カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第十章 黒の主、黒屋敷に立つ

231:本部長から報酬をもらおう!

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■イブキ 鬼人族サイアン 女
■19歳 セイヤの奴隷


 一月ひとつき半ぶりのカオテッド、そして我ら【黒屋敷】のクランハウスたる【黒屋敷】。
 懐かしささえ覚えるものだが、あいにくとだらけている暇などない。
 帰ってくるなりやらなければいけない仕事が溜まっており、それを手分けして順次こなす必要がある。

 一番忙しいのはご主人様なのだが、我らとしても極力フォローし、少しでも手助けしなければならない。
 ご主人様が昨晩、風呂に入っている隙に、侍女長のエメリーが皆にそう告げた。
 私としても思うところは同じだ。出来うる限りお傍に居たいとそう思う。


 しかしながら、久しぶりのカオテッド。十日以上を馬車で過ごした侍女たちの中には迷宮に行きたがる者も多い。

 いくらツェッペルンド迷宮に行ったとは言え、我らの主戦場はこの″カオテッド大迷宮″なのだ。
 帰って来たからにはまず迷宮、まず魔物部屋マラソンと口にする者も居る。

 まぁ楽しみながら仕事する分には私もとやかく言わないのだが、初めてマラソンした時には死にそうな顔していた面々が、嬉々と「魔物部屋マラソンしたい」とか言うと、さすがに……。

 それを成長と捉えれば良いのか、変わってしまったと捉えれば良いのか……戦闘リーダーとしては悩むところだ。


 ともあれ、帰還の翌日……つまり今朝から一部の侍女たちが迷宮へと向かった。
 私はと言うと、今日はご主人様とエメリーと共に、まずは迷宮組合へと来ている。
 入る建屋は同じでも、下(迷宮)ではなく上(本部長室)に用事なのだ。


「おお、来たか。魔導王国でも大層な活躍だったそうじゃのう。メルクリオから聞いたぞ」

「ツェッペルンド迷宮の事ですか? あ、向こうの支部長が本部長から手紙を貰ったとか言ってましたが」

「お前らが迷宮に潜るかは分からんかったがな。出しておいて正解だったわい。なんじゃ七日で制覇とか。儂が支部長の立場だったら絶対信じんぞ」


 ツェッペルンド迷宮での探索勝負となったのは、ドグラ侯爵の策をヴラーディオ陛下とジルドラ殿下が利用したにすぎない。
 我々やメルクリオ殿下からすれば行ってから知った、まさに青天の霹靂であった。

 本当は褒美だけ貰って、あとは観光して帰るつもりだったのだ。
 それが迷宮に潜り、結局は長々と滞在する事になってしまった。

 スペッキオ本部長は保険のつもりで支部長に手紙を送ったのだろうが、確かにあれがなければ我々の実力を信じさせる為に国の助言でも貰うはめになっていたであろう。そういう意味では助かったと言える。


「ヴラーディオ陛下からも随分と虐められたそうじゃのう」

「ええ、参りましたよ。……ああ、本部長は以前に王城に勤めていらしたそうですね。お知り合いですか」

「儂が居たのは先王の頃じゃな。まだ陛下が王子だった頃の話じゃ。まぁ幼くして智謀は抜きん出ておったから、大体想像つくわい。メルクリオからも色々と聞いておるしのう」


 スペッキオ本部長は元組合員であると同時に、魔導王国の王城にも勤めていたという。
 どういった経緯で迷宮組合の本部長となったのかは知らないが、やはり有能なのだろう。

 単純に魔法の腕前だけでも相当のものであったと聞くし。それに加えて今は中央区と迷宮組合全体の統治をしている。
 他の誰に出来るものではない。
 メルクリオ殿下は本当にこの本部長の後釜を狙うのだろうか、ふとそう考えてしまう。


「まぁそれはさておき、じゃ。やっとお前さんらに払う報酬の目途が立った。と言っても満足しなければまた別の報酬を探すはめになるがのう」

「そんなに贅沢言うつもりはないですけど」

「額が額なんじゃよ。なにせ色々と支払いが滞っておる。たんまり溜まった支払いを一気にするんじゃから、そっちにも選ぶ権利くらいはあろう」


 今回本部長が支払う報酬は、以下の未払い分だ。


・四階層到達時の情報提供料(その後の調査探索で証明された分)
・【炎岩竜】及び【単眼巨人王ヘカトンケイル】の新発見及び、素材提供料
・四階層調査探索の依頼報酬
・【五本首ヒュドラ】の新発見情報料
・黒曜樹の素材売却料(未払い分)
・【ゾリュトゥア教団】支部の壊滅と魔族情報提供による謝礼
・【天庸】迎撃に対する謝礼


