カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

文字の大きさ
235 / 421
第九章 黒の主、魔導王国に立つ

227:帰郷、長き旅路の果てに

しおりを挟む


■フォッティマ・グルンゼム 導珠族アスラ 男
■195歳 エクスマギア魔導王国騎士団長 伯爵位


 今回、騎士団長である私がセイヤ殿たちの案内に就いたのには色々と思いがあった。

 もちろん要人だからと言うのは間違いない。
 ミーティア姫、ラピス姫、司教殿も居るし、何よりセイヤ殿が一番の要人なのだから。


 我が愚息、ベヘラタの一件もある。
 陛下の温情で死罪だけは免れたが、跡目を継がせるのはもう無理だ。
 あの場で斬り捨てられても当然の失態をしたのだから、私こそ責任を取るべきなのだが、それも許しては貰えなかった。


 ならばせめてもの罪滅ぼし。セイヤ殿たちの要人警護、及び王都案内については全身全霊をもって臨むつもりでいた。

 まぁその実力を知った今では警護の意味など全くないと分かっているのだが、それでも下手に絡まれるような事があってはならない。せめて盾くらいにはなれるだろうと考えた。


「フォッティマ卿、失礼ですがその考えは甘いですよ。危険が振りかかろうともフォッティマ卿がそれを感じる前に全てが終わっています。あの連中は皆が皆、規格外。何をしでかすか分かりません。くれぐれも心を強くもっていて下さい」


 任に就く前に、メルクリオ殿下からそう言われた。
 そこまで仰るのであれば私は案内に徹するべきか、そう考えたのは後に正しかったと思い知らされる。


 ……いや、別に危険な目にあったというわけではない。

 ……ただ案内して買い物に付きあっているだけなのだ。


 だと言うのに殿下が「規格外」と言ったその意味を恐ろしいほど体感した。


 市場を歩けば軒先から食材が消えていく。本屋に行けば棚から本が消えていく。装飾を見れば平然と準国宝級と言えるものを買う。魔道具屋でも店を開くのかと思うほどに買いこんだ。


 マジックバッグ四〇個って何だよ、四〇個って……失礼、言葉が乱れた。


 ともかく王族であってもしないような散財っぷりだ。伯爵の私でも絶対しない。
 これが組合員・・・の資金力とは思えない。いや、ただの組合員でないのは重々承知しているのだが。

 見ているだけでこんなにも疲れる買い物は初めてだ。
 妻が高級服飾店で時間をかけて服を選んでいる姿が、とても可愛らしく思える。


 いずれにせよメルクリオ殿下の言う「規格外」の一端を私は見た。
 その疲労感は筆舌に尽くしがたい。

 帰って報告した際、殿下の「ね?」という顔に若干イラっとした。



■アネモネ 多眼族アフザス 女
■17歳 セイヤの奴隷


「じゃあみんな乗ってくれ。忘れ物などないようにな」


 王都到着から二〇日目、王城出発。
 メルクリオ殿下の号令で私たちは行きと同じ馬車に乗り始めた。


「ご主人様よ、奴隷を買い忘れてはおらぬか?」

「お前はどれだけ俺に買わせたいんだ、フロロ」


 そんな軽口を言いながら、みんな楽し気に乗り込んだ。
 さすがに王城の入口まで陛下たちが見送りにくるような真似はしない。城内の人たちの手前もあるし。
 ただ出発前にご挨拶は済ませた。陛下とヴァーニー殿下とジルドラ殿下にも。


