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after3:纏いし炎は最強の証
3-5:邂逅、炎の剣士と黒の主
しおりを挟む■セイヤ・シンマ 基人族 男
■23歳 転生者
「えっ!? か、彼らが例のSSSランクだと!?」
「【黒屋敷】と言うてな、こやつがクランマスターのセイヤじゃ」
「初めまして、セイヤです」
報告会が終わりそうな頃、本部長室へとやって来た纏炎族の二人。どうも父娘っぽい。
纏炎族は女神から与えられた知識では知っているものの見るのは初めてだ。
髪の毛が本当に炎みたいで、服とかソファーとか燃えそうで怖い。実は熱くないんだろうか。
男性のグレンさんという人は、本部長の知り合いでSランクらしい。
ノースリーブのローブとインナーは軽装。真っ赤な長髪を束ね、背中に剣を背負う姿はどことなく侍っぽく見える。髪燃えてるけど。
女性はやはり娘さんでセキメイというらしい。見た目は十七歳とかそんなもんだ。背はエメリーの少し上。ヒイノとかウェルシアとかと同じくらいだと思う。
こちらもグレンさんと同じような恰好。ポニーテールが燃えている。
で、聞くところによれば、グレンさんは剣の達人として有名らしい。
特に大陸西方では有名人で、「世界一の剣士は誰だ」と聞けば大抵がグレンさんと答えるらしい。それくらいスゴイ人なのだそうだ。納得のSランクである。
「グレンの事じゃからどうせ『SSSランク』が気になって来たんじゃろ? 儂は立場上、組合員の情報をやたら言えんし、出来るとすれば紹介くらいじゃ。例えグレンがやたら吹聴するようなヤツではないと知っていても、な」
そういう事らしい。それでこの場に呼んだと。
俺たちがこの場に居なくても、どうせグレンさんは屋敷を訪れるだろうし、それだったら今のうちに紹介した方が早いと。
まぁ紹介するのはいいんだけど、やはり俺が基人族だから驚いていた。
そりゃそうだ。自分より高ランクってどんなヤツだって遥々来てみれば、世界最弱の基人族だもんな。
カオテッドじゃ周知されすぎた感はあるけど、一歩街を離れればそれは正しい反応だと思う。
「ふむ、いや改めて見れば確かに強い。基人族という固定観念が邪魔をするが、そこいらの組合員より遥かに強いのは間違いない」
「そうですか?」
「しかし隣のメイドの方々の方が雰囲気に強さは感じるのだが……」
おお、さすが達人の目だな。気配とか分かるもんなんだろうか。
おそらくその見立ては正しい。
俺はステータスと神器でゴリ押しする戦い方だから、そこに技術など伴っていないだろう。今の俺の課題でもある。
一方でエメリーやイブキ、ミーティアはクランの中でも戦闘技術が高い方だと思う。特にエメリーは。
おまけに侍女の姿勢を日頃から意識している事で体幹もしっかりしているし、座っている今でもブレていない。
そういったのをひっくるめて、グレンさんは「こいつら強い」と見えているのだろう。
「ん? 【黒屋敷】で一番強いのはセイヤではないのか?」
「「「「間違いないです」」」」
「そりゃ主人なんだからお前らより強いのは当然だ。グレンさんが言ってるのは『武人』としての強さじゃないのか? 技量や精神、姿勢も含めた総合的な雰囲気みたいな」
「まさしく。特に多肢族と鬼人族のお二人は『武の体現』と言ってもいいだろう。なかなかお目に掛かれるものではない」
エメリーは若干ドヤ顔、イブキは照れている。珍しいな。
俺も侍女が褒められれば嫌な気はしない。
そんなグレンさんの評を聞いた本部長は「分かっちゃいるけど納得できん」という微妙な表情。
そして父の言葉を聞いた隣の娘が驚きを口に出す。
「えっ、し、しかし父上、鬼人族はともかく基人族や多肢族は非戦闘系種族だったと思いますが……」
これが普通の反応だ。
俺やエメリーは、そもそも組合員としてこの場に居る事自体がおかしい。戦えるはずもないんだから。
もっと言えば基人族の場合、神聖国の保護区を出ている事がおかしいし、貴族服と見られる喪服を着ているのもおかしい。侍女たちを従えているのもおかしい。なにもかもおかしい。
「セキメイよ、世界は広いのだ。視野を広げてものを見よ」
「は、はい」
「纏炎族とて戦えぬ者は居るのだぞ? 戦えぬ種族の中にあっても戦える者が居て、何もおかしい事はない。種族の差など一時的な判断材料にしかならん」
「な、なるほど……」
極論ではあるが正しいとは思う。
最弱の非戦闘系種族である基人族でも、がっちり装備を固めればゴブリンと戦うくらいは出来るんじゃないかと俺も思う。
そうして地道に経験値を溜めてレベルアップすれば強くなれるんじゃないかと。
まぁ経験値だのレベルだの、その存在を知ってるのは俺たちだけだが。
「わざわざこんな遠くまで足を運んだ甲斐があるではないか。強き者はいくらでも居るという事だ。本来ならば獣帝国を渡る間にガーブに会えれば良かったが今となっては詮無い事だ」
えっ……ガーブ……?
