カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第九章 黒の主、魔導王国に立つ

226:ツェッペルンドぶらぶらショッピング・後編

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■ウェルシア・ベルトチーネ 導珠族アスラ 女
■70歳 セイヤの奴隷 エクスマギア魔導王国伯爵位


「ウェルシアさん、すみませんでした……行けなくて……」

「大丈夫ですわ。アネモネさんのお花はちゃんとご主人様が手向けて下さいました。気にする事ないですわよ」

「でも……」

「一緒にご主人様に買われた仲ではありませんか。大丈夫です。わたくしは貴女の味方ですわ」

「ウェルシアさん……ありがとう……」


 アネモネさんを抱きしめてそう言いました。
 帰って早々、謝られたのです。わたくしはお気持ちだけで十分ですのに。

 わたくしは王都ここへ来て、良い事ばかりが起こりました。
 陛下に謝罪され、爵位が認められたばかりか伯爵位に陞爵し、国宝の杖を頂き、皆さんと共に両親に報告が出来ました。


 しかしアネモネさんはお父上が逮捕されるという事態になりました。
 おそらくお母上も捕まるでしょうし【ジキタリス商会】も潰れるでしょう。

 アネモネさんはそれを「悪い事をしていたのだし捕まって良かった」と言います。

 確かに自分を奴隷におとし、悪事に手を染めていたのであれば逮捕されて喜ぶ事もあるのかもしれません。

 しかし悲しい気持ちがないとは思えないのです。
 アネモネさんは多くを語りませんが、わたくしにはどこか泣き出しそうな表情にも見えるのです。


 だからわたくしは抱きしめました。
 共に奴隷となり、共にご主人様に買われ、共に切磋琢磨した仲間だと、そう言いました。

 どちらからともなく流した涙は、はたしてどのような涙なのか。
 おそらくその意味は多く、また意味など見出せるものではないのかもしれません。


 その日はしばらくそうしていたのです。


 翌日、王都を巡る最後の日。
 やはりアネモネさんは王城に残るそうです。
 しかしその表情は昨日に比べ、晴れやかなもの。

 その″眼″で見ないと決めた。それもまた決意なのでしょう。
 わたくしは笑って頷き返しました。





「今日も付き合わせちゃってすみません」

「いえ、昨日のアレ・・を見てしまうと他の者にはさすがに……ははは……」


 今日も騎士団長のフォッティマ・グルンゼム伯爵が案内して下さいます。
 昨日も恐縮していたのですが、フォッティマ伯と同じ爵位というのが未だに実感できません。
 わたくしが案内出来れば良いのですが、フォッティマ伯ほど詳しくないのが悔やまれます。


 今日はまず、装飾品のお店に行きます。
 装飾品と言っても貴族が付けて飾るようなものではなく、組合員としての装備品です。

 例えば魔法触媒になる指輪や腕輪、ツェンさんのイヤリングのような特殊な効果が付与されたものがあれば、と。

 そうしたものは工房によってデザインや性能が変わるそうなのですが、今回はいくつもの工房と契約している大店の商店に向かいます。


「いらっしゃいませ……これはフォッティマ騎士団長! どうされましたか! この方々は……?」

「こちらは国の賓客でカオテッドから参られた迷宮組合員の方々だ。買い物がしたいというので案内してきた」

「は、はぁ……」


 フォッティマ伯がいらっしゃって助かります。
 店主さんもフォッティマ伯がそうおっしゃるならと普通に応対して下さいました。


「まずはアミュレットから見ようか。この四人の装備より良さそうな品はあるか?」


 うちでアミュレットを装備しているのはミーティア様、ラピス様、シャムさんとマルさんですね。
 シャムさんは聖剣があるので触媒は不要なのですが、国の支給品ということもあり、身につけたままにしています。
 四人が店主さんにそれぞれの装備品を見せます。


