カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第七章 黒の主、【天庸】に向かい立つ

154:離れようとも決意は変わらず

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◎中央区担当:サリュ・フロロ・ツェン

■フロロ・クゥ 星面族メルティス 女
■25歳 セイヤの奴隷 半面


 屋敷から迷宮組合本部までは走ればすぐだ。
 大通りに入り、侍女仲間たちは方々へと散っていく。
 鳴り響く警鐘に負けじと騒ぐ住人を抜け、組合が見えれば、そこはもう混乱の最中であった。

 臨戦態勢の組合員がぞろぞろと表に出て、上空を見上げている。
 迷宮に潜っている組合員も相当数いるだろうに、これだけホールに残っていたのかと思う。

 昨夜会ったばかりの衛兵団も同様だ。
 組合の守護と、中央区住民の避難誘導に忙しい。


「来たぞ! ワイバーンだ!」
「い、いや、こっちに来るのは違うぞ!? なんだあれは!?」
「ゴ、ゴールデンレオか!?」
「馬鹿野郎! ゴールデンレオが飛ぶものかよ! 首が三つもありやがる!」


 もうそれ・・はほぼ真上まで来ていた。
 我とツェン、サリュも、思わず立ち止まり見上げてしまう。


「おいおい……なんだよ、あれ……」


 あの・・ツェンがそう呟くほどの異形。
 我も娯楽室にあった魔物百科を見てはいるが、こんな魔物は知らん。
 複数の魔物を繋ぎ合わせたようなそれ・・は、錬金術師ヴェリオとやらが手を加えたのであろうとすぐに想像できた。


「撃てーーーっ!!!」


 上から聞こえたメルクリオの声。
 途端に、組合の上部から魔法が次々に放たれた。

 十人、二十人、いやもっと居るかもしれぬ魔法使いたちからの一斉放射。
 砦のような形状をしている組合本部の屋上部に集まっているのだろう。

 Aランククラン【魔導の宝珠】はメルクリオを筆頭に魔法が達者なクランだと聞く。
 それが中心となって放たれる怒涛の魔法連撃に、異形のそれ・・・・・はどうするのか、我らはしばし見入った。


 ドンドンドンと景気良く魔法の着弾音が鳴り響く。


 が―――果たして、それ・・は全くの無傷であった。

 魔法が効かない!? ゴールデンレオには魔法耐性があるというが、リッチのように無効化はしなかったはずだ。
 混乱は我らと同じく、魔法を撃った者たちも同様だったのだろう。魔法の手が止まる。


 対してやや降下したそれ・・は、三つある首のうち、山羊の口から氷のブレスを吐き出した。

 ブレスなど竜種以外に吐くやつがいるものか! しかも強力であろうそれは、本部の屋上だけでなく、本部の建物、そして周囲の建物にまでぐるりと吹き付けていく。
 それだけで死傷者が続出する。距離のある我らも思わず両手で顔を隠したほどだ。

 さらにはそれで満足していないのか、今度は地竜ランドドラゴンのような首から炎のブレスまで吐き出した。
 もちろん火竜でもない亜竜の地竜ランドドラゴンに吐けるものではない。
 だというのに襲い掛かる灼熱のブレス。

 それは先に撃った氷と相まって、爆発を引き起こした。

 ドオオオン!!! と鳴れば、本部の屋上から瓦礫と人が落ちて来る。
 もちろん周囲の建物もだ。背の高い宿屋や、大ホールなど、ブレスのかかった所が次々に崩れていく。


「ちっ! あたしたちも屋上に行くぞ!」

「ああ! サリュは怪我人を回復してやれ! 我とツェンで行く!」

「はい! すぐに追いかけます!」


 サリュが早足で崩れた建物に向かった。
 我はツェンと組合の中に入り、受付横の階段から走って上る。

 組合の職員は避難しておるのだろうか、人数は少ない。
 だが確実に被害にはあっているだろう。

 逸る気持ちを抑え、我らはただ上を目指した。




◎南西区担当:ヒイノ・ティナ・アネモネ

■ヒイノ 兎人族ラビ 女
■30歳 セイヤの奴隷 ティナの母親


 住み慣れていたはずの南西区は、普段と全く違う景色になっていました。
 カンカンと鳴る警鐘。こちらに向かって逃げて来る人々。そのせいか倒されたままの屋台。
 平和に賑わっていたはずの大通りはまるで戦争のような状態です。


「お母さん! 早く! 早く行かないと!」


 となりでティナが叫びます。一番足が速いから余計に焦っているのでしょう。
 その顔に余裕などありません。今にも泣きだしそうに見えます。
 アネモネちゃんと私はそれに付いて行くだけで精一杯の速さ。なんとも情けなくもなります。


