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第三章 黒の主、樹界国に立つ
51:転生物で出しちゃいけない第一位のやつ
しおりを挟む■サリュ 狼人族 女
■15歳 セイヤの奴隷 アルビノ
「ハッハッハ! こいつは最高に具合いいぞ! ほらほらぁ!」
「ちょっと手加減したらどうだ、ツェン! お前の連撃を大剣で凌ぐのは厳しい!」
「ツェンお姉ちゃん! イブキお姉ちゃん! 私も交ぜて!」
お屋敷の庭では訓練が行われています。
でも使ってるのは新調されたミスリル武器。
ミスリルクロー、ミスリル大剣、ミスリスレイピア……。
新しい武器をご主人様に作って頂いて、嬉しくなったツェンさんとイブキさんが模擬戦を始めたんですが、ティナちゃんも交じろうとしています。
チラリと見れば隅っこでネネちゃんもミスリルダガーを振ってるので、一緒にやりたいのでしょう。
ティナちゃんのように言い出せないネネちゃん、かわいい。
怪我するのが怖いので、一応私も見ています。
即座に回復するつもりなんですけど、侍女服は斬ってほしくないなぁ。
訓練用なので作ったばかりの【鉄蜘蛛の糸】を使ったものじゃないですけど、斬ったりしたらお裁縫しないといけないですし。
ちなみにツェンさんにも<カスタム>を解禁したそうです。
おかげでまともに模擬戦で戦えるのがイブキさんとご主人様くらいしか居ないのが難点です。
速さで対抗すればネネちゃんも戦えるんでしょうけど。
ん? くんくん、美味しそうな匂いがしてきました。
ちょっと庭を離れてキッチンへ行ってみましょう。
「おお、いい感じに焼けたじゃないか」
「これがピザというものですか、ご主人様」
「なるほど、チーズがトロトロに溶けていますね」
「うむ、こちらの肉メインの物も良いが、我はこちらの野菜メインの方が好みだ」
「先にちょっと試食するか。訓練してる連中には悪いが」
来て正解です! 私も試食します!
キッチンの隅にある窯はパンだけでなく色々と焼けるそうです。
今日はご主人様が食べたがっていたピザというものを作ってみたとか。
メンバーは料理班のエメリーさん、ヒイノさん、フロロさん。
あとミーティアさんは多分見てるだけです。
私はお肉のほうを貰いました。
カットされたピザを手づかみで、熱々のまま齧り付きます。
そうすると、トロ~~ッとチーズが伸びるんです。面白い!
薄い白パンが少し焦げて、ふわふわでサクサクします。
パンの甘さとチーズの濃厚さ、お肉や野菜の美味しさがいっぺんに口に広がります。
なんて贅沢な味なんでしょうか!
しかもトッピングは無限に変えられると!
思わず私は目を閉じて幸せを感じてしまいます。耳ピコピコ、尻尾フリフリです。
「……いまいちだな」
『ええっ!?』
まさかのダメ出し!?
「十分美味しいと思いますが……」
「これだけ複雑な味ですのに……」
「これ以上のものを求めるとは……ご主人様の舌はどうなっておるのか……」
ですよね! 私もそう思います!
「素材の味、特に肉はオーク肉を筆頭にいい味だ。むしろ肉の味が良すぎるくらいだ。野菜もまぁ及第点。特にトマトが良いから生命線のトマトソースがよく出来てる。パンも良い。ピザ生地専用で試行錯誤した成果が出てる」
「では何が……」
「キノコが欲しいがあれは高いからなぁ、燻製肉も欲しいが燻製自体なさそうだし、まぁそれは置いておいて、やっぱ調味料が足りないな。タバスコはチリソースで代用するとして、醤油は無理。あとはやっぱりマヨネーズがあればなぁ、いくらでも応用が利くんだが……」
何やら聞いた事のない単語がいっぱい出て来ましたけど、とにかくご主人様の中では足りないものが分かっているようです。
こんなに美味しいものがギュッって詰まった味なのに、何が足りないのか分かるだなんて……。
やっぱりご主人様はすごいです。
なんでも知ってるし、なんでも出来ちゃうすごいご主人様です。
「卵はある。塩胡椒、オリーブオイルっぽいもの、酢は赤ワインビネガーなんだよなぁ。マスタードもないけど……ダメ元で作ってみるか」
「それがマヨネーズとやらの材料ですか?」
「ああ、順序良く適量を混ぜるだけだから作るのは出来る。冷蔵庫もあるし。混ぜるのも<カスタム>した俺たちなら疲れないだろうし」
「それがあればピザがより美味しくなると」
「ピザだけじゃないぞ。野菜にもパンにも肉にもなんだって合う。そのままでも良し、焼いても良しの万能調味料だな」
『おお』
よく分かりませんが、あのピザがさらに美味しくなるなら私もお手伝いします!