『改めて今回は助かった。何かあれば今度はこちらが助ける番だ。くれぐれも息災でいてくれ。道中気を付けるように』


 そんなお言葉を頂いた。国王としての言葉ではなかったと思う。
 でもとても身近で暖かい雰囲気だった。
 私の魔眼が、その言葉を真実だと告げていた。本心だと。

 馬車はゆっくりと動き出す。そして大通りへ。

 ちらりと窓から見える景色。それは見覚えのあるものだ。
 あの通りを入った先にあるのは―――見ない・・・と決めたもの


 私はそっと三つの目を閉じた。


 嘘しか言わない両親が怖かった。
 私を奴隷に落とした両親が憎かった。
 だから親が逮捕され、店が潰れて良かったと思うのは″真実″だ。


 ではなぜ、心の中にもやがかかるのだろう。まるで私の<闇魔法>に浸食されたような靄が。

 私にはこの感情が分からない。
 ″嬉しさ″ではない。かと言って″悲しさ″でもない。
 それを何と表現すればいいのか分からなかった。


『大丈夫です。わたくしは貴女の味方ですわ』


 ただ、ウェルシアさんの言葉に救われた気持ちになったのは″真実″だ。
 抱きしめてもらった時の温かみに、なぜか涙が溢れた。
 色々な気持ちを整理する為に、二日間一人で過ごせたのは良かったと思う。
 それでも分からない事は分からないのだが。


 馬車は大通りを南へと進み、城門を通る。
 私はまたここへ戻ってくる事があるのだろうか。
 ふとそう思うが、振り返りはしなかった。見ない・・・と決めたから。


 途中、御者をさせてもらいつつ、行きと同じ道を進む。
 五日目にはトランシルの街に一泊した。


 王城出発前にメルクリオ殿下から聞いていた。
 どうやら捕らえられたキルギストンという商業組合の職員はこれまでの所業を自供したらしい。
 やはりユアさんの師匠はその人に殺されたと。

 そしてその錬金資料を街の工房に拡散するのと同時に、ユアさんを利用して、息のかかった工房を押し上げたらしい。

 今回の処遇では、ユアさんやその工房に罪はないという事だった。
 でも錬金知識の拡散自体が罪であるならば、罰せられてもおかしくはない。

 それをしなかったのは温情なのか、国の方針なのか、私には分からない。
 でもユアさんが危険な立場だったのは間違いない。
 一歩間違えればユアさんが処罰を受けただろう。


『そ、そんな……キルギストンさんが……私は……』


 ショックを受けていたユアさんはみんなに慰められていた。
 親代わりであった師匠が殺され、親身になってくれていたはずの職員がその犯人だった。
 その事実はどれだけ重いのだろう。

 ユアさんは自分を責めていた。
 何も知らず、何も出来ず、流されるままだった自分を。


 私も他人ひとの事は言えない。

 親の悪事に気付いていながら、親の嘘を見抜いておきながら、私は安易に″死″を選んだ。
 魔眼に映るものを拒み続け、世の中の全てが″嘘″だと決めつけていた。

 それが過ちだと気付けたのは奴隷に落ちてからだった。
 ティサリーンさんに出会い、ウェルシアさんに出会い、ご主人様に買われてからだった。
 それまでの私の人生が無駄だったとは言えない。でも良い物だったとも言えない。

 心の中の靄はまだ残っていた。


 今回のトランシルの街では全員でユアさんの師匠のお墓参りをした。
 全員で挨拶し、一連の事件についての報告もした。

 その中で私は、ユアさんの背中を見ていた。
 そこにあったのは後悔、懺悔、それとこれからの希望。
 様々な感情が詰まった″真実″。私にはそれがとても眩しく思えた。


「お師匠様、また来ます。その時はもっと上手く錬金できるようになっています。頑張ります」


 ―――なんて強い人だろう。

 今の私の周りにはこんなにも強い人がいっぱい居る。
 こんなにも眩しい人がいっぱい居る。

 こんな私を受け入れてくれる人が―――こんなにも居る。


 ただ見ているだけで、また涙が溢れた。


 そこからカオテッドに帰る・・までは六日かかった。
 でももう、私の心の靄は晴れていた。


 近づく長い第二防壁。私は御者台からそれを見る・・

 これから見える・・・街並みをに焼き付ける。

 私はそう決めた・・・んだ。


 ご主人様と、みんなと共に―――この街で生きる・・・と。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

処理中です...