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第十二章 黒の主、禁忌の域に立つ
288:トロールキングマラソンという娯楽
しおりを挟む■ネネ 闇朧族 女
■15歳 セイヤの奴隷
探索三日目は滝の上からスタート。
今日はまず『トロールの集落』を目指す。
今回の探索目的は『火属性魔石を持つ【領域主】の乱獲』だから行く必要はないんだけど、本格的な探索をする前に『黒曜樹の森』に行っておきたいという事らしい。
で、その通り道にあるのが『トロールの集落』というわけ。
トロールキングとタイマンで戦いたいという人もちらほら居て、ご主人様がその意向を酌んだ形だ。
前回タイマンしたのはイブキ、ツェン、ミーティアだけだからね。
今回はティナやドルチェ、サリュ、ラピス、ヒイノ、シャムあたりも戦いたいらしい。
当然私も。
私は【敏捷】特化で攻撃力がないからトロールを倒すのも一苦労だったんだけど、今回は魔剣もあるし攻撃力は上がっているはず。
まずはトロールで試して、大丈夫そうならトロールキングとも戦いたい。
「こんなにも皆が好戦的だったとは……我は悲しい」
フロロが首を振りながらそう言う。
フロロだってやろうと思えば戦えるでしょ、多分。
ちなみに、みんなに釣られて「私も戦いたいですネ!」とか言い出したリンネには全員が止めに掛かった。
さすがに楽観的すぎる。トロールとも戦った事ないのによく言えるもんだ。
「フロロじゃないが俺もこんなに戦いたがりが居るとは思わなかった。今日の探索はもう『トロールの集落』だけで終わらせるかな。黒曜樹は明日でもいいか」
パティたちのレベル上げにもなるし、とご主人様の意見。
今日いっぱいトロールキングマラソンであれば、戦いたい人は全員タイマン出来るだろう。ナイス心意気。
まぁ元より今回の四階層探索は長期間を想定していたから急ぎってわけじゃないけどね。
一日くらいトロールキングで潰してもいいだろうと、そういう事らしい。
そんなわけで『溶岩池エリア』を抜け、中央部の仮称『火山荒野エリア』にやって来た。
四階層の入口から真っすぐに『火山荒野エリア』を進むと、盆地にあるのが『トロールの集落』だ。
私たちは入口から見て、左手から中央に来た感じ。
盆地という言い方が正しいのか分からない。
岩山に囲まれて一段低くなった円形闘技場のようなもの。
チラリと覗けば……おおー居るねえ、トロールキングとトロール二〇体。相変わらず。
数で言えばこちらも二一人居るわけで、一人一体を倒す計算になる。
でも正面から乗り込んで乱戦は避けようとご主人様の意見。
トロールは無駄に体力があるからツェンでも一撃で倒すってのは難しいし、後衛陣なら尚更だ。
正面から戦うとなると、どうしても防御の手段を講じながら攻撃を入れていくという感じになる。
もしくは私みたいに避けまくってチマチマ攻撃する感じ。
攻撃力も無駄にあるから後衛陣に一発でも入れば終わる。だからやっぱり正面からは戦わない。
という事で前回と同じく岩山の上から遠距離である程度削る作戦にした。
「レベル上げも兼ねるからちゃんとパーティー分けするぞー。四組に分かれて岩山の四方に配置。遠距離でハメた後、それぞれのタイミングで仕掛けて良し。キングの相手は、最初はイブキな」
「ハッ!」
イブキは前回もタイマンしたけど、あれからレベルも上がって<カスタム>もしてるからどうなるか試したいらしい。
経験者だから最初にやるってのもあるんだろう。
ラピスとかトロールキングは初見だからね。戦う前に見させたいっていう。
そんな感じでトロールキングマラソンが始まった。
私は前回、ご主人様たちと『黒岩渓谷』に行っていたからここでのマラソンは未経験。
実際にやってみると、やっぱりトロール二〇体は簡単にはいかない。
体力があるから一撃で倒すのは厳しいし、攻撃力があるから当たるわけにはいかない。
適度な緊張感があり、それでいて全体的に見れば楽勝ムードがあるという、何と言うかマラソンするには″ちょうどいい″相手だ。
一回戦が終わるたびに岩山に上り直さないといけないのが面倒だけど、どうせリポップするまで時間があるから、その間に上るのは余裕。
やっぱりレベル上げ目的のマラソンであれば、ここは最高なんだと思う。私たちにとって。
トロールキングとは、ご主人様の指名で順々にタイマンをする事になった。
私は六番目のご指名。むふーと気合いを入れ、いざ尋常に勝負。
「グルアアアア!!!」
巨人であるトロールよりさらに一回り大きな身体、トロール以上の攻撃力と体力、そして速度も頭の良さもある。
武器の斧はまるで縦横無尽に動くギロチンだ。よくまぁあんな鉄塊を振り回せるもんだと感心する。
私は【敏捷】にあかせて余裕を持って避けつつ、まずはドラゴンダガーで斬りつける。
最初、四階層に来た時にトロールと戦ったけど、その時はミスリルダガーだった。
当然だけどそれより断然斬りつけやすい。サクッといける。
まぁ皮膚が分厚いから大したダメージではないんだけど。<毒撃>も一応入れてます。
次に【魔剣パンデモニウム】に持ち替えて斬りつけてみる。
サクッといける……うん、多少はマシかな?
