カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第十一章 黒の主、博物館に立つ

278:戦争? そんな事より迷宮行こうぜ!

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■セイヤ・シンマ 基人族ヒューム 男
■23歳 転生者


「とまぁそんなわけで戦争になるかもしれん」

『えぇぇぇ……』


 俺だって「えぇぇ」だよ。嘆きたいよ。
 ただの組合員に戦争とかね、本当にやめて頂きたい。
 俺基人族ヒュームですよ? 最弱種族の。皆さんお忘れかもしれませんが。


「勇者の聖戦でございますね!」

「それに参戦とか誇らしいでござる! 神聖国に報告でござる!」

「面白くなってきたなぁ! よっし、あたしが先陣を切るぜ!」

「獣帝国もよくやるわねぇ、ちょっと楽しみだわー戦争とか」


 乗り気なのが数名。シャムシャエル、マルティエル、ツェン、ラピス。
 とりあえず神聖国に報告は待ってください。
 天使どもが大挙して参戦して来そうなんで困ります。

 まぁいざとなったらカオテッドと俺たちのホーム及び博物館を守る為に戦わざるを得ない。そう腹は括っている。

 迷宮資源と俺の財産欲しさに戦争を仕掛けるとか理不尽以外の何物でもない。
 理不尽に抵抗する為の力。俺の<カスタム>はその為に使うと決めている。


 とは言え、戦争なんてやらないに越したことはない。
 出来るものならば、皇帝とか宰相とかをこっそり暗殺して戦争を起こす気なんてなくさせたい。


 しかし問題が二つ。

 一つは、皇帝と宰相を殺せばそれで本当にカオテッドに攻めてこないのか? という事。

 獣帝国の貴族は少なからず差別的で欲深いのが多いらしい。リリーダルさんは極めて異常なんだとか。
 となると暗殺した所で、新しい皇帝が戦争を起こさないなんて言えないのだ。


 もう一つは本部長も言っていたが、こちらがただの犯罪者になってしまう。
 樹界国に乗り込んだ時に大司教とか新王とかを殺したが、その時とはまるで話が違う。

 あの時はミーティアと国王陛下とかを味方につけ「クーデターを起こした者たちを粛清する」という大義名分を得たわけだが、今回は襲われたという証拠がない状況での私怨、報復だ。

 それで暗殺なんてすれば闇組織とやってる事は同じ。指名手配まったなし。


 という事で暗殺は現状、良い策とは言えない。
 じゃあ政治的に介入して戦争を回避できないものかと。


 うちのメンバーを見回し、王侯貴族組を見るが……政治が出来るヤツなんてそもそも居ない。

 ミーティアは『神樹の巫女』であり基本的には政治不介入。
 ウェルシアは父親が研究員であり生粋の政治家貴族というわけではない。自身は政治をした事のない新米伯爵だ。
 ラピスは論外。


