カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

文字の大きさ
159 / 421
第七章 黒の主、【天庸】に向かい立つ

153:死地へと誘うは鬼の如く

しおりを挟む


■イブキ 鬼人族サイアン 女
■19歳 セイヤの奴隷


 【天庸】の襲撃自体は「早く来てほしい」とさえ思っていた。
 個人的な恨みもそうだが、カオテッドやご主人様にとって″害″になるのが分かりきっていたから。
 願わくば【ゾリュトゥア教団】のようにこちらから乗り込みたかった所だが居場所も分からず暗礁に乗り上げていたのだ。

 そうしてやっと攻めてきたと思えば、五地区同時襲撃だと?

 いや、ワイバーンが五体と不明の飛行体が一体居たらしいからおそらく屋敷のご主人様にも同時に襲撃するつもりだろう。
 つまりは六ケ所同時襲撃だ。

 そういう可能性もあったからこうして分散して迎撃に当たれるわけだが、正直一番やって欲しくない襲撃方法ではあった。


 中央区ならば組合員や傭兵も多いだろうが、各地区の迎撃は基本的に衛兵頼りになるだろう。
 もしくは迷宮に潜る予定のなかった組合員で、各地区にホームを持っている者などだ。
 いずれにしても【天庸】相手となれば戦力的に不足。

 魔導王国のこれまでの被害を聞くに、【天庸】は少数での破壊行為、虐殺行為に慣れている。
 そして白昼堂々の犯行は、今までにどんな衛兵や騎士団にも捕らえられず、全てが返り討ち。そして逃がしているという。

 だからこそ私たちも焦って迎撃ポイントに向かっているのだが、こうも分散されると「被害なし」というのは考えづらい。


 今も街中に警鐘が鳴り続け、住人はパニック状態にある。
 【天庸】がまだ来ていない状態でさえ怪我人が出ている。
 この上、どれだけの死者、負傷者が出るか……そう考えると足早にならざるを得ない。


「みんな! 頼んだぞ!」

『はいっ!』

「おお! イブキ! ラセツがこっち来たらあたしが殺してやるからな!」

「ああ、遠慮するな!」


 大通りでそう声をかけ、皆と別れる。
 ツェンの軽口が今となっては心強い。

 六ケ所同時襲撃が「一番やって欲しくない襲撃方法」と言った二つ目の理由が、「私が直接ラセツを倒せない」かもしれないという点だ。

 角を折られた恨みは今でも忘れない。
 あの時の痛み、屈辱、村中からの迫害、追放、そして傭兵になってからも馬鹿にされ、エメリーの村に行ってからは山賊に襲われ、危うく生贄にされるところだった。

 ご主人様に出会うまで続いた悪夢のような日々。
 それは実際に時折、悪夢となって夜中に目覚めることもある。数年経った今でもだ。

 だからこそラセツをこの手で倒したかった。
 しかしこうも分散されると、私の迎撃担当の地区に運良くラセツが来てくれる可能性は、おそらく六分の一。
 まさか今回の襲撃に参加していないなどという事はあるまい。


 走りながら、ふと左手の甲を見る。
 創世の女神様……出来ればヤツと戦う機会を。

 街の被害より個人的な恨みを優先させるわけにはいかないのだが、それでも祈ってしまう。
 ご主人様が【勇者】であるならば、私はその下に居るべき者ではないのかもしれないな。


「イブキさん! あれ!」


 となりを走るジイナの声に見上げれば、ワイバーンの一体が北西区に下りようとしている所だった。
 くそっ! 間に合わないか!


「ともかく急ぐぞ!」

「はいっ!」


 私たちのクラン【黒屋敷】のメンバーは全員で十七名。
 今、私とジイナが向かう先は、数時間前に訪れたばかりの北西区だ。

 割り振りとしてはこのような感じになっている。


屋敷:ご主人様、エメリー、ウェルシア、シャムシャエル、マルティエル
中央区(組合本部):ツェン、フロロ、サリュ
北西区(鉱王国領):イブキ、ジイナ
南西区(獣帝国領):ヒイノ、ティナ、アネモネ
北東区(魔導国領):ネネ、ドルチェ
南東区(樹界国領):ミーティア、ポル


 屋敷はご主人様個人が狙われ、尚且つ屋敷を絶対に壊させたくない、尚且つどこへも救援に行きやすいという事で回復役ヒーラーを含めた五名が陣取る。

 中央区が三名なのも同じような理由だ。
 一番の狙いと目され、激戦が予想される為、回復役ヒーラーのサリュを置いている。
 他地区は二名ずつだが、ご主人様がティナを心配して、ヒイノに加えてアネモネも入れている。


