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第六章 黒の主、パーティー会場に立つ
128:そうだ、屋敷を派手にしよう
しおりを挟む■セイヤ・シンマ 基人族 男
■23歳 転生者
やっぱりこの世界の本って高いんだなー。
紙自体も高いんだが、もしかして全部手書きなんだろうか。
組合員証とか印刷だろうし、本の印刷もありそうな気がするが……分からん。
まぁ装丁とかは手作業だろうな、さすがに。
あって損するものでもないし、目につくものは片っ端から買ったつもりだが、それでもいいとこ千冊くらいだと思う。
大半の侍女連中には買いすぎだと騒がれたが、俺としてはそこまででもないと思っている。
今にして思えば前世の部屋にあった三千冊の漫画はやはり多かったのだろう。
まぁほとんど棚に入りきらず、段ボールに入っていたが。
ともかく買った本を早速みんなで並べてみる。
本棚があるのは屋敷一階のサロン(談話室)と娯楽室だ。
娯楽室も全然使ってないんだよな。食後とかでみんな集まるのはサロンだし。
パーティーホールなんてもっと使ってないけどな!
あの部屋、今度の祝賀会で使うつもりだけど、普段全く使わないから別の用途に<カスタム>すべきかもしれない。
娯楽室の活用と含めて考えておこう。
さて、サロンの本棚は、今はみんなの装備品お手入れ道具が置かれている。
本格的な修繕や調整はジイナが鍛冶場でやるが、磨いたり研ぎ直したりは各自でやる。
夜にサロンで、みんなで話しながらやる事が多いからここに置かれているわけだ。
まぁ俺は黒刀がアレなんで、ささっと拭いて終わりなんだけど。
血糊が付こうが、ビュンって振れば綺麗になるしね。
どんな撥水加工されてんだっつー話だよ。
それはともかく、棚を使っているならば娯楽室の本棚に本を並べたほうがいいか。
しかしみんなが集まるのがサロンなのだからそっちに置いた方がいいような気もする。
悩んでます。
「置く本を種別で分ければ良いのでは?」
「本棚を五つか六つくらいは使いそうですし、全てを一室にしなくても良いと思います」
イブキとエメリーがそう言う。
俺としては一部屋に本棚を並べて、ぶわーっと並んだ本の様子を見るとテンション上がるんだが。
漫画喫茶とか、スーパー銭湯の休憩室みたいな。本屋じゃないけど頑張って揃えました感が出てる感じ。
「でしたらやはり娯楽室でしょうか。まとめて本棚を並べるとするとそちらの方がスペースはあるかと」
という事で娯楽室にしました。元々あった本棚と家具屋で買ってきた本棚を、壁に沿って並べる。
娯楽室は部屋の左右に扉があるから、扉がない壁にズラッと並べる。
ここは窓がないから置くのは娯楽室で良かったかもしれないな。
何か劣化しない魔法とか掛かってるのか分からないが、日光が当たるのは気分的に嫌だ。
壁一面が本棚になったところで、本を並べていく。
どんどん<インベントリ>から出して、みんなで並べる。
「ミーティア、ウェルシア、魔法書関係は、属性別、系統別に並べろよ。そっちの棚な」
「「はい」」
「イブキ、武器も種別でまとめてくれ。指南書は指南書でって感じ」
「はい」
「ティナは絵本と英雄譚を分けて置いて。こっちの下の方な」
「はいっ」
「エメリー、並べた後にプレート作って棚に貼りたい。ここは何のジャンルとか一目で分かる感じで」
「なるほど。薄い板とかでよろしいでしょうか。作ってみましょう」
そうして並べ終わると、うーん壮観。なかなかじゃないか。
やっぱ一部屋にまとめて正解だと思う。
「改めて見るとものすごい量ですわね……書庫のようですわ……」
「そうでしょうか。王城に比べれば少ないと思いますが」
ミーティアさん、王城の書庫は多分、書類とかが多いんですよ。
毎日陛下が書類仕事とかしているでしょう?
