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第五章 黒の主、未知の領域に立つ
112:全身鎧?知るか!叩け叩け!
しおりを挟むB:前衛:イブキ【大剣】・ヒイノ【盾・直剣】・ティナ【レイピア】
後衛:フロロ【土魔法】・アネモネ【斥候・闇魔法】
■ヒイノ 兎人族 女
■30歳 セイヤの奴隷 ティナの母親
「ギャウギャウッ!」
「邪魔をするな犬がっ!」
「ティナ! 前のレイスを倒すぞ!」
「はいっ!」
「ふふふ……私、役立たず……」
私たちは三階層の『廃墟エリア』に入りました。
ここは″廃れた街″と言いますか、石造りの家々が並んでいるのですが、屋根や壁が崩れ、まともな家は見当たりません。
通りも一応はあるのでそこを真っすぐ走っているのですが、踏み固められているわけでもなくボコボコですし、廃墟が障害物となって、アンデッドが奇襲してきます。
まぁイブキさんは<気配察知>がありますし、私とティナは<危険察知>があります。
罠魔法陣があってもアネモネさんが看破できます。
どれかしらに引っ掛かるので奇襲の体は為さないんですけども。
ただアネモネさんは闇魔法が主力なので、アンデッドとは相性が悪いようです。
斥候で頑張ってもらいましょう。
私も魔法攻撃の手段がないので、レイスとか無理ですし。
この『廃墟エリア』では素早く動き回る骨の犬、ボーンドッグや、物理攻撃の効かないレイス、グールのさらに上位種のリビングデッド、少数ですがリビングアーマーまで出て来ます。
段々とアンデッドの質が上がってるのが実感できます。
今は十五人で進んでいるから大丈夫ですけど、もし六人だけで来たら取り囲まれそうです。
「一気に焼くぞ! 離れろ!」
『はいっ!』
やはりBパーティーの生命線はイブキさん。
この階層では特に、ですね。
アンデッドには光・神聖属性の次に火属性が効くそうです。
そうなるとBパーティーにはイブキさんしか有効手段がありません。
ティナは風ですし、フロロさんは土、アネモネさんは闇ですからね。
魔剣を活かす機会が増えた事でイブキさんも調子が良さそうですし、とても頼りになります。
「うー、風の槍あんまり効かない」
「ダメージ与えられるだけマシでしょう。ほら、私の分までレイスやっつけてね」
「うんっ」
二階層とは打って変わってティナは元気なさ気です。
骨しか倒せない私よりマシでしょうに。
アネモネさんを見て見なさい。骨も倒せないんですよ。ずっと「ふふふ……」って含み笑いするだけです。
あ、いえ、看破はしてもらってるんで何も働いていないというわけではありませんよ、本当に。
ともかくそうして、通りを進みながら、時折路地から飛び出して来るボーンドッグや、屋根から強襲してくるレイスを順々に倒しつつ前へ前へ。
すると街の広場のような場所に出ました。
広場と言っても屋台が出ているわけでもないですし、街路樹も噴水もありません。
めくれた石畳と崩れた家の残骸があるだけの広場です。
そこにはリビングアーマーが剣や槍を鋼鉄の盾から突き出し、綺麗に整列していました。
まさに軍隊。
死霊の軍勢です。
最後尾には指揮官たる存在が一人。
鎧を纏った馬にまたがる漆黒の鎧。
その人には首がありません。
「デュラハン……! 【領域主】か!」
イブキさんが嬉しそうに笑って言います。
場所的に私たちの担当じゃありませんけどね。
「パーティー間を開けろ! 各個撃破だ! 連携して徐々に倒していけ!」
『はいっ!』
ご主人様の号令一下、私たちも五人で揃って駆けだします。
リビングアーマーは全体で五十ほどでしょうか。
三分の一は私たちBパーティーで処理しないといけません。
ガシャガシャと無言の軍勢が動き出します。
フルアーマーですから動きは遅い。
ティナは素早い斬り込みから、離脱と同時に風の槍で追加ダメージを狙っています。
イブキさんはリビングアーマーの盾受けを物ともせずに薙ぎ払う。それはちょっと真似できません。
フロロさんとアネモネさんは一列後ろの敵に向かって魔法を放っています。
アネモネさんの闇魔法も全く効かないというわけではありませんし、牽制にはなりますからね。
―――ギィン!
