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第六章 黒の主、パーティー会場に立つ
127:カオテッドぶっくぶっくショッキング
しおりを挟む■ミーティア・ユグドラシア 樹人族 女
■142歳 セイヤの奴隷 『日陰の樹人』
大迷宮の探索で三階層へと行った時、宝魔法陣から<速読>のスキルオーブを入手しました。
その時、ご主人様が気付かれたのです。
そういえば屋敷に本がないな、と。
備え付けの本棚はありますが、肝心の本がない。
今は装備品を手入れする為の小物置き場になっています。
すっかり組合員としての生活に染まっていますね。
とは言え、せっかくのお屋敷に彩りがないと言いますか、殺風景と言いますか、今後お客様を呼ぶ為にも何かしら置いたほうがいいだろうと。
なので一階のサロンか娯楽室にでも、皆の本を置いたほうが良いのでは、となりました。
本棚が埋まっているだけで印象がだいぶ違いますからね。
本は北東区が一番揃っているという話です。
植物紙は南東区ですが、装丁された本となると北東区になります。
やはり魔法関係に明るいという事で、魔導書などが多いでしょうし、魔導王国の主要種族である導珠族は研究職に就く事が多いと聞きますから。
魔法以外にも研究したものを本に記すという事もあるのでしょう。
そんなわけで北東区の地図を見ながら本屋さんを探すのですが、どうやら三軒ほどあるようです。
本は高価なので、一つの区に三軒もあるとは驚きです。
おそらく南東区であれば一軒くらいしかないでしょう。
三軒で何が違うのかと思ったら、扱っている書籍が全然違うみたいです。
一つ目は完全に魔法書関係専門。
二つ目は生活や歴史などなど。
三つ目は組合員向けで魔物や装備、迷宮などについてだそうです。
どれも欲しいですね。ご主人様も全部回ると言っています。
とりあえず魔法書関係の本屋さんから行きましょう。
「すごいな。魔法関係だけでこれだけあるのか」
「戦闘用だけでなく契約魔法や錬金術などについてもあるみたいですね」
「スキルや魔道具についての本もあります」
「とりあえず分担するか。良さげな本は片っ端から持って来て」
『はい』
戦闘用だけでも属性別に分かれていたりしますからね。
うちのクランは一応全属性揃っていますし、持っていて損はないでしょう。
本を読んで知識を得て、イメージを固めることで威力が変わる、という事も十分にありえます。
私も火魔法は最近使い始めたばかりですからね。
ご主人様の<カスタム>でカンストはしていますが、一部の魔法しか使っていない気がします。
やはり戦闘で使いやすい魔法が咄嗟に出てしまうものなので。
とりあえず私とウェルシアで属性魔法の本を集めましょう。
「これと、これと、これも……」
「ミ、ミーティア様、大丈夫でしょうか。多すぎではありませんの?」
「必要であれば揃えるべきでしょう。ほら、皆さんをご覧なさい。魔法を使わないイブキさんやティナでさえも抱えていますよ。ご主人様とかろくに見ないで『ここからここまで』ってやってます。あ、エメリーさんに怒られましたね」
「すでにわたくしの実家の蔵書を超えていますわ……」
ウェルシアの家は男爵家でしたか。
私は王家でしたので書庫がありましたが、下級貴族ではそこまで揃えるものでもないでしょう。
それにウェルシアはご主人様の『爆買い』現場にあまり居合わせていませんでしたからね。
一緒にオークションに行ったアネモネとかはもう慣れているでしょうが。
あ、この本も一応買っておきましょう。
「お、お客様、これ全てお買い上げで……?」
「ああ。買いすぎでマズかったら戻すが?」
「いえいえいえ! だ、大丈夫です、ありがとうございますっ!」
買った本を全て<インベントリ>に入れ、次の店に向かいます。
次は生活や歴史に関する本を扱っているお店ですね。
ここは本当に多彩ですね。
絵本や英雄譚も多いのですが、地理や戦記、種族に文化、木々や植生、農業、鉱業、縫製、ヒイノが喜びそうな料理本もあります。
これは買おうと思えばいくらでも買ってしまいそうですね。
「ティナは読み書きできるのか?」
「はいっ! 出来ます! お母さんに教えてもらいました!」
「そうか、じゃあ絵本はいらないか。英雄譚とかの方がいいか?」
「え、あ……え、絵本も、欲しいです……」
「ははっ、そうかそうか。じゃあ面白そうなの選ぼうか」
「はいっ!」
ヒイノのお店は借金苦だったようですし、読み書きを絵本で勉強というわけにもいかなかったのでしょう。
それで覚えたティナは偉いですが、もしかしたら絵本を読んでみたかったのかもしれません。
今日、連れて来て正解ですね。いっぱい買ってもらいましょう。
「おや、ウェルシア、それだけですか?」
「それだけ、って……念の為、多めに持ってきたつもりなのですが。十冊も」
「皆さんをご覧なさい。イブキさんは両手に抱えて、もうカウンターを何往復もしていますよ。ご主人様はろくに見ないで『この棚全部』とか言ってますし。あ、エメリーさんに怒られましたね」
「本屋でも開きそうな勢いですわね……」
買える時に買えるだけ買う。
これに慣れないとご主人様の侍女はやっていけませんよ?
ウェルシアも早く慣れることです。
泣いて喜ぶ店主さんを後に次のお店へ。
最後は組合員用の書籍を扱うお店ですね。
こちらは武器・防具・アイテムなどの本、戦闘指南書や初心者用の講習本、魔物や迷宮について。
一軒目のお店にもあった魔道具やスキルの本もあります。
組合員としてはどれも目にしておきたい本ばかりですね。
「イブキ、全員の武器の事も考えて余計に集めてくれ。指南書系も頼む」
「はい。……ポルの鍬はどうしましょうか」
「……ない、はず、だが、あったら確保しておいてくれ」
「分かりました。よーし、ティナ集めるぞー」
「はーい!」
ジイナが武器百科みたいなものが欲しいと言っていましたね。
武器鍛治の本もありそうですし、いくつか見繕いましょう。
杖の指南書はウェルシアやアネモネに良いかもしれません。
ステータスが高くても杖を持っての動き方を習ったわけではありませんからね。実戦しかしていないですし。
「ミ、ミーティア様、棚から本が消えていくんですが……」
「ええ、ここはどうしても必要な本が多いですからね。仕方ないでしょう。ウェルシアもそっちの棚から見て下さい」
「はい……しかし、このままだとサロンの本棚どころか屋敷自体が本屋化しそうなのですが……」
「入りきらなければ<インベントリ>に入れれば良いのです。ご主人様をご覧なさい、ろくに見ないで『バックヤードの在庫全部』とか言ってますし、あ、エメリーさんに怒られていますね」
「今さらながらに恐ろしいですわね、ご主人様は……」
本当に今さらですね。
共に『亀』と戦っている時点で手遅れですよ。
あれこそまさに恐ろしいでしょうに。
「俺の店が……本が……しばらく休業だな……ハハハ……」
大いに売れて嬉しそうな店主さんを後目に店を出ました。
売り上げに貢献できて良かったですね。
さて、では今日のお買い物は終了ですか。
お屋敷に帰って、さっそく皆に見せましょう。
本棚も南東区で買ったものを増設しないといけませんね。
皆が喜ぶ顔が目に浮かびます。
「なぜか探索以上に疲れましたわ……」
ウェルシアは体調でも悪いのでしょうか。
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