カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第五章 黒の主、未知の領域に立つ

107:二階層を駆け抜けろ!ただし前に出るな!

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 A:前衛:セイヤ【刀】・ネネ【短剣・斥候】・ドルチェ【盾・槍】
   後衛:ミーティア【弓・火魔法】・ウェルシア【風・水魔法】


■ドルチェ 針毛族スティングル 女
■14歳 セイヤの奴隷


 カオテッド大迷宮の二階。私は初めて訪れました。
 今までは洞穴の中だったのに、階段を下りると急に″外″になるんです。
 話には聞いてましたけど、これが本当に迷宮の中だとは思えません。


「カオテッドの下に大河が流れてるはずなのに、迷宮の地下一階が『洞穴』って時点でおかしいだろ。二階が『外』でも何もおかしくはない」


 そう、ご主人様は言います。
 よく分かりませんけど、ご主人様が言うならそうなんでしょうね!
 私には理屈とか仕組みとかさっぱりです。


 ともかく、二階は目の前に広い平原が広がり、右に森林、左に林、奥には山岳地帯が見えます。
 上は青空。いい天気です。
 一階の天井とかは見えません。

 一階のように道の横幅が決まっているわけではないので、ABCパーティーの隊列は三角形にするそうです。
 各パーティーの距離を少し離した、大きな三角形。
 とりあえずAパーティーの私たちが先頭です。


「二階もスルーするぞ。寄り道しないからな」

「タイラントクイーンもですか?」

「パスだな。おそらく二階で一番経験値効率がいいのはタイラントクイーンだと思うけど、場所が悪すぎるからナシだ」


 以前にご主人様たちが二階に来た時にはタイラントクイーンを連続して狩ったそうです。
 私たちが着ている侍女服をつくる為だそうで。
 でも右手の森の一番奥がタイラントクイーンの領域で、そこに行くまで大森林地帯を抜けるから時間がかかると。

 ティナちゃんたちがまだ入ったばかりの頃に戦う事になったそうで、タイラントクイーンのすごさを教えてくれました。
 タイラントクイーンにはご主人様以外の攻撃は効かないらしく、武器がはじかれるんだそうです。
 子蜘蛛もいっぱい出て来るので、そっちを倒すのも忙しいと。

 ヒイノさんは盾役としてタイラントクイーンの攻撃を受けたそうですが、今まで戦ったどの魔物よりも強烈な攻撃だったとか。
 私は同じ盾役として受けられるのか、とても気になります。
 機会があれば是非とも戦ってみたいところです。


「あの時のヒイノはステも低いし、盾もミスリルじゃなかったからな。今のドルチェとは前提条件が全然違うよ。おそらく余裕で耐えられると思うけど<不動の心得>の良い練習相手にはなるだろうな」


 おお、そう聞くとなおさら行ってみたいですね。
 でも今回は行かないので残念です。
 同じような練習相手になる魔物が出て来ることを期待しましょう!

 二階は一階と違って曲がり角とかないし、罠とかもほとんどないから楽々進めます。
 広い平原を少し駆け足で、真っすぐ進みます。


 出て来る魔物は主にウルフ系。時々オークやウサギや虫とかもいます。
 ウルフ系はピンキリですが、どれも素早く、そして群れで襲って来るので楽しいです。
 私はどれも初めて戦う魔物ばかりなので、少しワクワクしてしまいます。


「ドルチェ、前に出すぎだ。突撃するな」

「はいっ! 下がりますっ!」


 いけないいけない。つい突撃してしまう。
 私たちのAパーティーは前衛が私のほかにご主人様とネネさんですが、どちらも遊撃的な戦いですからね。
 私は盾役としてどっしりと構え、後衛のミーティアさんとウェルシアさんを守らないといけません。

 でも、どっしり構えるの苦手なんですが。

 どうも『待つ』より『攻める』ほうが好きみたいで。
 そもそも待ち構えているうちに、皆さんで倒してしまいそうで、私の出番なくなりそうですし。
 まぁ、そこはご主人様が指示して私用に魔物を残してくれたりするんですけども。


「ドルチェは倒すのが仕事じゃない。味方への攻撃を防ぐのと、盾チクするのが仕事だ」

「それは分かるんですが、自分からドカーッと行きたい気もしてまして」

「はぁ、この世界に突撃槍ランスがなくて良かったよ。お前に持たせたらひたすら突っ込みそうだ」

突撃槍ランス?」


 聞けば、ご主人様が元いらした世界にはそういう槍があったそうです。
 主に馬に乗って突撃する為の槍。
 重く、長く、ひたすら突いて突撃するための槍だそうです。

 おお、なんかカッコよさそうですね!
 ジイナさんに言えば作ってくれるんじゃないでしょうか!


