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第六章 黒の主、パーティー会場に立つ
138:祝賀会の終わり、そして……
しおりを挟む■セイヤ・シンマ 基人族 男
■23歳 転生者
祝賀会は無事に終わった。
帰り際に、みんなにはお土産として、ワインとパンとプリンを渡した。
皆、食いつく所は違ったが、どれも喜んで貰えたんじゃないかと思う。
「みんな、お疲れさま。おかげでいいパーティーが出来たよ」
来客を帰した後、侍女たちと集まって、軽く乾杯を交わす。
パーティー成功の打ち上げみたいなものだが、本当に軽く飲んでまったり過ごすだけだ。
みんなもぐったりしているしな。俺もだけど。
今日の為に何日も準備に費やし、迎えた今日はホスト側として持て成す事に気疲れした。
まぁそんなに気を使う相手でもないんだが、侍女のみんなは「ちゃんとやらないとご主人様の恥になる」とエメリーを筆頭に励んでくれたようだ。
その割にはエメリーはビリヤードで手を抜かないし、ツェンは飲みまくっていたけども。まぁそれはそれで。
料理の方も【アイロス】では馴染みのないバイキング形式にしてみたが、来客たちは思いの外柔軟に対応してくれた。
王族のメルクリオとかはコース料理や立食パーティーを想定していたと思うんだけど、何も言ってこなかったな。
事前の作り置きもかなりの量があったが、人気の料理はすぐになくなってしまうので、そこら辺はサリュたちが頑張っていたな。
受付嬢軍団が飲まずにひたすら食ってた印象があるが大丈夫だろうか。
ドレスから平服に着替えたのに帰り際には動けなくなってたからな。
あれ、ちゃんと帰れたのか不安だぞ。
「サロルートさんたちには申し訳ない事をしました」
「あれな。俺も迂闊だったわ。ミーティアだって知らないのを、こっちが知らなかったっていうのもあるけど、樹人族の中のミーティア人気をまだなめてたみたいだ」
「私自身も意外でしたから。どうやらサロルートさんたちとは樹界国での面識はなかったみたいで」
「まぁ王都にでも居なけりゃミーティアの顔を見る機会なんてないんだろうな」
仮に顔を知っていても事情を知らなきゃ、ここに居て侍女の恰好をしているなんて思わないだろうけど。
ましてや『日陰の樹人』だし。
ちなみにサロルートたちには樹界国の政変の詳しい事情はボカシて、追放されて山賊に拉致されたミーティアをたまたま救ったと伝えた。むしろ感謝されたくらいだ。
「私が原因でここに来づらくなるとかなければ良いのですが……」
「それはないな。特にサロルートはビリヤードと本に夢中だったから。絶対遊びに来るぞ」
「だと良いのですが」
あの様子だと明日来てもおかしくないからな。
ビリヤードを頼んだアネモネとウェルシアにはちゃんと褒めておこう。
おかげでサロルートもメルクリオも楽しんでくれたようだし。
「ふふふ……よかった……」
「ビリヤードもそうですが、本も喜んで頂けてわたくしは何よりですわ」
本もみんなで買いに行ったからな。
今後は定期的に買いに行って、少しずつ増やしていってもいいかもしれん。
そのうち四方の壁が全部本棚とかにしても面白そうだ。
「ご主人様、それはさすがに……」
「分かってるよエメリー、仮の話だ」
「ご主人様の場合、仮の話がいつの間にか本当の話になっていますので」
ま、まあそういう事もあるよね。たまには。
そ、それはそうと庭や訓練場も好評だったみたいだな。
フロロたちが頑張って作ってくれたから喜んでもらえて良かったじゃないか。
「うーむ、それはそうなのだがな、今後来客が増えそうだから、石畳の歩道は少し手直した方が良いかもしれん」
「そうか? 十分綺麗だと思うけどな」
「屋敷に入らず訓練場に直行する客が多い気がするのでな。サロルートやメルクリオならば屋敷に行くだろうが、ズーゴやバルボッサは訓練場に行ってから、そのまま帰るか屋敷に行くかという所だ。石畳でルートを作っておかんと芝生を歩かれるかもしれん」
あーなるほどね。ありうる。