「む? グレンよ、おぬしはガーブに会いに来たのか?」
「カオテッドに来る途中で会えればと思っただけです。獣帝国に居るならばもう一度仕合いたいと。以前戦った時はなるほどこれが世界一の剣士かと思わされたものです。しかしあれから私も強くなったという自負があります。再び戦う機会があれば今度こそは――」
「あの、グレンさん……」
俺は頭を抱えて言うしかない。
「すみません。俺が殺しちゃいました」
「なっ!?」
♦
本部長は天庸についてのあれこれをよく知っている一人だ。魔導王国の秘匿情報から、俺が戦った相手までよく知っている。
だからグレンさんがガーブの名前を出した時、俺と同じような苦い表情をしていた。
一応その場でグレンさんには説明した。
もちろんヴェリオに関する事は話せない内容もあるので、「天庸って魔導王国の闇組織にガーブが所属してたんですよー」とか「カオテッドを襲って来たんで俺が殺っちゃいましたよー」とかそんな感じだ。
間違ってもガーブがヴェリオの錬金術で老化を抑えていたとかは言えない。
それを聞いたグレンさんは、最初こそ驚いていたものの、「ふむ……」と思案気な顔。
そこで本部長が俺に言った。
「セイヤよ、グレンとその娘を客としてくれんか?」
「ああ、うちにですか? 構いませんけど」
「セイヤの屋敷や博物館を案内すれば納得できる部分もあるじゃろう。それにどうせ戦ってみたいんじゃろ? グレン」
「ええ、出来れば手合わせ願いたい」
「はぁ……まぁ模擬戦程度になっちゃいますけど。殺し合いみたいな真剣勝負だったらしませんよ?」
「それで良かろう。お主の屋敷ならば訓練場もあるしちょうどいい。儂はお主の情報をあまり話せないのでな、どの程度開示するかは任せる」
そんな話を経て、俺たちは組合を後にした。
もちろんグレンさんとセキメイも一緒だ。
歩きながらグレンさんはイブキと話し込んでいた。どうやらイブキの背負っているのが魔剣だと気付いたらしい。
イブキはそれが炎の魔剣である事を説明し、グレンさんは興奮気味に「是非一度仕合ってくれ」と頼んでいた。セキメイも興味深げにイフリートを凝視している。
そうして歩きつつ屋敷を目指す。
途中、後ろから「キュゥゥゥ」と音が聞こえた。振り返ればセキメイがお腹を押さえている。赤面。セキメイの赤面。
「とりあえず案内の前に昼飯にしましょうか」
「す、すみません……」
「すまんなセイヤ。私たちは朝から何も食べていないのだ。カオテッドに来てまっすぐに組合に行ったのでな」
「いえいえ、俺たちもちょうど昼飯の時間ですし。エメリー、悪いけど先に帰ってヒイノに伝えておいてくれるか? お客さんの分追加で」
「かしこまりました」
さて、昼飯食べたら博物館か? それとも先に模擬戦するのかな?
食べながら聞いてみようかな。
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