カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第三章 黒の主、樹界国に立つ

53:治ったのに壊されていく系少女

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■ジイナ 鉱人族ドゥワルフ 女
■19歳 セイヤの奴隷 火傷顔 隻眼 右手麻痺


 すでに何度驚かされたことか、数えるのも馬鹿らしい。

 私のご主人様・・・・基人族ヒュームでありながら『女神の使徒』であり、Aランククラン【黒屋敷】のクランマスターであり、豪邸を持つ大富豪であり、そして……


「簡単に言うとな、俺は別の世界で死んで、創世の女神とやらにこの【アイロス】に送られたわけだ。この刀もそいつからの貰いもん。あとスキルも貰ったがこれが説明が難しくてな―――」


 もう何が何やら……私の頭では把握できなくなっている。
 とりあえずあの刀という剣は神器なのかー。
 あーだからあんなスゴイのかー。


「ご主人様、詰め込み過ぎです。私から少しずつ説明しておきます」

「そうか? じゃあエメリーに頼むわ」


 助かりますよ、侍女長。ほんとに。

 屋敷のリビングにご主人様の侍女(※メイドではないらしい)が勢ぞろいの中、私の紹介と説明がなされている。
 九人もの女性。その全てが奴隷であり侍女であり共に戦う仲間だと言う。
 星面族メルティスの占い師も驚いたが、竜人族ドラグォールまで居た。
 ほぼ伝説みたいな種族だ。なんという多種族国家……!

 おまけに皆が皆、美しい。
 私のような火傷女がこの中に入ると思うと心苦しく思う。
 なぜご主人様はこれだけの奴隷を集めておきながら私のような女を買ったのか、全く理解できない。


「で、とりあえずジイナが来たからにはやる事は多いんだが、まずはサリュ」

「はいっ!」

「ちょっと治療してみてくれ」

「分かりましたっ!」


 治療? そう思っていると、白い狼人族ウェルフィンの少女が近づいてきた。
 手に持つのは杖。
 狼人族ウェルフィンは近接戦闘特化の種族だったはずだ。
 なぜ魔法使いのような杖を……?
 そう思っていると―――


「<超位回復エクストラヒール>!」


 エク、何? うあっ、何だこの光!
 突然発せられた光の奔流は杖からか、もしくは私の身体からか。
 これは、神聖魔法……? 狼人族ウェルフィンが!?
 呆けていた私の視界では光が収まり、侍女の皆とご主人様が拍手する姿が……

 ……あれ? 視界が広い……?


『おー』パチパチパチ。

「さすがサリュ!」

「ジイナおめでとう!」


 え? え?
 右目が見える……! 右手も……動く! 火傷が消えている!?
 顔を触ってみると、そこにもゴワゴワとした痕が消えているような感触。
 な、治ったのか!? それほどの治癒魔法を!?


「高位司教とやらはこの魔法使うのに莫大な金をとるのか。とんだ生臭坊主だな」

「ご主人様、<スキルカスタム>によるサリュの神聖魔法が飛びぬけているのです。世界に何人もおりません」

「そうか?」

「ご主人様のおかげですっ!」


 ご主人様は侍女長と狼人族ウェルフィンの少女と話している。
 が、正直それどころではない。全く耳に入って来ない。


「ま、何にせよ良かったな、ジイナ。一応、目と手はちゃんと機能しているか確認しておけ」

「は、はい、ありがとうございます……」

「礼ならサリュに言え。俺が治したわけじゃない」

「私の魔法はご主人様が授けて下さったものですっ。だからお礼ならご主人様に!」


 この後、なかなか正気に戻れなかった私に気遣ってか、ご主人様は「色々やるのは明日にしよう」と私を休ませてくれた。
 奴隷となって早々、傷を治してもらったばかりか気遣いまでさせる始末。
 なんとも情けない話だ。

 ……が、ただの休憩であって、それで一日が終わるわけではない。
 ご主人様が色々とやるのは明日になっても、驚きの連続が終わるわけではない。
 私には侍女長がつき、色々と教えてくれるそうだ。


「とりあえず休憩したら説明に戻りますよ。今日のうちに最低限でも知っておかないと明日以降が困りますから」

「……はい」

「五分の一、いえ、十分の一程度でも理解できると良いのですが……」


 そ、そんなに?
 いや、すでに非常識が満杯すぎて頭と心が追いつかなくなっているのですが……。


「だーいじょうぶだって! 三日も経てば嫌でも慣れるさ! あたしだってそうだった! 自分の常識を一回ぶっ壊せば問題ない!」

「ツェン、貴女はまた適当な事を……ティナと稽古でもしていなさい」

「はーい。じゃあジイナ、頑張れよー」


 竜人族ドラグォールに指示する多肢族リームズ……。
 ああ、また私の頭と心が……。

 その後、侍女長について私は屋敷を案内して貰った。
 まずは二階の自室へと行く。奴隷の身分で豪華な一人部屋という事に驚き、受け取った侍女服がタイラントクイーンのドロップである【鉄蜘蛛の糸袋】製だと聞いて驚く。
 初めて入る風呂ではこれが天国かと思い、夕食に出された食事はまさしく最後の晩餐。
 トイレでは実際に天に召された。

