カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第五章 黒の主、未知の領域に立つ

108:人狼王を倒せ!ソロで!

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 B:前衛:イブキ【大剣】・ヒイノ【盾・直剣】・ティナ【レイピア】
   後衛:フロロ【土魔法】・アネモネ【斥候・闇魔法】


■アネモネ 多眼族アフザス 女
■17歳 セイヤの奴隷


「砦に入ったら散開するぞ! Aは右、Bは真っすぐ、Cは左を制圧しろ! 一階の制圧が終わったら二階もだ! 全て制圧したら打ち合わせ通り、二階の端の部屋に集合な!」

『はいっ!』


 砦入口で門番みたいにしていたウェアウルフを倒しつつ、ご主人様の号令一下、砦に走り込む。

 砦の中に入ると遠吠えを聞いて集まったのか、ぞろぞろと向かってきた。
 どれも数体の群れで、武器を持って鎧を着ているウェアウルフ。
 まるで組合員のパーティーと戦っているような気もする。

 と言うか、このウェアウルフという魔物は身体能力もあるし、頭も良い。
 力も速さもあって、連携もしてくる。
 組合員以上に強いパーティーじゃないかと思ったり。魔法は使わないけど。


 この階層を抜けて三階で活躍しているのがごく一部のパーティーとクランだけと言うのも納得。
 いくら<カスタム>されていても、私が六人いたとして、それだけで突破するイメージが持てない。
 絶対死ぬ。魔法撃つより速く襲い掛かられてザクッ、ガブッって死ぬ。

 しかし今は前衛にイブキさん、ヒイノさん、ティナちゃんが居て、隣にはフロロさんも居る。
 盤石。負けない。
 これでもしやられるようなら、それは私くらいのものだ……ふふふ……。


「イブキ! 砦の中で無暗に炎使うんじゃないぞ! ティナものう!」

「了解!」「はいっ!」

「ヒイノ、守りは任せるぞ。いくらウェアウルフが速いとは言え、ティナより遅いから問題ないだろう?」

「ふふっ、はいっ」

「アネモネ、我らは遠くの敵か、狼どもの足を鈍らすように撃つぞ、出来るな」

「ふふふ……がんばります」


 このBパーティーのリーダーはイブキさんのはずなんですけどね。
 すっかりイブキさんが魔剣の魅力に取り憑かれた事で、いつの間にかフロロさんがリーダーになってる。
 私はどちらでも全然構いません。
 後衛の方が戦況を見やすいとか色々あるみたいだし。


「ふぅ、我、戦いは苦手なんだがのぅ……どうしてこうなった……」


 なんかフロロさんがブツブツ言ってる。
 とりあえず私は言われた通り、後ろの敵を狙い撃ちしよう。

 砦から真っすぐの道は左右に比べて広い。
 終点が玉座の間になってて、その先が三階層への階段になってるからだ。
 つまりは主戦場であり、玉座の間には【領域主】が居るという事。


 【領域主】はリポップされる時とされない時がある。
 現に一階層の最終エリア、鍾乳洞の【領域主】リザードキングは現れずに二階層に来れた。
 だから今回も居ないかもしれない。

 そんな淡い期待を持ちながら、通路のウェアウルフを倒していき、通路の左右の小部屋を開けつつ、全ての敵を殲滅していく。


「いるといいなぁ~ウェアウルフロード! イブキお姉ちゃん、本当に私が戦っていいの!?」

「ああ、でも危なそうなら私も入るからな。ヒイノもフォローを頼むぞ」

「はい。ティナ、油断しちゃダメよ?」

「うんっ!」


 どうやら期待しているのは私だけの模様。
 ティナちゃんの笑顔が眩しい。
 こんな中、私は出来れば会いたくないなんて言い出せない。


「会えんなら会えんで別にいいだろう、無理に戦わなくてもいいのだからな」


 おお、フロロさん。
 こんなところにお仲間が。
 はっきり言えるフロロさん、眩しすぎる。私なんぞにはとてもとても……。

 と、そうこう言っているうちに重厚な扉が前に現れた。
 見るからにここが玉座の間だろう。
 イブキさんが私たちに目線で合図してから一気に開ける。


『グルルルルゥゥ!!』


 部屋の中にはウェアウルフが六体。
 そして中央には外套を纏い、大剣を持った、巨漢で筋肉ムキムキのウェアウルフがいた。
 やはり期待は淡すぎたらしい。


「よし! 行くぞ!」

『はいっ!』


 イブキさんの号令で走り出す。
 ティナちゃんが突貫。ヒイノさんとイブキさんがそれに続く。
 私とフロロさんは左右のウェアウルフだ。


風の槍ウィンドランス!」


 まだロードと距離があるうちに先制の風の槍ウィンドランス
 ロードは驚いた様子で大剣で防ぐも、それで体勢は崩れ、前には出られなくなった。
 そこにティナちゃんが突っ込む。
 速い。まるで魔法に追いついたかのよう。魔法と物理の連撃みたい。