 こうして見ると、だいぶ溜まったと言うか、こんな前のものまで貰っていなかったのかと改めて驚く。
 もちろん細々と探索の度に素材売却などしていたし、その都度お金も貰っている。
 なのにまだこれだけ未払い分があるのかと、そんな感じだ。

 ちなみに【炎岩竜】の素材は甲羅のごく一部しか売っていない。
 【単眼巨人王ヘカトンケイル】はダブった素材だけを売った。
 【五本首ヒュドラ】は調査目的で素材を貸したが売ってはいない。

 ここでまとめて報酬が出るという事は、新発見の魔物として認められ、価値が分かったという事だろう。


「さすがに全て現物でというのも何じゃから、ひとまずは金じゃ」


 そう言うと、本部長はドサドサといくつもの袋をテーブルに置いた。
 これだけでも相当な額だが……全然足りないのだろうな。
 私もご主人様と共に過ごす中で金銭感覚が麻痺してきた自覚はあるが、こうした場を見るとさすがに恐縮する。


「で、現物じゃがのう、まず防具はいらんのじゃろ? 武器もすでに相当なものを持っておるし」

「鎧とか兜はアレですけど、盾とか武器なら貰いますよ? 使うかどうかは別としてあって困るものでもないですし」


 確かにそれこそ【魔剣】レベルでないと貰ったところで使うかどうかは微妙だろう。
 杖にしてもユアが本格的に製作を開始するらしいし、それが出来れば次はジイナとの合作で魔法剣だ。
 おそらくオークションでもなかなかお目に掛かれない代物が出来上がるのでは、と内心期待している。

 となればやはり武器を貰ったところで、応接室に飾るだけになりそうな気がするな。


「という事でセイヤからも要望があったし、スキルオーブを十個ばかし用意した。これでどうかのう」

「おお」


 スキルオーブは迷宮からしか手に入らないものだ。店売りやオークションで出される場合もあるが、どんなスキルであっても高額となる。
 しかしながらスキルにより当然差はあり、ものによってはそれこそ家が買えるほどの値段になる事もある。
 ちなみにオークションの時に一番高価だったのはご主人様の<空跳>だ。

 スペッキオ本部長が十個のスキルオーブをそれぞれ説明する。
 並べられたのは以下の通り。


 <剛力><鷹の目><瞑想><演算><毒耐性><魔力感知><味覚強化><忍び足><螺旋剣><空拳>


「<魔力感知>!?」

「うむ、やはりそれが一番高価じゃな。<剛力>や<鷹の目><空拳><演算>なんかもかなり希少じゃ。<魔力感知>も希少ではあるが、それ以上に有用で人気が高い。これを手にした組合員がどうして使わずに売ったのか、儂には謎じゃな」


 組合員ならば誰もが欲しがるスキルだろう。
 迷宮探索する上で誰もが手に入れられる斥候系スキルというのは、本当に大きい。
 確かになぜ自分で使わずに売ったのか謎だな。よほど金欠だったのだろうか。


「とまぁ、各地の組合に掛け合って集めたのがこんなもんじゃ。これで不満があるようならば、時間を置いてまた良さそうな物を探す事になるが、どうかのう?」

「十分です。これを頂きます」

「そう言ってもらえると助かる。いやはや、ずっと報酬を支払えんですまなかったのう。これでやっと一息つけるわい」


 本部長からすれば我々に借りがある状態だったのだろうか。
 何にせよこれで報酬の件が一段落となれば、お互いに気が楽だ。
 これでまた我々が四階層の探索をすると、同じような事になりそうな気もするが……その時はその時だな。

 しかしスキルオーブ十個というのは戦力強化の意味でも大きい。
 誰に何のスキルを与えるか……おそらく今夜にでもご主人様から配られるだろう。
 私自身も楽しみだが、侍女たち皆の強化というのは私にとっても嬉しい事だ。


 ……<剛力>が欲しいんですが、ご主人様。


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