「こ、これは……! いやどれも素晴らしいものですな。失礼ですが高ランクのクランとお見受けしますが……」

「ああ、Sランクの【黒屋敷】という」

「S!?」


 カオテッドでは知られていても王都ここでは誰も知らないでしょう。
 フォッティマ伯がいらっしゃるから組合員として見られますが、普通は道行く人と同じく『ただの基人族ヒュームと侍女軍団』としか見ないでしょうしね。
 それがSランクだと聞かされれば驚くのも分かります。

 店主さんはフォッティマ伯に目線をやると、伯は頷いて答えました。その通りだと。
 それから店主さんの対応が一段と変わります。
 相手が騎士団長に連れられたSランククランだと知ったのだから当然かもしれません。


「うーん……残念ながらこちらの腕輪に勝るものは当店にはございません。しかしこちらの【炎のアミュレットリング】より強力なものでしたら一点ございます」

「おお、それを見せてくれ」


 どうやらラピス様とシャムさん、マルさんの腕輪は、やはり最上のものらしいです。
 国から持ち出したものですから当然なのかもしれませんが。

 しかしミーティア様のリングはオークションで競り落としたもの。
 あれも高額だったはずですが、それより上があるとは……さすが王都の大店ですわね。


「こちらは【ツェッペルンド迷宮】の二九階層の宝魔法陣から出た指輪に、魔導研究所がさらに手を加えた一点物です。【紅焔のアミュレットリング】と申しまして<火魔法>用の指輪としては当店で最上のものになります」


 赤い魔石が目立つ綺麗な指輪です。迷宮産の装備は特殊な外見をしているものも多いですが、これはシンプルな溝のみが入っているだけ。
 これはこれで美しいデザインですね。

 店主さんに断りを入れ、付け心地と<身体能力向上ビルトコート>を試しました。さすがに攻撃魔法は試せません。
 結果、非常に満足のいくものだったらしく、即座に購入を決めました。


「えっ、まだお値段を言ってない……あ、いえ、ありがとうございます!」

「ご主人様、ありがとうございます」

「ああ、いいのがあって良かったな。……さて、次は……ツェンこっち来て。店主さん、こんな感じの特殊な効果がついた装飾品ってあるか?」

「こ、これは……【防毒のイヤリング】ですか! これはまた何とも……」


 毒を完全に防ぐというのは迷宮産であっても珍しいそうです。
『毒を治す』のならば魔法も薬もいくらでもあるのですが、『装備しているだけで事前に予防』しかも『耐毒』ではなく『防毒』となるとかなり希少だそうです。

 装飾品というのは付いている魔石が小さい分、それこそ迷宮産でなければ効果が低いのが普通だそうです。気休め程度だと。
 杖に比べてアミュレットの魔法行使力が低いのと同じですね。
 それを考えると【防毒のイヤリング】というのは破格の性能なのでしょう。

 ツェンさん以外の誰も装飾品は着けていないので、誰に何を着けても問題はないのですが、あまり効果の低いものを着けてもわたくし達にそれほど意味はありません。
 現状でも普通に戦う分には支障がありませんからね。

 という事で、【防毒のイヤリング】と同等か、それに近い性能のものを出して頂きました。


「あれほどのものとなりますと、当店で扱っている中ではこのくらいでして……」

「なるほどなるほど、これ全部買うといくらになる?」

「全部となりますとこれくらいです。さすがにこれは―――」

「よし買おう」

「ファッ!? あ、ありがとうございますぅ!」


 買ったものはこちらになります。

・耐呪の指輪:状態異常【呪い】を抵抗
・防石の腕輪:状態異常【石化】を防ぐ
・癒しの首飾り:時間に応じて体力が極微量回復する

 【耐呪の指輪】は『抵抗』のステータスがまだ低いユアさんに。
 【防石の腕輪】は前衛の安全確保を優先してシャムさんに。
 【癒しの首飾り】は魔剣を使うたびに自ら炎熱ダメージを受けるイブキさんに装備する事となりました。


