カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第六章 黒の主、パーティー会場に立つ

131:そうだ、プラモをつくろう

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■セイヤ・シンマ 基人族ヒューム 男
■23歳 転生者


 最近の俺の趣味。それはプラモデルだ。
 もちろんこの【アイロス】という世界にプラモデルなど存在しない。
 だからパーツから何から全て自作である。

 何のプラモかと言われれば、答えは簡単。
 タイラントクイーンだ。

 有り余っているタイラントクイーンの素材、【鉄蜘蛛の顎】【鉄蜘蛛の甲殻】を使い、ミニチュアクイーンを作ろうとしている。

 せっかく【領域主】のドロップ品の展示をしたのだから、一番思い入れのあるタイラントクイーンはなるべく良く飾りたい。
 初の【迷宮主】でもあるし、侍女服でも現在進行形でお世話になってるからな。


 単に顎と甲殻を飾るだけではそこらの雑魚【領域主】と変わらない。
 やはりタイラントクイーンさんにはそれ相応の飾り方をした方が良いだろうと。
 ならば素材と共に、余った素材で作ったミニチュアクイーンを飾ればいいのではと。


 しかしだ。ミスター・セイヤー、パーティー開かなあかんねん。
 すでに招待状も送った。
 つまり納期がない。
 いや別にそこに間に合わせる必要もないんだが、どうせ展示品を見せるんだから一緒に見せたい。


 そんなわけで暇を見つけてはチマチマと削ったりしている。


「ご主人様、刀でやるのは危険では……」

「これだとすごい楽なんだ」


 エメリーが心配そうに言うが、確かに傍から見れば危険だろう。
 刀身をつまんで彫刻刀のように使っているのだから。
 黒刀の威力を知っている侍女たちならば尚更だ。

 最初の方はジイナにミスリル工具を借りて作ってたんだが、刀を使ったほうが楽だと気付いた。
 今ではミスリル工具はティナとサリュが使っている。


「うーん、こんな感じかなー」

「ティナちゃん、もうちょっと細くしないと」

「んー、爪は鋭く。あいつはこんなに優しそうじゃない」


 俺のプラモ作りに興味を示したティナとサリュ、ネネが一緒に作っている。やっぱ子供の食いつきが良いものなのだろうか。
 ちなみにネネは自前のダガーで削っている。
 ともかく、おかげでかなりのペースアップにつながっているので有り難い。


「ご主人様、目はどうするんです?」

「んー、あいつの目は赤い」

「えー? 赤い素材なんてないよ?」


 そうか。確かヤツの目は赤く光るのが六つくらい並んでるんだよな。
 何かで代用できれば……。
 いや、<インベントリ>にある素材だと全くないな。


「エメリー、どこかでルビーって買えるものか?」

「買えるでしょうが……宝石を埋め込むのですか?」

「他に思いつかん。何かあればいいんだが」

「そうですね……赤い塗料を使うですとか」


 塗るか……いや、それしょぼくないか?
 せっかく本物の甲殻と顎を使って完全再現してるのに、目だけ塗料って。
 やっぱルビーだろ。タイラントクイーンへの敬意と思って豪華にしよう。


 そんなわけでエメリー、ティナ、サリュ、ネネと北西区へとやって来た。
 やはり鉱人族ドゥワルフが目立つが、針毛族スティングル岩人族ロックルス小人族ポックルなんかもいる。
 大通りの広場では酒を飲んで騒ぐ鉱人族ドゥワルフが多く、そこから離れて例の邪教が説法をしていた。

 まぁそんな連中は無視して、商業組合へ。
 宝石商とかあればその店に行くんだが、あいにくと地図には記載がない。
 貴金属店があってもそれがファッションの店なのか、組合員用の装備の店なのか分からない。
 というわけで商業組合で聞いてみる。

