216 / 421
第九章 黒の主、魔導王国に立つ
208:投げると帰ってくる投擲武器の事
しおりを挟む■ネネ 闇朧族 女
■15歳 セイヤの奴隷
暇だなー。馬車の旅って言うのはこんなに暇なんだなー。
いや、車内でみんなでワイワイとトランプやったりお喋りしたりは楽しい。
御者席で馬を操るのも面白い。というかこれは割と真剣に学んでいる。
でもイーリスからカオテッドへの旅は、スタンピードがあったり山賊が連続して居たりしたし、樹界国へ行った時も走りまくって魔物をバンバン倒したりしていた。
それに比べると平和すぎて暇に感じる。
山中じゃなくてちゃんとした街道だから当然魔物も少ないし、警戒していても滅多に私の察知範囲に引っ掛からない。
従って馬の手綱を握りながら、ボーッとしているようなものだ。
ちなみに隣にはヒイノが居る。
イブキとエメリーから私とアネモネが御者を習い、ある程度出来るようになった所でヒイノとジイナにも教えている。で、今は私とヒイノが二台目の馬車の御者担当だ。
そんな時、私の<気配察知>に久しぶりの反応があった。
おっ、これは……。
「ヒイノ、ちょっと手綱よろしく」
「えっ、わ、分かったけど、ちゃんとやれるかしら……」
無理矢理に手綱を渡し、走る馬車の御者席から颯爽と飛び降りた。
馬車の速度は私より全然遅いから何の問題もない。
そしてすぐ後ろ、三台目の馬車の屋根に飛び乗る。
御者の人ももう慣れたみたいだ。魔物が出た時に何回かお邪魔してるし。最初は「嘘ん!?」って顔してたけど。
屋根の上から上半身を下ろし、馬車の扉をノックすると、走りながらも扉が開かれた。
「どうしたネネ、魔物か?」
「んーん、多分山賊」
『!?』
街道の先、森を避けるようにカーブしているその先で、十五人くらい待ち構えている。
魔物討伐組合員にしては変な配置だし、馬車が立ち往生しているわけでもなさそう。
だから多分山賊かなーと。
「あんまり時間がないな。このまま行けば強襲されるか。メルクリオ、止まると怪しまれるから速度落とさせてくれ」
「ああ分かった。聞いたな? 先頭の馬車に報せろ」
「ハッ」
「それで倒しちゃっていいか? 捕らえた方がいいのか?」
「あー、やっぱ行くのか。尋問させたいから一人は捕らえてくれるかな。誰かの差し金で僕狙いかもしれないしね」
「了解。ネネ、行くぞ。ミーティア、ウェルシア、万が一こっちに来たらお前らが倒せ」
「ん……はい」「「はいっ」」
ご主人様と私でまた馬車を飛び降りる。そのまま駆け足。
魔物が来た時もだいたいこんな感じ。
私が察知して報せ、足の速いご主人様と二人で殲滅する。で、そのまま走っている馬車に帰る。
暇そうなティナやツェンたちも戦いたがってるけど、馬車で走りながらだと伝えてる時間もないし、ご主人様の速度に付いてこれないし。私だけの特権。ふふん。
馬車の何倍かの速度で、早速森に侵入。そのまま突っ切って、街道の先に居る山賊を倒す。
「配置は?」
「んー、この先に七人、ぽつんと離れて一人、街道を挟んで七人」
「俺は向こう側からやる。ネネはまず一人のヤツ。多分伝令か斥候だろ、そいつは生かせ。あとの七人の中に指揮官みたいのが居ればそいつも捕獲。いいな?」
「はい」
ご主人様は私から離れて行った。やっぱ私より速い。すごい。
言われたとおり、私はまず一人のを狙う。<気配消却>で。
「ぐあああっ!」
「お、おい! なんだ!? 攻撃されてる!?」
「どこだ! 見えねえぞ!」
「なんでバレてんだよちくしょう!」
んー、全然弱い。七人の中になんとなくガタイの良い髭面が居たので、そいつは生かそう。
まぁみんな髭面なんだけど。それっぽいし。分かんないけど。
ご主人様の方もとっくに終わったらしく、街道に出て馬車に手を振っている。
やがて近くまで来た馬車がゆっくり停車。みんなが出てきた。
「お疲れさま。さすが、見事なものだね」
「一応三人生かしておいた。俺の方で一人、ネネが二人だな。尋問は任せていいのか?」
「それくらいはやらせてくれ。――おい、すぐに始めろ。手間取るようなら殺していい」
「ハッ」
「あ、アジトの場所を吐かせてくれよ。ちょっと出稼ぎに行ってくるから。後から追いかけるし」
「勤勉というか貪欲というか……まぁ治安維持と考えれば助かるんだが」
という事で尋問は【魔導の宝珠】に任せて、私たちはアジト襲撃メンバーの選出。
「一緒に行きたい人ー」
『はいっ!』
かなりの人数が手を上げた。そりゃそうだよね。
ここ数日、全く戦ってないしずっと馬車に乗ってるだけだから。
ストレス発散的な意味でもみんな行きたがる。
でも急いでアジトに行って、残ってるかどうか分からないけど山賊を倒して、何もかも没収して、そこからまた急いで馬車を追いかけないといけない。
そうなると足が速い方が望まれると。
「俺、ネネ、ティナ、サリュ、シャムシャエル、ツェン。こんなもんかな」
『やった!』『えぇぇぇ』
「ティナは山賊が仮に居ても攻撃はなし。それでもいいか?」
「はいっ! 行きますっ!」
「じゃあ六人で行く。他のメンバーは悪いけど馬車の方を頼む」
ふっふっふ、【敏捷】の勝利……!