私はリビングアーマーの剣をミスリルバックラーで盾受けしてからの剣戟。
この攻撃でも防御は問題なさそうです。
やはり【守護の腕輪】の効果もあるのでしょう。
しかし……。
「イブキさん、どこ狙えばいいんですか!?」
「鎧の継ぎ目だ! 首か腰を狙え!」
「了解です!」
いくら直剣がミスリル製でもダメージを与えられる気がしません。
青黒いその鎧が何製なのか分かりませんが。
フルアーマー相手にどこを狙って切り付けるか迷いました。
ティナもその言葉を聞いたのか、首を狙って突きをしています。
でもこれ、仮に首を落としても死なないんですよね。
どうやって倒せばいいんですかね。
ガシガシとバックラーで防ぎ、逸らし、弾きながら直剣を振るいます。
首筋に剣を入れましたがリビングアーマーは中身に人が入っているわけではありません。
手ごたえなし。
それでも幾度も切りつけていくと何となく分かってきました。
どうやら鎧自体が人みたいなものだと。
鎧と見るのではなく、鋼鉄の皮膚を持った人だと思えばいい。
考えてみればリビングアーマーは鎧が本体なわけですから当然と言えば当然です。
であれば、やはり柔い部分であろう首筋や関節が狙いどころという事なのでしょう。
なるほど、さすがはイブキさんです。
少し時間は掛かりましたが私の相手をしていたリビングアーマーは崩れました。
そして周りを見れば、皆さんさっさと片付けていたようです。
やはり魔法や打撃の方が相性が良さそうですね。
私は防御に専念していたほうが良いのかもしれません。
しかしまた一つ勉強になりました。
やはり戦闘初心者である私はこうした積み重ねを経て、徐々に強くなっていかなければならないのですね。
「初見でリビングアーマー相手に完封する初心者剣士がどこにおる……」
フロロさんが何か言ってますがよく聞こえませんでした。
お疲れでしょうか。土魔法たくさん撃ってましたし。
私たちBパーティーに割り振られたリビングアーマーは皆さんの活躍で無事に倒せました。
他のパーティーを見ても、どうやら終わっているようです。
怪我もなさそうで何よりですね。
デュラハンは……どうやらミーティアさんが撃ち抜いたようです。
ミーティアさん、ずっと調子いいですね。【神樹の長弓】の性能もすごいのでしょうが。
火魔法もありますし、三階層はサリュちゃんとミーティアさんだけでも問題なさそうな気がします。
それから『廃墟エリア』を抜けるべく前へと進みました。
残党のように襲って来る骨犬やレイス、リビングデッドを倒しつつ前進。
抜けたら抜けたで、毒の沼地が点々としていたり、それが繋がって河のようになっていたり、それを飛び越えないと進めなかったりと、いよいよ最終エリアに向けて難しくなってきた感があります。
出て来る敵はグールやリビングデッドに加え、ポイズンフロッグという大きな毒蛙もいます。
毒は厄介ですが物理攻撃が効くだけマシです。
まぁほとんど皆さんの遠距離攻撃で終わるのですが。
そうこうしているうちにやっと見えてきました。
今日の目的地。『廃城エリア』、通称『不死城』です。
城下街もない城壁に覆われただけの城ですが、所々崩れ、黒っぽい外壁と天に伸びる尖塔が相まってとても禍々しく見えます。
「今日はもう殲滅せずに部屋に行くぞー。入ったら右手、一番奥から二つ手前の部屋が宝魔法陣部屋だから、そこを拠点にする」
『はいっ』
どうやらご主人様も早く休みたいようです。
今日は走ってばかりでしたし、敵も厄介でしたからね。
「あー、風呂入りてー」
そう呟くご主人様の声に、皆で笑いつつ同意していました。
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