マヨネーズ、一体どんな調味料なんでしょうか。
「ただ卵を生のまま使うことになるから殺菌がなぁ。買ったあとで冷蔵させても意味ないし……あ、サリュの<異常回復>でいけるか?」
「えっ、私ですか?」
「<異常回復>って状態異常回復だけじゃなくて病気の治療にもいけるんだよな」
「えっと、はい、そう聞きます。試したことないですけど」
「病気を治療してるってことは病原菌を殺してるのかもしれん。だったらサルモネラ菌を殺す事も可能かも。しかし判断材料がないんだよなー」
なんか私の神聖魔法で食べられるようになるかもって話です。
それで作れるんならいくらでも<異常回復>しますよっ!
結局、お昼はみんなでピザを食べて、試しにマヨネーズを作ってみる事になりました。
夕食でサラダにかけたもの、お芋と一緒に焼いたもの、パンに塗って焼いたものと作ってみたそうです。
「一応、俺が先に食べてみて未だに腹痛もないから大丈夫だと思う。もし何かあったら食べるの止めて回復すること。サリュ頼むな」
「お任せ下さいっ!」
と、言いつつも目の前の料理の匂いに興味深々な私。
ご主人様が一口食べるまでは「待て」の状態です。
そしてご主人様が食べるのを見てから、みんなが手を付け始めました。
「これがマヨネーズですか、なるほどこれは……!」
「美味しいですっ!」
「濃厚でまろやかな酸味と口当たり。これはクセになりますね」
「絶対酒に合うって! 飲もうぜ!」
「確かに何にでも合いますね。これをピザで使うとなると具は……」
みんな美味しそうに食べています。
さすがご主人様のお料理。
誰も知らなくてこんなに美味しいものを作るだなんて!
私としては唐揚げの次くらいにヒットです!
あ、唐揚げにマヨネーズをかければ……!
これは禁断の大発明をしてしまったかもしれません……!
私ってば天才! 今度ぜひやってみましょう!
♦
食事も一段落し、落ち着いたところでご主人様からお話がありました。
「こんな事言うのも何だけどな、正直金が余ってる。こないだの【鴉爪団】のやつな」
な、なんとも貴族か王族でも言わなそうなセリフですね。
しかしそれもあって先日取ってきたミスリルやタイラントクイーンの素材も、まだ大量に<インベントリ>に残っている状態のはずです。
「一月後のオークションにも行ってみたいし、魔道具も色々と買いたいとは思ってる。一応、装備も新調した、日用品や家具とかも買ってるわけだが、あとは何か欲しいものとかあるか?」
「はいっ! 酒を所望しますっ!」
「酒に金かけても九割以上ツェンが飲んじゃうから却下だ。俺も嫌いじゃないから、たまに飲むくらいならいいけどな」
「うぅ……」
ツェンお姉ちゃんはすごくお酒が好きです。
私は匂いだけでクラクラしちゃいます。
ネネちゃんも成人だからと飲んでみましたが、一口でダウンしてました。
ティナちゃん以外は一応飲めるみたいですけどね。
「土地や家を買うのはどうです?」
「それもダメだな。この家をCPで<カスタム>したほうが便利だ」
「思いっきり高価な、それこそアダマンタイト製の武器などは」
「ミスリルで揃えたばかりだしな。迷宮探索に不足がありそうなら検討って感じだな」
<カスタム>でステータスを上げている私たちが不足する事態ってちょっと考えられませんね。
タイラントクイーンの硬い甲殻もミスリルならダメージ入りそうですし。
三階層とかに行けばもっと強い敵とか出て来るのでしょうか。
「使用人を入れてはいかがでしょうか」
「私も賛成です。迷宮と屋敷の管理、現状でも問題はありませんが増やしておけば何かと便利かと存じます」
「なるほど……みんなが言うなら俺に否はないな。となると使用人は奴隷にするのか?」
「それはそうでしょうね。秘密を守る意味でも奴隷が良いでしょう」
「奴隷商に行くのなら我も一緒に行かせてくれ。占いが選ぶ一助になるであろう」
「うーん、じゃあそうするかな」
どうやら奴隷を増やすようです。
新しい侍女仲間ですね!
どんな人が来るのか楽しみです!
仲良くなれそうな人ならいいんですが……ご主人様にお任せしましょう!
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