短剣の形状的に魔剣の方が刃は大きいから、その分よく斬れるかなーくらい。
このままチマチマ斬りつけつつ毒で殺すのもいいんだけど、今の私の手札はこれだけじゃない。
トロールキングの攻撃を躱し、少し距離をとるように後退しつつ、魔剣に魔力を籠めて振るう。
――ザクッ
「!? グルワアアア!!!」
よし。トロールキングの右目を斬った。
私の【魔剣パンデモニウム】は【虚実の魔剣】。
魔力を籠めれば刃が消え、任意の場所に刃を作り出す。柄のみとなった剣を振れば、虚実の刃も同時に振れる。
今は後退しながら、絶対に届かない位置に刃を作り、それで右目を攻撃した。
フェイントでもあり、罠でもあり、不意打ちでもある。人型相手だとやりやすい。
暗殺でない正面からの戦闘の場合、これが正しい使い方なんだと思う。
使い方は難しいけど、ある程度使いこなせるようになってきたね。
トロールキングは目の前の私を当然見ているが、その死角から虚実の刃が襲い掛かる。
誰か別のヤツに攻撃されているのかと振り返ったりしているけど、残念、その時すでに刃は消えている。
虚実の刃に踊らされる――死ぬまで。
毒らせた事で体力を削ったのか、思ったよりも早くにトロールキングは沈んだ。
ふむふむ、よしよし。私としては満足。思ったよりもイケル。
「えげつねえな、その魔剣」
戦闘終わりで近寄って来たご主人様が開口一番そう言ってきた。褒め言葉だよね、それ?
結局この日は私も含めて十三人もの侍女がトロールキングとタイマンした。
私の時もそうだったけど、ご主人様が少しでも危険だと判断した侍女にはサポートが付いているから厳密に言えばタイマンではないんだけど。
回復役やご主人様が後ろで目を光らせている感じ。いつでも助けに入るぞと。
ティナは前回トロールキングと戦うのを禁止されていたから今回タイマンで倒せた事をかなり喜んでいた。
ドルチェとかヒイノとかもそうだけど、やっぱり<ステータスカスタム>と装備一新の影響が大きい。
前回苦戦していたトロール相手でも問題ないし、トロールキングにもちゃんと効いたからね。
初見のラピスも無事討伐成功。シャムもか。
ご主人様からの指名は一番最後だったけど、何だかんだノーダメージで勝てた。
「かぁ~っ! きっついわねー! 硬いし強いし速いとか……<演算>あっても頭パンクするわ! でもまぁ私の敵じゃないけどね! ふふん!」
自身の<水魔法>と魔竜槍の<炎の嵐>、そして回避しつつの槍撃。
とっても頭を使う戦いだったらしい。まぁラピスだと受けられないからね。魔竜槍でもあの斧は。
タイマン以外でもアネモネの<重力魔法>が効くかとか、ウェルシアの<魔力凝縮>でどれだけダメージを与えられるかとか、色々と試してみた。
ただの実験体となったトロールキングが惨めになる。
ともかくそうして一日中トロールキング狩りを続けた。この日はそれでおしまい。
以前にもキャンプを張った、集落の近くで野営する事にした。
「明日はまず『黒曜樹の森』に行くからな」
そういう事らしい。
ヒュドラはともかく雑魚敵がなー。状態異常もそうだけど細々と襲ってくるからなー。
私は<暗視>があるから大丈夫だけど下手するとみんなに被害が出る。
早めに警告してみんなに魔法ぶっ放してもらおう。
……黒曜樹、どれくらい採取するつもりなんだろ、ご主人様。
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