それを置くのも書庫のはずなんですよ。
まぁ『書斎』以上なのは認める。『書庫』でも『本屋』でもないと思うが。
それから騒ぎを聞きつけた他の侍女たちも集合して、やんや騒いでいた。女十四人も集まれば姦しいね。
「なんじゃこりゃ! すげえな!」
「うわわわ、すごい量ですね」
「あらあらあら、まあまあまあ」
「何だこれは、買いすぎだろう、ご主人様よ。また散財したのか」
「おおっ、武器百科! 魔剣の本も! はかどります!」
何がはかどるんだ、ジイナよ。
ともかくみんなにも好評らしく、その日以降、読書する侍女が多くなった。
いい事だと思います。知識は力。戦闘的にも侍女的にも人間的にも良いことだ。
翌日。さて次は、とエントランスに来た。
この屋敷の問題の一つに「簡素」というものがある。
せっかくの豪邸にも関わらず、飾り気が少ない。
こうしたお屋敷にありがちな、美術品や花置きなど何もないのだ。
まぁこちとら貴族じゃないし、ただの組合員だし、友達いないから誰に見せるわけでもないし(涙)
そんなわけで放置していたが、今度パーティー開かなあかんねん、というわけで必要性が出てきた。
ましてやSランク様になったもんだから、それなりの飾りをしないと「主人」としての恰好もつかないかと。
そこで集めた魔物のドロップ品とかを飾りとして展示しようかと思っている。
まさしく美術館や展示場といった感じで、台座の上にガラスケースみたいなものを想定している。
さすがに絵画や壺とか俺には良し悪し分からないし、無駄に高価そうだし、そんな趣味もない。花とかはいいと思うけどね。
それに組合員の家っぽくていいんじゃないかと。
自分たちで狩った成果を並べるって。思い出にもなる。
うちの屋敷は入ってすぐに吹き抜けの広いエントランスがあって、そこから左右に分かれる。
分かれた先は食堂やキッチン、サロン、娯楽室、パーティーホール、応接室など色々とあるが正面に見えるのは二階への階段だけだ。
階段の裏に娯楽室とかがある感じなのだが、そこへは左右の通路から入る為、エントランス側に扉はない。
広々としたエントランスは赤い絨毯と<カスタム>した電灯、吊るされたシャンデリアの魔道具があるくらいで、確かに味気ないと言える。
「やはり屋敷に入って正面には【炎岩竜の魔石】じゃないでしょうか」
「やっぱそうだよな。甲羅とか置いてもあの大きさを見ないと分からないしな」
「並べて置く分にはよろしいかと思います」
「リッチのマネキンも捨てがたいですね。あれこそ来客の目を引きそうですし」
リッチは【不死王の衣】と【不死王の杖】を一つずつ確保してある。
杖はウェルシアの装備で利用できればするつもりだったが、しないのであれば飾ろうと。売りはしない。
そんなわけで木製のマネキン(ただの木組み)も樹界国で買ってあり、それに装備させて展示する予定だ。
確かに今度来るのがメルクリオたちであれば反応はするだろう。
しかし「お前らが倒せなかったヤツ倒したぜー」とこれ見よがしに言っているようで気が引ける。
やはり正面は魔石だろうな。見栄えもいいし。
真っ黒の布を貼った細長い木箱の上に、クッションを置き、その上に魔石を乗せる。
金属製のプレートを飾り、ガラスケースで蓋をする。完成。
『おおー』
ちなみに板を加工するのはイブキとツェンが。布を裁断して貼るのはエメリーが。クッション作るのはドルチェが。プレート作るのはジイナが担当している。ほかの娘たちも色々とお手伝い。
何気に総出でやっているのだ。
「これはいいですね」
「入ってすぐ目を引きます」
「お宝って感じしますね!」
「国宝級のものを玄関に堂々と……」
うむうむ、いい感じだ。
じゃあ他のも展示してみようか。
【炎岩竜の甲羅】は小さくカットしたのを単品で飾るか。魔石の傍がいいだろう。
トロールキングは【暴巨人王の斧】と【暴巨人王の外套】があるからマネキンで。いっぱいあるけど一体分だけにしよう。
リッチのマネキンと並べるか。
他は弱い【領域主】ばっかなんだよな。一応ダブったのだけ売って、一つずつは残しているんだが。
本当はヘカトンケイルの【単眼巨人王の角・眼・爪】があるから飾りたいんだけど、組合から欲しいって言われてるし……とりあえず飾っておくか。
弱いやつも一応、思い出として飾ってみよう。邪魔ならどかせばいい。
ゴブリンキング、コボルトキング、リザードキング、グレートウルフ、ウェアウルフロード、デスコンダクター、デュラハン……と飾れるものは順次飾っていく。
さすがにエントランスだけでは場所が足りなそうなのでパーティーホールも使おうか。
「応接室でも良いのでは?」
「あそこは武器庫も兼ねてるから。武器だけにしよう」
ここまで並べると全ての【領域主】のドロップをコンプしたくなってくるな。
完全にコレクターの思考だ。しかし組合員の趣味としてはアリかもしれない。
「タイラントクイーンはないのですか?」
「あれこそ思い出の品だから、ちょっと別の飾りを考えてる」
「そうですか」
タイラントクイーンは初めて行ったイーリス迷宮からの付き合いだしな。
戦闘回数も段違いに多いし、素材の数も一番多い。
だからちょっと展示には手を加えたいと思っている。
まぁそれは暇を見て、ボチボチとやりましょう。
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