「くらえええっ!」
「ぐああっ!!」
「慌てるな! 一斉に仕掛けろ!」


 見えてきた中心部。そこは何年間もお世話になった商業組合です。
 どうやら相手はそこをまず襲撃したようです。
 大きなワイバーンと戦っている衛兵さんたちの姿が見えました。

 その周囲の建物、お店もすでに壊されています。おそらく最初に商業組合と一緒に襲撃されたのでしょう。
 私がよく買いにいっていた青果店、お肉屋さん、雑貨屋さん、どれも少なからず被害を受けていました。
 ティナも同じように「お肉屋さんが……」と呟きます。


 嫌な思い出も多いですが、良かった思い出も多い街。
 それがこうして壊されている現状に、悔しさと怒りが同時に湧き上がりました。


 もうすぐそこ、という所まで来ると、戦いの様子もよく分かります。
 衛兵さんと組合員であろう獣人系種族の人たちが、誰かに襲い掛かり、次々に倒されて行く。
 ワイバーンに相対している人たちも同じ。飛びながら強襲するワイバーンに苦戦しています。

 その輪の中心に立つのは鳥人族ハルピュイの男性。

 おそらく事前情報にあったスィーリオという【十剣】の人でしょう。
 あの人が、この街を……!


「ティナ! アネモネちゃんとワイバーンを倒しなさい! 出来るわね!」

「うんっ! で、でも、あの人は……」

「私が押さえるわ! アネモネちゃん、ティナをよろしくね!」

「了解、ですっ」


 その速度のまま、戦いの場に駆け寄りました。
 大声を出しながら呼びかけます。


「皆さん、避難して下さい! 私たちが受け持ちます! 怪我人の救助を頼みます!」

「メ、メイド……? 【黒屋敷】か!」
「【黒屋敷】が来てくれたぞ!」
「ヒイノじゃないか! 娘さんまで……!」


 手を止めて下がってくれた人たちに代わって、私はスィーリオという人の前に出ました。


「ほう、意外な客人だな。自分の主人や組合を放っておいて救援に来るとは思わなかったぞ」

「……【天庸】のスィーリオですね? 私がお相手します」

「やれやれ、どこかの馬鹿のせいで素性もバレバレだな。まあいい、どうせ皆死ぬのだからな」

「させませんっ!」




◎北東区担当:ネネ・ドルチェ

■ネネ 闇朧族ダルクネス 女
■15歳 セイヤの奴隷


「ネネさん! 早いです! ちょっと!」


 急がないと。もう北東区は壊され始めている。
 ドルチェの速度に合わせていたら、被害がもっと出ちゃう。


「ドルチェ、ワイバーン倒せる?」

「え、えっと……降りて来てくれれば……」

「んー、じゃあ私がやってみる」

「えっ、【十剣】はどうするんです!?」

「ドルチェが頑張って押さえてて。ワイバーン倒したら行くから」

「わ、私一人で!? 【十剣】をですか!?」

「ん、がんば。 じゃあ先に行ってるから」

「ちょっ」


 ドルチェを置き去りに最高速で向かうと、見えてきた大通りの中心地。ワイバーンもそうだけどあの人・・・も派手に壊してるみたい。

 下半身が蛇……人蛇族ナーギィの女。
 なんかでっかい鉈を振り回してる。すごいな。

 あれ、ドルチェで大丈夫だろうか。衛兵の人たちとか殺されまくってるけど。

 ……まいっか。私はまずワイバーンを殺そう。

 どうやって空に攻撃するか考えないと。




◎南東区担当:ミーティア・ポル

■ミーティア・ユグドラシア 樹人族エルブス 女
■142歳 セイヤの奴隷 『日陰の樹人』


「ポル! ワイバーンは任せますよ!」

「了解です!」

 緑が多く美しかった南東区の大通りは、人々の避難で阿鼻叫喚です。
 樹界国の民が虐げられている姿に、私は悲しみと共に怒りを覚えました。

 ワイバーンが急降下して体当たりをし、建物を破壊する様が見られます。
 それはやはりと言うべきか商業組合。南東区の中心の建物です。
 戦っている衛兵からでしょうか次々に矢や魔法が飛び交いますが、それ以上に悲鳴が多い。


 そして私は中心地に居る、彼女・・の前に立ったのです。


「あら、これはこれはミーティア姫様、ご機嫌麗しゅう。私のローブでも買ってきて下さったのかしら?」


 慇懃な礼をする彼女に向け、私は右手にミスリルダガーを構えました。
 あの時逃がした彼女に。神樹様の枝を持ち去った彼女に。


「改めてご挨拶を。私は【天庸十剣】第九席のリリーシュ。貴女様を、貴女のお姉様の元へと送る者の名です。覚えておきなさい」

「……私はミーティア。『女神の使徒』セイヤ様に仕える一人の侍女、ただのミーティアです」

「王女でも巫女でもないと?」

「同じ樹人族エルブスを手にかける為には――その肩書きは不要です!」


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