これからも【敏捷】を第一に<カスタム>してもらおう。
そのためにはレベルを上げて上限を増やさねば……むふー。
■ラピス・アクアマリン 人魚族 女
■145歳 セイヤの奴隷 アクアマロウ海王国 第一王女
「お姉様が行くなら一緒に行きたかったでござる……」
「私だって行きたかったです……ずっと<逃げ足>使えば付いて行けるです……」
「そうよね~、ご主人様ったら酷いわよね~、よーしよしよし」
馬車の中、両足にマルとポルを乗せ、抱きしめつつ慰め合っている。
可愛いわね~、いじけた様子もまた良し。
いや、私だって行きたかったわよ。山賊退治。
でも理由を聞いちゃうとね……足の遅さは如何ともしがたい。
今の私の状態で【敏捷】上げてくれ、なんて言えないし。
ただでさえ後衛としてみんなに劣ってるからね。
魔法もろくに撃てないのに、前衛の能力まで<カスタム>してもらうわけにもいかないでしょ。
これでも海王国じゃ槍も魔法も結構いける方だったんだけど……ほんと、ここの連中の強さは異常だわ。付いて行けもしない。
そんなわけで私のストレス発散の為にもマルとポルを十二分に愛でて、可愛い娘成分を補給しないとダメよね。うふふ~。
「な、なんか寒気がするでござる!?」
「ほ、胞子が舞いそうになったです!?」
「大丈夫よ~、よーしよしよしよし」
■ツェン・スィ 竜人族 女
■305歳 セイヤの奴隷
いや、選ばれたのはいいんだが……こいつら速すぎだろッ!?
あたしダントツで遅いんだが!?
シャムがずるい! あたしより【敏捷】低いのに飛べるから速いの! ずる! 天使族とか存在自体がずる過ぎるだろ!
「竜人族のツェンさんに言われたくないでございます」
「「そーだ、そーだ」」
ええい、余裕で乗って来やがって。
あたしだって【敏捷】にも結構振ってもらってんだ。
前衛じゃあネネとティナに次いで速いはずなんだよ。
イブキとかジイナとか全然遅いしな。盾役組も遅い。エメリーはちょっと論外、議論の対象外。
なのにこの面子だとあたしが一番遅いという事実よ。この化け物どもめ。
「竜人族のツェンさんに言われたくないでございます」
「「そーだ、そーだ」」
「この面子だけじゃなくてもお前が一番攻撃力あるだろうが。それだけ力持っててこれだけ速いってのが異常なんだよ」
最前線を走るご主人様が振り返りながらそう言うが……。
「ご主人様に言われたくないんだが」
「「そーだ、そーだ」」
あたし以上の攻撃力とネネ以上の速さだからな。
それで他人の事を『異常』とか言われても……。
「『ぶーめらん』でございますね」
勇者備忘録・第二五章・第十一節『「ぶーめらん」とは相手に言ったつもりの言葉が自分に跳ね返ってくる様子である』
「なぜ本来の意味を教えないんだ、ミツオくんは……」
なぜ頭を抱えてるんだ、ご主人様は……。
0
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部
ファンタジー
2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました
東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!!
スティールスキル。
皆さん、どんなイメージを持ってますか?
使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。
でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。
スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。
楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。
それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。
2025/12/7
一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる