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第五章 黒の主、未知の領域に立つ
117:数的不利でも無茶をせよ!
しおりを挟む■フロロ・クゥ 星面族 女
■25歳 セイヤの奴隷 半面
四階層で初めてとなる【領域主】の討伐を終え、リポップされる前に『トロールの集落』を出る。
とりあえず拠点を決め、今後の話し合いをしようとなった。
二階層や三階層のように屋内というわけにはいかない。
四階層にもあるのかもしれないが、今のところは発見できていない。
ならばと集落を出た先の岩陰を拠点と決めた。
少し早いが、マジックテントを張り、夕食の準備を行う。
「さて、じゃあ方針を決めるぞー」
落ち着いたところでご主人様の声が上がる。
「一番初めに見つけたわりに『トロールの集落』は今の俺たちにとって美味しい。経験値的にも、CP的にも、戦闘経験的にもだ。これは利用すべきだと思う」
頷く者が多数。我もそう思う。目的に沿っていると。
確かにトロールとトロールキングは強敵だが、岩山から攻撃できる分、『不死城』の『玉座の間』でリッチ共と戦うより安全で楽だとは思う。
また、トロールキングが【天庸】のボルボラと大差ない強さと示したのも大きい。
ある意味、強くなる為の指標があるようなものだ。
「ただ四階層の探索もしたい。まだ宝魔法陣もあるだろうし、ほかのエリアでもっと効率の良い所があるかもしれないからな」
これもまた頷く。せっかく四階層まで来たのに『トロールの集落』だけで終わらせるのは勿体ない。
実は先ほどのトロール戦後、集落の中に隠し魔法陣を発見した。
ちょうどトロールキングが座っていた岩のあたりだ。
魔力を通して出てきたのは【アダマンタイトスピア】だったのだ。
うちに槍使いは一人しかいないので、当然ドルチェに渡されたのだが、これは『四階層にはアダマンタイト製の武具が出る』という事実でもある。
もしくはそれ相応の宝だ。
それを手に入れれば戦力アップにつながるというわけだ。
ご主人様としては「トロールの集落で稼ぎたい反面、四階層の探索もしたい」という事だろう。
そしてそれは我ら全員が思っている事でもある。
「悩んだんだが、パーティーを組み変えようと思う。その上でトロール退治を二パーティー、探索を一パーティーにする。それで明日一日はやってみようかと」
なるほど。一挙両得を狙うか。
どちらも戦力不足な気がするが大丈夫だろうか。
トロールキングとトロール二〇体を十人で倒せるか。
探索で強敵と出会った時、五人だけで対処できるか。悩ましいところだ。
ご主人様が振り分けたメンバーは以下の通り。
A《探索班》:前衛:セイヤ【刀】・ネネ【短剣・斥候】・エメリー【ハルバ・投擲】
後衛:フロロ【土魔法】・アネモネ【闇魔法・斥候】
B《集落班》:前衛:イブキ【大剣】・ジイナ【槌】・ドルチェ【盾・槍】
後衛:サリュ【光・神聖魔法】・ウェルシア【風・水魔法】
C《集落班》:前衛:ツェン【爪】・ヒイノ【盾・直剣】・ティナ【レイピア】
後衛:ミーティア【弓・火魔法】・ポル【鍬・水・土魔法】
ほぉ、我は探索班か。まあそれは良いが何となく狙いが見えるな。
Aパーティーにネネとアネモネの斥候コンビを二人とも入れる。トロール狩りをするのに斥候は必要ないからのう。
エメリーはマッピングとパーティーバランスか。
強敵が出たらご主人様一人で何とかするつもりだな、さては。
一方でトロール狩りのBCパーティーは、遠距離攻撃で削るのが四人。うち二人は高火力のサリュとミーティアだ。
ウェルシアの<魔力凝縮>も高火力となりうる。
その上で前衛はトロールを相手取れて、尚且つトロールキングと戦えそうなイブキとツェンを入れた。
ドルチェとヒイノの盾コンビを入れたのも安全性の為だろう。
「色々と危惧している部分もある。フロロとポルを入れ替えようかとも思ったが、マッピング担当のエメリーの負担を減らす意味でもフロロにした。フロロの方がレベルも高いし、<カスタム>の余地もあるしな」
そういうことか。
確かにポルが入ればエメリーは自由に戦えんだろう。スイッチさせるだろうからな。
探索に五人しかおらず、うち二人が斥候である以上、戦力的にもエメリーは自由にさせた方が良い。
「あとは当然だが集落班の方がレベルの上がりは早くなる。探索班は運任せで出会う敵次第になるだろう。だからとりあえず明日はこれで行ってみて、明後日はまた変えるかもしれない。斥候を一人にするとかな」
だろうな。そこは探索次第になりそうだのう。
ご主人様は皆の意見も求めたが、特に反対意見も出なかったので、これで行く事となった。
集落班はミーティングが終わるなり、誰がトロールキングと戦うかで騒いでいる。
イブキ、ツェンが戦いたがり、ティナやドルチェも便乗して戦いたがる。
しかしティナとドルチェはトロール相手にも苦戦しておったから注意されたらしい。まずはトロールを安定して狩れるようになれと。
「お前らいきなり一人で戦おうとするな。まずは数人で戦って慣れてくれ。サリュとミーティアの補助は必ずつけるように。トロールキングなめてると本当にやられるぞ?」
結局、ご主人様の一喝で無益な争いは終わった。
イブキとツェンが二人同時で戦うらしい。
遠くからミーティアとサリュがバンバン撃てばいいような気もするがのう、言わぬが華か。
そんなこんなで夜警の順番決めをして探索三日目は終わった。
我はウェルシアと夜警となったが、襲ってきた魔物はスライムと狼くらいだった。
どうやら誰に聞いてもトロールは来なかったらしい。寝ていたのか?
「起きたら圧し掛かられてるのがデフォルトになってるんだが……」
だったら止めるように言えばよかろう。
ちびっ子どもが相手だから言えないのだろうが。
「いいか、絶対に安全に戦えよ? 無茶するようならそこで探索切り上げるからな? 特にイブキとツェン、分かったな?」
「はっ!」「はーい」
「ミーティア、お前が指揮しろよ? 言うこと聞かないようならお前一人でトロール殲滅しちゃってもいいから。サリュも回復優先でいいからな」
「「はい」」
一通り、集落班に指示を出し、我ら探索班は出発する。
心配なのもあるだろうが、トロールに対してどう戦うのかも個人個人に指示を出していた。
例えばミーティアにも接近戦を試すよう強いたり、ドルチェには【アダマンタイトスピア】を使いたい気持ちを抑えさせ、盾受けを優先させたりと。
そして我らが向かう先は四階層の入口から右手に見えた仮称『岩石地帯』だ。
一度入口付近まで戻り、そこから『岩石地帯』へと入る。
道中は五人と身軽になったのもあるし、斥候が二人という事で歩みは速い。
できれば『岩石地帯』を今日中に走破したいとはご主人様も言ってた。
やがて足を踏み入れたそこは、溶岩など全くなく、かなり暗く感じる。
積み重なった岩石は遠目では山のように見えたが、実際は渓谷のようになっていた。
渓谷の両側にそびえる岩の崖が盛り上がって山のように見えていたようだ。
広く深い渓谷がまっすぐに続いている。
必然的に探索は渓谷の中、底を歩く形となる。上から見ただけでは探索にならんからのう。
しかしこうなるとほぼ真っ暗だ。ご主人様は<インベントリ>から魔道具のランタンを取り出し、それをアネモネに持たせる。
後衛陣は戦闘でも動かずに片手で杖が持てるからのう。当然だな。
渓谷内はどうやら落石や槍が飛び出すトラップがあるらしく、斥候組の<魔法陣看破>が活躍している。
さらに問題は魔物なのだが、ここにも″巨人″が目立つのだ。
トロールよりも少し大きい単眼の巨人、サイクロプス。
それが渓谷の先々に見える。
それだけではなく、岩を模した蟹や、赤黒の翼を持つ鳥などがいる。
どちらも人よりやや小さいくらいの大きさ。名前は知らん。
蟹は擬態しているが<気配察知>の前には無力。ただの硬い蟹だ。
鳥は空からの強襲。嘴や爪も鋭い。
「打って変わって、って感じだな。とりあえず試しながら進むぞ」
『はい』
「ネネとエメリーは蟹にミスリル武器が効くか確認。その後魔法の効きを試す。鳥は<飛刃>で倒すけど、後で魔法も一応試すからな。サイクロプスはこの面子だと普通に倒すしかないだろう。俺がやるわ」
『はい』
サイクロプスとトロールの比較とかしたかったがのう、盾役もおらんし受けるのはご主人様しかおらん。
もちろん出来る限りの検証がするだろうが、効率を考えれば結局はご主人様が倒すことになるであろうな。
この五人で初めてのエリアを素早く探索となると、ご主人様無双になるしかあるまい。
ともかくそうして戦い始め、色々と確かめていく。
やはり蟹は硬く、ネネとエメリーでは相性が悪い。ご主人様の刀だとスパッといったが、神器は例外。
蟹自体が土魔法を使う事もあって、我も大したダメージは与えられず、アネモネのみが順当に戦えた。
鳥は素早い上に火魔法を放ってくる。
なかなか近距離に来ないのでネネは不向きだが、エメリーの<投擲>はよく効く。
土魔法も闇魔法も問題ない。しかしそれ以上にご主人様の<空跳>からの<飛刃>で簡単に倒せる。
「もう全部ご主人様でいいんじゃないかのう」
「そう言うな。しばらくは検証に付き合ってくれ。その後は全部倒すから」
そしてサイクロプス。
トロールのように棍棒は持っていないが、殴り蹴りと体術めいた戦いをする。
頭もトロールより良いらしく、岩を投げたりもしてきた。
トロール同様、防御力は高いらしい。ネネやエメリーが普通に斬りつけても時間がかかる。ただし毒は有効。
魔法の通りはなかなか。我の土魔法よりもアネモネの闇魔法のほうがダメージが入るように感じる。
ただしご主人様が<空跳>から首をスパンとやれば簡単に死ぬ。
「もう全部」
「言うな。もう分かったから」
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