 杖と同じくユアさんの錬金術で作れそうにも思えますが、どうやら錬金術師に加え装飾職人という専門職の方が必要なようです。

 お屋敷で作れると便利なのですがね。素材も良い物が大量にありますし。


「ふむ、装飾職人の奴隷を買うという手も……」

「そんな手はない。フロロ黙ってろ」


 わたくしもチラリと思いましたけどね。フロロさんと同じ事を。


 装飾品屋さんを出まして、次は魔道具屋さんです。
 ここはわたくしも知っている有名店。昔に一度来た事があります。
 こちらも大通り沿いの大店なのですが、本当に大きい。一階から三階まで全部同じお店なのです。


『おおおー!』

「うっわ、デパートかよ……とんでもない品揃えだな……」


 さすがにご主人様も驚いていますね。
 魔導王国と言えば魔道具と言っても過言ではありませんから、当然と言える品揃えです。
 見て回るだけで一日潰れてしまいます。

 日用品はもちろん、組合員用の品や職人が専門に使うようなものまで幅広く扱っています。
 皆さんは散らばって良さそうなものを物色し始めました。


「ふむ、こちらの照明はエントランスに良いかもしれません」

「お庭の灯篭もこちらの方がいいでしょうか」

「あっ、裁縫の魔道具! これお土産にしますっ! ご主人様、お屋敷にも一つ下さい!」

「まぁまぁ調理道具が多いですね、撹拌の魔道具……これは使えますね」

「釣り竿? ああ、糸が勝手に巻かれるんですか!」

「うわぁ……ミシン、ハンドミキサー、リール……魔道具すげえな……」


 やはりかなりの量を買い込むようですね。釣り竿なんて買っても使わないと思いますが……。
 まさか四階層で? いやいや、糸が焼けますね。ミスリルじゃないですし。


 中でも一番皆さんが食いついたのはマジックバッグです。
 今使っているのは【鴉爪団】という闇組織や山賊のアジトから貰った・・・ものだそうです。
 数はあるのでその中からポーチタイプの小さめのものを、侍女服の腰に付けています。

 背嚢のような大きなものは容量がありますが、戦闘の邪魔になりますからね。採取目的で持ち込んだりはしますが。
 そもそもご主人様の<インベントリ>のおかげで、それほど入れるものもありませんし。

 しかしせっかく来たのだから良いものに一新しようと。
 今以上に小さくて容量の大きいものを手に入れたいようです。
 そしてそれは、ここにはいくらでもあります。魔導王国王都の大店ですからね。さすがです。


 工房が違うのか、微妙にデザインや使い勝手が違うらしく、ご主人様の独断で『侍女服の邪魔をしないもの』を選びました。

 確かに白黒の侍女服に真っ赤でゴツゴツしたポーチを付ければ変ですからね。
 動きやすく、目立たず、容量が大きい。そんなマジックバッグになりました。


「えっと、これを……二〇個くれ」

「ファッ!?」

「ご主人様二〇ですと足りません。申し訳ありませんがもう少しお願いします」

「そうか? じゃあ四〇個」

「ファッ!!??」


 エメリーさん腰の両側に付けていますしね。大量の武器を入れて。
 あとは今後侍女が増える事も考慮しているのでしょう。


「セ、セイヤ殿、大丈夫なんですか、ホントに……昨日と言い今日と言い……」

「いやぁさすがに散財しましたね。ここまでだとオークション以来かな」


 フォッティマ伯も引いています。本当によく散財しましたね、この二日間で。
 しかしご主人様、オークションからまだ三月ほどしか経っていませんわよ?
 その間に祝賀会用で本やビリヤードを買った事をお忘れですの?


 ともかくこれで買い物は終了でしょうか。
 ある程度目当てのものは買えたのではないかと思います。
 ご主人様も皆さんもホクホク顔なのでわたくしも魔導王国の一員として嬉しく思います。


「なんて人たちだ……これが規格外の【黒屋敷】か……」


 フォッティマ伯、この二日間で随分とお痩せになりましたわね。
 お身体にお気を付け下さいませ。


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