 何はともあれ激動の一日を何とか乗り切った。
 もう火傷が治った事すら些細な事に思えてくる。
 私の人生を狂わせたものはあの火災ではなく、今日この日だったのだ。
 そう思ってしまうほどだ。


 私は悟った。
 下手に考えてしまうから心にダメージが入るのだ。
 無になれ。
 炉に入れた火をただ見つめるかの如く。
 そこに余計な考えを入れてはいけない。
 そうだ、無になるのだジイナよ。


 そう至った翌日、さらなる衝撃が私を襲う。


「右手と右目の調子はどうだ、ジイナ」

「はい、おかげさまで何ともありません。ありがとうございます」

「鍛治は出来そうか?」

「問題ないです……が、どこかの鍛冶場に出向いて働くという事でしょうか」

「いや、厩舎を潰して鍛冶場を作ろうと思ってな」

「……は?」


 朝から何を言い出すのかと思えば、鍛冶場を作ると言うのだ。
 厩舎なんか使ってないから鍛冶場にする、と。


「ちょっと待った、ご主人様ーっ! ジイナは酒造れるんだろ!? 酒蔵作ろうぜ!」

「酒蔵なぁ……ジイナ、一から酒を造るとなるとどれくらいかかる?」

「一から、ですか。種類にもよりますが、おそらく何月かは掛かると思います」

「な? すぐ飲めないんだから諦めろ」

「だーっ! でももったいないじゃないか! せっかくの鉱人族ドゥワルフだぞ!? 酒を造らないでどうする!」

「もったいないのはその通りだな。だから落ち着いたら手を付けるとして、まずは鍛治だ」


 なんか酒造りもやる流れになってる。
 どうなるんだろう、私。

 そして皆を庭へと連れだしたかと思えば、厩舎の前で何やら空中で手を奇妙に動かしている。
 ここを鍛冶場にする為の構想を練っているのだろうか。
 イブキさんがご主人様に話しかける。


「厩舎を潰すのも勿体ないですね」

「馬車を持つ予定も馬を使う予定もないからな。<インベントリ>に入れて走った方が早い」

「それはまぁそうなのですが……」

「さて、鍛冶場と言っても色々とあるんだな……コークス炉……うわっオーパーツじゃねえか、CP超高いし。もっとデチューンを……何となく中世イメージで……こんな感じか? 一応耐熱レンガと、鉄っぽいのも混じってるけど……煙が上がるのと、騒音が厄介だな、これをどうにか……」


 などと喋りながらご主人様が手を動かしていると、厩舎は光だし、その形状が変化していく。
 それはまるで煙のように水のように形を変え、やがて小屋のようになったところで光が収まった。
 大規模な錬金術か? 私はご主人様の力をまざまざと見せつけられた気がしていた。


「お見事です、ご主人様」

「相変わらずすごいですね」

「建物自体が変化してしまうとは」

「もう我は今さら驚かんぞ」


 先輩たちが口々に言うが、やはり慣れているのだろう。
 私にはとても現実で起きた出来事とは思えないのだが。


「ジイナ、ちょっと中入って見てみてくれ。使えるかどうか確認するぞ」

「は、はいっ!」

「ダメな所があったら遠慮なく言うように。作り変えるからな」


 事もなげにそう言うのだ。
 今の大魔法的な何かが何度も使用可能だと。
 無だ。無になれジイナ。
 今はただ淡々とご主人様に従えば良い。

 そして小屋へと入ったはいいが、その素晴らしさにまた心が揺さぶられる。
 いや、炉と棚しかないのだ。それでも真新しい鍛冶場は感動する。
 炉にしても見たことのない形状ではあるが、石材だけでなく鉄も使っているようだ。
 煙突へと繋がる排気口が全て鉄。こんなの初めて見る。

 しばし呆然と眺めたが、結局は実際に使ってみてから良し悪しを判断する事となった。
 朝から疲労困憊になった気分だ。
 とは言え、まさか本当に鍛冶場が出来るとは、私が打てる日が来るとは思わなかった。
 ご主人様には改めて感謝しかない。
 私は奴隷として侍女として、そして専属鍛治としてこれからもお仕えしたいと思う。


「あと今日の予定はジイナの<カスタム>と北西区に鍛冶場用のもろもろ買い出しに行くからな」


 ちょ、ちょっと心休める時間を……。


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