 どうやら向こうはこちらを知っている様子。
 北西区にまで知られているとはなぁ。すっかり有名人だ。


「ルビーを石のままですか? 指輪とかではなく」

「ああ、正確に言えば原石ではなく、加工した状態。指輪に付ける直前のようなものが欲しい」

「少々お待ち下さい。確認して参ります」


 そう言って受付嬢は一度下がっていった。
 再び戻って来た彼女の手にはトレイに乗ったいくつもの宝石が。


『おおー』

「へぇ、そんな状態で置いてあるもんなんだな」

「カット専門の職人から装飾の職人へと渡す前のものです。つなぎは組合でやっているもので」

「それ買っていいものなのか? 装飾職人が困るのでは?」

「全ての加工品に装飾職人への振り分けが終わっているわけではありません。現状お売り出来るものでこれくらいです」


 なるほどな。一度カット職人から集めてから装飾職人に依頼する感じなのか。
 じゃあ遠慮なく買わせてもらおうか。
 ティナ、サリュ、ネネとあーだこーだ言いながら六個選ぶ。
 作ってるクイーンの頭のサイズに合わせて、尚且つ左右対称でないといけないからな。


 ホクホク顔で商業組合を出て大通りを歩いていると、路上で弾き語りをやっている人がいた。
 ギターっぽいが弦が多いしネックが短い。
 歌もゆったりした伴奏に乗せて、英雄譚のようなものを喋っている感じ。″歌ってる″じゃなくて″喋ってる″が近い。


「エメリー、ああいうのって吟遊詩人っていうのか?」

「そうですね。カオテッドでもちらほら見かけますが」

「あの楽器は?」

「リュートですね」


 ああ、あれがリュートなのか。初めて見たわ。
 よく分からんけど、あれが原型でギターが出来たのかな。


「興味がおありで?」

「元の世界でギターって楽器を少し弾いてたんだ。リュートと似てるんだが」

「まぁ、そうなのですか。ご主人様は多才ですね」


 いや、全然うまくないけどな。学生時代の趣味の一つだ。
 レパートリーは九割方ゲーム音楽だし。
 でもこっちの趣味にしてもいいかもな。……アコギが作れれば。


 それから屋敷に戻り、ミニチュアクイーンを完成させる。
 顔、胴体、八本足をそれぞれ作り、いよいよ合体させていく。
 プラモデルって事で手のひらサイズくらいを最初は想定していたが、作っていくうちにどんどんと大きくなった。

 組み合わせてみれば……ティナの腰くらいあるな。デカイ。
 二〇分の一スケールくらいか? もっとか?


「すごーい!」

「出来ましたね! やったぁ!」

「ん。リアルでカッコイイ」

「手伝ってくれてありがとうな。おかげでいい感じに出来た」


 ネネが言うとおり、かなりリアルだな。質感とかは本物使ってるからもちろんなんだが。
 細かい棘や関節とかをみんなが覚えていたのがすごい助かった。
 俺はいっぱい戦ったけど、そこまで覚えてないからな


「それはご主人様が一撃で倒しちゃうからです」

「ん。よく見ながら戦わないと避けられない」

「うんうん。弱そうなところを狙って斬るとかね!」


 なるほど、そういうもんか。
 であればやはり手伝ってもらって正解だったな。感謝感謝。

 さて、これほどの力作だ。どこに飾ろうか。
 個人的には亀の魔石をどかして真正面でもいいくらいなんだが。


「さすがにそれは……いえ、素晴らしい作品だとは思いますが、竜の魔石と比べますと……」


 エメリーでさえ渋る。
 言いたい事は分かるので別の場所にしよう。
 エントランスからパーティーホール側の右通路に向かう直前に置こうか。
 ここならお客さんが嫌でも目にするだろ。

 みんな納得してくれたので、さっそく展示する。
 大き目の木箱に黒い布を被せ、そこにミニチュアクイーンを鎮座。
 背景代わりに甲殻と顎も一緒に飾る。さらにジイナ特製のプレートを表記。
 ガラスケースも店売りだと小さいので、板ガラスを組み合わせて作った。それを乗せて完成。


『おおー!』パチパチ


 いやぁこれは力作だな。満足だわ。
 他のみんなも集まって眺めている。


「よくもまぁこれだけの細工を」

「この状態で売ったら相当値がつきますね」

「まるで祭壇のようですわ。神像のようで……蜘蛛ですけど」

「ソルジャースパイダーと間違えて攻撃されそうだな……」


 ちなみにソルジャースパイダーってのは、タイラントクイーンと一緒に出て来る子蜘蛛ね。
 確かに言われてみればそっくりそのままだな。

 ……大丈夫だよな?


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