「ちょっと! なんかいつも私に厳しくない!? これでも第一王女なんですけど!」

「これでもって自分で言うくらいにはダメだと思う」

「くっ……! お、覚えておきなさい!」


 ラピスは外交も政治もダメダメだからね。仕方ないね。
 本当は出来るのかもしれないけど、なんか任せたくないんだよね。
 お前は戦ってりゃいいと思うよ。

 そんなわけで俺の出来る政治的介入となると、樹界国、魔導王国、神聖国、海王国にお願いして獣帝国を止めてくれって言うくらいかなと。

 どこも俺の事を『勇者』的に見て、なんか協力的だし。
 言えば手助けしてくれるだろうという気はしている。ありがたい話だ。迷惑な話でもある。


 しかしそれをやると、益々『勇者様ー!』となるだろうし、本格的な戦争に発展しそうだし、どう考えても戦場となるのは各国の中心地であるカオテッドだ。被害甚大。

 おまけに各国に″借り″を作るみたいで嫌だ。特に魔導王国と神聖国。


 なので本部長の手腕に期待しつつ、いざとなればこっちで対応しようかなーと。
 戦争なんて嫌だが半ば諦めモードである。


「博物館で忙しいってのに戦争の事なんて考えたくないんだけどな……あ、ウェルシア、今日は何か問題あったか?」

「ようやくスムーズに流れるようになってきましたわ。今日はほとんどこちらの人員を出さないで済みましたし」

「集客人数が減って来たとか?」

「いえ、相変わらず人気に陰りは見えませんわね。単純に従業員と警備の増員。そしてお客様への対応が慣れてきたのだと思います」


 そりゃ何よりだ。アネモネもいつも以上に含み笑いしている。どんくらい儲けてんだよ。


「この分だと、来月にはEランク……来年にはAランクになって、ます……ふふふふふ」


 商業組合のランクって納税額で上がるんだろ?
 え、もう上がるの? 一年でAランクとかありえるの?
 そりゃ本部長も高笑いしてるわけだわ……金額聞くの怖いわ……。


「ただ試し切りの所だけは誰かしら侍女を置いておいた方が無難ですわ」

「相変わらず逆切れするのが居るのか?」

「誰かしら立っていれば問題ありません。イブキさんでなくても【黒屋敷】だと分かれば大人しいようですわね」


 初日は誰にも立たせずズーゴさんたちが大変だったらしい。
 二日目からイブキやツェンとかに立ってもらったが問題は出ていない。
 対策としては良いんだが今のままというのもなぁ……。


「ふむ、そりゃ参ったな……」

「? 何か問題が?」

「戦争騒ぎになる前に四階層に行きたいんだよ。全員で行くなら今のうちかなーと思ってな」

『おおっ!!!』


 ガタッと立ち上がる一部の侍女たち。みんな好きだなー迷宮。

 四階層へは行きたいと常々思っていた。
 目的は『火属性の魔石を持つ【領域主】の乱獲』だ。

 それがあれば魔竜剣とユアの杖がパワーアップする。今付けているヘルハウンドとかじゃ俺は納得しない。

 となると【炎岩竜】はナシとして、シーサペントもどきをどうにかして倒すか、新たな【領域主】を探す必要がある。

 探索の過程でお宝を見つけてもいいし、良い錬金素材、鍛治素材とかも見つかるかもしれない。
 つまりは本格的な四階層探索だ。


「そこに出来れば全員で向かいたい。前回の亀みたいに何があるか分からないし、長期間になるだろうから留守番組と分けると、また<インベントリ>問題が出て来るし」

『あぁ……』


 全員で向かうとなると博物館を長期間、セシルさんに任せる事になる。
 ホームの警備もズーゴさんにする事で博物館の警備も手薄になるだろう。

 今まで以上に全員探索しづらくなった感がある。
 とは言えずっと俺たちが張り付いているわけにもいかないしな。


「承知しましたわ。セシルさんとよく打ち合わせしてみます」

「博物館の方で了承を得ない限り探索には行かないから、ゆっくり細かく決めてくれ。それまで俺たちで協力できる所はするから」

「ありがとうございます」


 ウェルシアに任せているこっちが「ありがとう」なんだけどな。
 何と言うかすっかり″責任者″になったもんだ。さすがウェルシア。どこぞの王族とは違う。


「という事で博物館の安定を見計らって、全員で四階層に出掛けるぞ」

『はい!』

「それまでの準備……例えばユアにはポーション関係を余分に作ってもらいたいし、ヒイノには長期間探索に備えて食事の準備をしてもらわないといけない」

「ひぃぃ、は、はい」「はい」

「ユアはレベルも心配なんだが、パティとリンネもだ。探索に行くまでになるべく迷宮に行ってレベル上げだな」

「は、はい!」「はいですネ!」


 四階層の本格的な探索となると、色々対策しなきゃいけない事が多いからな。
 前回は初めてでぶっつけ本番みたいな所があったが、今度は事前によく話し合おう。
 おそらくこれまでで一番大変な探索になるだろうしな。

 まぁ俺も少し楽しみなんだが。
 あまりみんなの事は言えないな。


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