 問題はやはり「ワイバーンで攻めてきた」という点だろう。
 この布陣は「各地区に【天庸十剣】が攻めてきた場合」を想定して組まれたものだ。
 仮に(いるかどうか知らないが)構成員のような下っ端を引き連れて攻めてきたとして、【十剣】と構成員を相手取れるように最低限の二人を分散させている。

 例えば北西区であれば、私が【十剣】と戦い、ジイナが周りの構成員を排除する、というつもりでいたのだ。

 しかしワイバーンが相手となると【十剣】如何によってジイナが一人でワイバーンと戦う必要が出て来る。
 ご主人様は北東区担当のネネとドルチェを「ワイバーンに対する遠距離攻撃がない」と心配していたが、こちらもほとんど同じだ。

 私たちこそ南東区のミーティア・ポルと交換すれば良かったか、少し悔やまれる。
 走りながら隣のジイナに聞く。


「ジイナ、【鉱砕の魔法槌】の穿岩の波ロックウェイブは空のワイバーンに効くのか!?」

「無理です! でも何とかしますよ! するしかないでしょう!」

「お、おう」


 なんかヤケクソ気味になってる。
 しかし前向きなのか後ろ向きなのか微妙ながら、やる気があるのは確かだ。
 いざとなればジイナを頼るしかあるまい。


 第一防壁が迫ってきた。
 戸惑う人々と、右往左往する衛兵の姿が見える。


「【黒屋敷】のイブキとジイナだ! 迎撃に向かう! すまないが通るぞ!」

「ああっ! は、はいっ!」


 第一防壁の衛兵に組合員証を掲げながら、走り通る。
 ここは中央区の衛兵団員だから話は通しやすい。ほぼ顔パスだ。
 速度を落とさず、そのまま北西区の大通りを進む。

 相変わらず警鐘が鳴り、大通りは逃げて来る住人でパニックだ。
 ワイバーンは大通りの中心地に下り立ったらしい。
 というか、乗っていた誰かを下ろし、時折飛び上がる姿が見える。

 逃げる人々の波に逆らうように、その地へ向けて私たちは走った。


「あの場所は……商業組合か!?」

「やっぱり北東区だけじゃなくて、全地区の通商破壊が目的ですか!?」


 商業組合はどの地区でも大通り沿いの中心地にある。
 そこが街や地区を支える経済の中心地になるからだ。

 【天庸】が物理的にカオテッドの破壊を狙っているだけでなく、経済的な破壊も狙っている証拠。
 まずは商業組合を潰し、その後、中心から外へと破壊活動をするつもりなのだろう。


 煙が上がっているのを見ると、すでに商業組合が壊されているかもしれない。
 くそっ! 人混みを抜けるのがじれったい!


 それでも前へと進むとワイバーンの巨体が近く見えるようになる。
 逃げる人々もすでに後方だ。逃げ遅れた人がいるくらい。
 どうやらワイバーンは周囲の建物を破壊しながら、逃げ遅れた人を襲っているらしい。

 ちっ! 胸糞悪い! どうにかしないと!
 私とジイナがワイバーンに目を囚われていた矢先、その横の建物の壁が内側から破壊された。
 石造りの強固な壁がまとめて大通りに吹き飛ぶ。


 砂埃が舞う中、現れた男は、こちらに目を向けるとニヤリと口を歪ませた。


「おいおいおい、どーこのメイドが来たかと思えば、どっかで見た事あるツラだなあ! 見覚えのある・・・・・・『折れ角』じゃねえか!」

「貴様……っ!」


 うちのクランで一番大きいツェンより、さらに一回り大きな身体。
 筋肉の詰まった褐色肌と、ボサボサの紺髪。
 その身の丈を超えるような、鍔のない特大剣を肩に担いだその男。

 あれから数年、体格は良くなったようだが他人を見下すその目は変わらない……!


「綺麗なおべべがよーくお似合いじゃねえか! 笑えるぜ! なあ、イブキ!」

「ラセツ……ッ!!!」


 背中の【魔剣イフリート】の柄を掴み、すぐさま戦闘態勢をとった。
 目線はヤツから離さず、左手を意識する。

 創世の女神様、機会を与えて下さって感謝します。



 ジイナ、すまん。
 ワイバーンはお前一人でなんとかしてくれ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

処理中です...