「ダメだ。お前に持たせたら一人で突っ込んで帰って来なくなるのが目に見えてる。先走って突っ込むタイプのツェンやティナでさえパーティーの距離感は守らせてるのに、ドルチェは突っ込んだら突っ込みっぱなしで戻って来ないだろう? だから突撃は禁止」


 そんなー。


「どうしてもドカーッてやりたいんなら盾でやったらどうだ? シールドバッシュ」

「しーるどばっしゅ?」

「盾を叩きつけて攻撃するんだよ。槍だけじゃなくて盾でも攻撃する感じ」

「おお!」


 つまり右手に槍、左手に盾で二刀流になると!?
 それなら魔物をドカーッて出来ますね!


「いや、二刀流じゃないが……まぁいいか」


 シールドバッシュ!
 盾チクに続く奥義の二つ目です!
 これでバシバシと魔物を倒していきましょう!

 平原には【領域主】としてグレートウルフという狼が時々出て来るそうです。
 すごく大きな狼だとか。
 出来ればそいつを相手に<不動の心得>とシールドバッシュの実験をしたいところです!


「ん! いた、グレートウ―――」


 お、言った傍からですか!
 これは幸先が―――


 ―――バシュゥン!

 ―――キャイィン!


『あ……』

「あ……す、すみません……撃っちゃいました……」


 気付いた時にはミーティアさんの矢に射貫かれ、一撃で死んでいました。
 ネネさんが察知で今、気付いた距離ですよ!?
 それを瞬時で撃って、しかも一撃で倒すんですか!?
 グレートウルフって【領域主】ですよね!?


「ミーティア、ずるい……」

「わたくしも試したかったですわ」

「今のはミーティアが悪いな。せめてドルチェに一回当たらせたかった」

「も、申し訳ありませんでした……」


 ま、まぁ安全に倒せたのは良かったですよね、うんうん。
 私も戦ってみたかった気持ちはありますが。【領域主】は滅多に会えませんし。
 しかし本当に【神樹の長弓】はすごいです。まさに神器。
 これが撃ち放題って言うんだからとんでもないですよ。


「まぁ過ぎたことは仕方ない。次に【領域主】が出たらなるべくみんなで戦えるようにするからな」

『はい』

「ご主人様、このまま砦の方面まで行かれるのですか?」

「そうだな。今日は砦で一泊したいんだよな」


 ここまで魔物と戦いながらも早いペースで進んで来れました。
 普通の組合員の人たちなら、急いでも二階に着いたあたりで夜営する事になるんじゃないでしょうか。
 それを私たちは二階層の最終地点まで行くというのですから、やはり早いと思います。

 三階層への下り階段は、山岳地帯の麓にある『砦』の中にあるそうです。
 奥の山岳地帯まで行けばミスリル鉱山があるそうですが、そこまでは行かないと。
 前回は行ったそうですが、逆に『砦』は誰も行ったことがないそうです。


 そう言っているうちに見えてきました。その砦が。
 迷宮組合の本部より二回りくらい大きいですね。
 お城とかそんな規模かもしれません。


 この砦エリアはウェアウルフばかりだそうです。
 それも、剣や槍を持ち、鎧を着ている、軍隊みたいなウェアウルフです。
 【領域主】としてウェアウルフロードが出るらしく、その部屋を抜けると三階層への階段だそうです。

 ロードが居る玉座の間っぽい部屋は砦の一階にあるそうです。
 でも二階にはいくつも小部屋があるらしく、私たちはそこを占拠して夜営しようとしています。
 外でもいいんですけど、砦の中の方が安全じゃないかと。


「ウェアウルフが群がっている拠点で夜営しても大丈夫なんでしょうか」

「一応、砦内の魔物は最初に全部駆逐する。その後部屋に入って、扉を締め切るつもりだ。それでリポップしてきたウェアウルフが部屋に殺到するようなら夜警の担当者がどんどん倒して行く感じだな」


 ん? つまり夜警をすれば次々にウェアウルフが襲って来てそれを独占できると?
 倒し放題ってことですかね?


「これだけ人数がいるから夜警は二人ずつで、少しの時間でもいいかもな」


 あー、あまり時間もらえないんですね。
 じゃあそんなに倒せないかも。
 ツェンさんとかと組んでも全部もっていかれそうですし。


 ―――ワォォォォォォン!!!

 ウェアウルフの遠吠えが聞こえました。
 どうやら砦の入口の衛兵役に気付かれたらしいです。
 戦闘ですね! 頑張りますよっ!


「だから前に出るなっつーの、下がれドルチェ」

「はいっ! 下がりますっ!」


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