「ていっ!」


 かわいい掛け声とは裏腹に攻撃はえぐい。
 魔法を防いだ大剣で顔をガードしているのをいいことに、狙うは腹。
 レイピアは的確に風穴を開ける。

 しかしそれで倒れるロードではないらしい。さすがは【領域主】。
 くぐもった声を上げながら大剣を薙ぎ、ティナちゃんとの距離をとろうとした。


 一方でイブキさんとヒイノさんはティナちゃんの両脇でロードを守ろうと迫るウェアウルフと対峙している。

 どうやらこの部屋にいるウェアウルフは、一段階強いらしい。近衛兵か何かだろうか。
 しかしそれを相手にしつつ、ティナちゃんの様子を伺っている。
 すぐにでも助けに入れるようにと。さすが。

 そうなると私とフロロさんの相手はウェアウルフが二体ずつ。

 いくら強くなっていると言っても、範囲魔法を撃てば終わる。
 私もフロロさんもここまで新調した杖の調子を確かめてきている。
 たった一日の経験則が「これくらいの魔法で十分だな」と教えてくれる。


岩の槍ロックランス

闇の波ダークウェイブ


 室内だからあまり派手な魔法は撃てない。
 だけど問題ない。
 問題なく撃てるレベルの魔法で、問題なく倒せる。
 仮に生き残っても、弱めの魔法を速射すればいい。


 結局、六体のウェアウルフは瞬殺された。
 生き残ったのはロード一体のみ。
 それも風前の灯と言ったところ。

 だってティナちゃんが速すぎる。

 いくらウェアウルフが素早い魔物だと言っても、いくらロードがそれを越える【領域主】だと言っても。
 大剣を振り回して当たるティナちゃんではないし、その巨体で避けられるはずもない。
 ティナちゃんの攻撃は軽いけど鋭い。
 斬られれば血が噴き出し、突かれれば穴が開く。

 そうしてじわりじわりと体力を削り、やがて王は倒れた。


 ―――ズシィィィン……

「やったぁ!」


 一人で【領域主】を倒し、笑顔で喜ぶ八歳の少女。
 尊い。眩しい。
 私が八歳の時なんぞは……ダメだダメだ、思い出しちゃダメだ。


 ロードのドロップ品は「大きな魔石」「人狼王の毛皮」「人狼王の尾」だった。
 ウェアウルフからの魔石や牙もあったのでマジックバッグに入れておく。

 念の為、玉座の間の奥にある部屋を覗くと、やはり三階への階段があった。
 運の良い人たちはロードを倒さないで行けるんだろうなぁ。
 まぁそれを「運が良い」と見ない人が【黒屋敷】には多いんだけど。


 ともかく私たち担当の一階部分は終わったから、入口まで戻って二階の殲滅を狙う。
 リポップするまでに一度殲滅して部屋を確保したいから。


 しかしどうやら私たちが一番遅かったらしい。
 正面通路は広い上に玉座の間まであるから、他の場所より魔物が多いらしい。
 すでにA・Cパーティーの面々は揃っていて、集合しているようだった。

 拠点に決めた部屋はいわゆる『宝魔法陣部屋』。
 部屋の奥の床に″見える″魔法陣が描かれており、魔力を流すとお宝が手に入る。
 トラップもないという情報はすでに持っているが、念の為、ネネちゃんがすでに<魔法陣看破>したらしい。


「あー、防具かー」


 手に入ったのはミスリルアーマー。
 普通に買うとかなりお高い、普通のパーティーであれば喜ぶであろうお宝だ。

 しかし私たちにとっては全くの無用物。
 溶かして打ち直すか、売るかくらいしか利用できない。
 多分、この侍女服のほうが防御力高いと思う。軽いし。


「ミスリルアーマーを得て残念がる組合員がどこにおるのだ……」


 フロロさんが呟いている。
 私も少しそう思います。
 口には出しませんけど。


「ま、気を取り直して夜営の準備するぞ。食事と寝床の用意な。あと警備」

『はい』


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