。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります> 「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。  死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。  レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。  絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、 「え?、何だ⋯⋯これ?」  これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...