特にバルボッサやドゴールあたりはマナーとかあんまり気にしなさそうだしな。
歩道が作られていても、芝生を歩くとかもありうる。
「訓練場はなかなか好評だったな。やつらが来てくれれば、我らの訓練相手にもなる。向こうにもこちらにも利があるだろう」
「訓練相手になるか? こっちが強すぎるんじゃないか? ステータスで圧倒してる気がするが」
「それはそうだが向こうには経験と連携がある。どちらもこちらに不足しているものだ。我らはどうしても『個』の力が突出しすぎておるからのう」
確かにな。模擬戦してもAランククラマスのバルボッサやドゴールでさえ、最年少のティナに負けると思うけど、あいつら<カスタム>なしで三階層ずっと探索してるくらいだからな。
デュラハンや、俺たちが戦っていないドラゴンゾンビとかも倒しているはずだ。
そう考えると共に訓練して得るものは多いだろう。
「ああ、そうそう。メルクリオと内々で少し話したんだがな、本格的に【天庸】の対策をしようと」
『!?』
「いつ来るのか、本当に来るのかも分からないが、備えはしておきたいし、俺たちも探索をしてレベルを上げ、CPの確保も順次行っている。<カスタム>も徐々に仕上がって来ている。しかしいくら強くなっても隙を突かれたり、奇襲されれば被害は受けるだろう。だから現状で考えうる対策はとっておきたいんだ」
ラセツとスィーリオの足取りは掴めていないらしい。
本当にまだカオテッドに居るのかも不明だと。
しかしやつらの狙いは『カオテッドの資源』『魔導王国への通商破壊』『俺』の三つだと思われる。メルクリオの予想な。
つまりはカオテッドに餌がある状態で、【天庸】がいつまでも放置するとは思えない。
では襲ってくるならばどういう手で来るのか、襲って来た時にどういう対処をするのか。
それは入念に話し合っておいたほうが良いだろう。
「また近々メルクリオと話し合いの場を持つけど、こっちはこっちでどう動くか考えておかないといけない。俺を狙って派手な奇襲を仕掛けて来て、万一屋敷が破壊されたら堪ったもんじゃないからな」
うんうんと皆が頷く。
これでウェルシアの実家のようにこの屋敷が破壊されたら、被害額がとんでもないからな。
亀の魔石、仕舞っておいた方がいいのかな……まぁそれも話し合おう。
俺たち以上にメルクリオは【天庸】のやり口を知っているから、そこからどういう手で来るのか予測しておいて損はない。
現状、こっちは受け身になる以外の選択肢がないんだからな。
「ん? 誰か来た。ちょっと行ってくる」
ネネがいきなりそう言うと、席を立って外へと向かった。
門には来客を報せる魔道具があるんだが……あいつの<気配察知>はそれより外でも分かるのか。本当に桁外れだな。
しかしこんな時間に来客?
今日の招待客が忘れ物でもしたのか?
……なんとなく嫌な予感がするな。
【天庸】の話をしていた所だし。
「エメリー、イブキ、念の為ネネに付いて行ってやれ」
「「はい」」
二人が急いでネネの後を追う。
訝しんだ俺の様子に、室内の侍女たちも警戒心を出し始めた。
席を立ち、マジックバッグから武器を出す者も居る。
「フロロ、俺の今日の運勢は?」
「吉兆の出会いは出ておったが、それはすでに祝賀会で終わっておろう。つまりは祝賀会に連なる客か、それ以下の運勢の客と見るが……」
「であるならば、警戒するまでもないのかな。まぁネネたちを待つか」
仮に【天庸】の襲撃であればフロロが占う『俺の運勢』はそれを示すもののはず。
祝賀会の来客との出会いが『俺の運勢』だと言うなら、それ以上にパンチのある展開にはならないだろう。
とは言え、嫌な予感がするのも確かだから警戒はするけども。
そうこうしているうちにネネが帰ってきた。エメリーとイブキは居ない。
「ご主人様にお客さん」
「誰だ?」
「天使族が二人」
…………。
はあ!?
えっ、天使族!?
なんで!? なんで来るの!?
…………。
帰ってもらいなさい。って言いたいんだけど。
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