カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

文字の大きさ
409 / 421
after4:北は竜の地、邂逅の時

4-20:カオテッドで迎える新年

しおりを挟む


■セイヤ・シンマ 基人族ヒューム 男
■24歳 転生者 SSSランク【黒屋敷】クラマス


「おおー! あれがカオテッドか! 大きな街じゃのう! あそこに皆の住処があるのじゃな!」


 鉱王国の街道を通り、カオテッドが見えだすと侍女たちが騒がしくなった。
 心なしか馬車の速度も上がる。長旅をしてきた馬が可哀想だからやめなさい。気持ちは分かるけど。

 プラムはカオテッドに近づいた段階で俺と一緒に馬車の中だ。
 窓から見える第二防壁を見て楽しそうに尻尾が揺れている。





 初めて山脈を離れたプラムは寂しがるかと思いきや、終始かなり楽し気だった。
 最初こそ馬車の馬が恐慌状態になったりと苦労したが、プラムが『竜気』を抑えたのか馬が慣れたのか、道程としては問題なかったと思う。

 プラムに聞けば『竜気』というのは竜特有の気配のようなもので、竜同士での察知はそれを探っている感じらしい。
 それは『強大な魔物の気配』と似たようなものらしく、竜だけでなく魔物や野生動物も敏感に反応するとの事。
 竜ほどではないがそれを感じ取り、弱い生物などはほとんど逃げ出すそうだ。
 どうりで竜狩りの際に魔物が異常に少なかったわけだ。野生動物なんて一匹も見てないしな。

 ただ常時『竜気』を垂れ流しだと食料の調達も出来ない為、大抵の竜は『竜気』を抑えるのが常なのだそうだ。
 ところがプラムはまだ幼く、狩りも父親が行っていた為、その制御には難があるらしい。

 このままでは俺たちの魔物討伐や迷宮探索に支障が出るということで、プラムには『竜気』の制御を心掛けるよう言ってある。
 竜狩りの時以外は抑えるようにと。結構集中力がいるらしいが、そこは頑張ってもらいたい。


 さて、そんな竜特有の特訓をしつつ行きと同じルートを逆方向に馬車は進む。
 街道を馬車で走る。ただそれだけでもプラムにとっては初めての経験だ。
 街に近づけば竜人族ドラグォールとして振る舞うよう言ってあるが、誰も居ない街道ではふわふわと好き勝手に飛んでいた。

 そうして街に入るたびに新しい発見に驚く。
 竜人族ドラグォール以外の人が群れているのを俺たち以外に見た事がないのだ。
 人の流れ、生活の様子、建物、食事、そのどれもが新鮮に映るのだろう。

 あれは何じゃ、これは何じゃと大騒ぎ。それを侍女たちが教えたり構ったりしていた。
 特に屋台の食べ物にはかなり興味を惹かれていた。美味しそうな匂いが漂えば、生肉しか食ってこなかったプラムからすると衝撃的だったらしい。串焼きとか串ごと食おうとしてたから止めさせたけどな。
 まぁ竜だから串ごと食っても大丈夫そうだけど。


 俺とツェン以外の侍女とも積極的に触れ合う事も多くなった。
 特にちびっ子軍団だな。ティナとかパティとかマルティエルとか。
 触れ合うたびにラピスが割り込もうとしている。無駄な努力だが。


 行き帰り含めて二月ふたつきほどの旅路を経て辿り着いたカオテッド。
 俺としてもホッとするというか、ホームに帰って来たという安心感がある。


「おおっ! 黒屋敷の皆さん! おかえりなさい!」


 北西区の門番さんにはVIP対応で迎えられた。組合員証の提示もなしだ。
 侍女が御する馬車で門に近づく、それだけで通された。それでいいのかカオテッド。

 門をくぐればそこは懐かしきカオテッドの街並み……という印象とはちょっと違う。
 大通りには見るからにいつも以上の屋台が並び、人々が溢れていた。


「どうやら新年祭には間に合ったようですね」


 隣に座るイブキがそう言う。
 新年祭とは要は年越しのお祭りで、世界のどこでも共通して行われる祝い事らしい。
 大晦日と元旦、その翌日と計三日間のお祭りだそうだ。つまり今日は大晦日か。
 カレンダーとかないし日付の事なんか全く気にしてなかったんだが……みんなよく知ってるな。今日が大晦日だって。


 四か国にまたがるカオテッドでは収穫祭なども地区によって異なり、街ぐるみで一つのお祭りとして盛り上がるのは、この新年祭くらいなのだとか。
 そりゃ南の樹界国・獣帝国と北の魔導王国・鉱王国じゃ収穫の時期もずれるか。中央区に至っては農業すら行っていないし。
 まぁ中央区の場合、組合主催のオークションがお祭りに相当するのだが、カオテッド全体を見れば新年祭の方が盛り上がるのかもしれないな。


 ともかく門の傍にある借馬小屋に馬車を返した。長旅を共にした馬にも労いの言葉をかける。
 そうして大通りを歩けばさすがに注目の的だ。これだけ人通りが多ければ仕方ない。
 俺たちはいつもの事だから気にしないが、さすがにグレンさんやセキメイは『英雄の帰還』扱いに苦笑いだし、プラムははしゃいでいる。飛ばないようにツェンに抑えさせよう。


 ずんずんと歩く最中、街の至る所で見慣れぬ光景を目にした。
 空に向かって魔法が放たれているのだ。多分ランス系の魔法だと思う。


「あれはなんだ?」

「『昇魔の儀』と言いまして、新年祭ではああして空に向かって魔法を放つのです。本来ですと六の鐘(午後九時頃)に合わせて放つのですが昼間からああして放つのも珍しくありません」


 何でも『一年の苦労を天に帰す事で新年はより良い一年になるように』という意味があるらしい。花火みたいだな。
 カオテッドは【天庸】事件があったし、北西区に至っては【ゾリュトゥア教団】絡みで大変な思いをした。
 それもあって『昇魔の儀』も頻繁に行われているのだろう、という事だ。


「攻撃魔法を使えない人はどうするんだ?」

「『昇魔の儀』用の魔道具が売っています。小さな魔法が放てる使い切りのものですが、この時期ですと安価で売られているでしょう。生活魔法の<送風>などで代用する場合もあります」

「ようは魔力を天に向けて撃てればいいって事か」


 ただ見栄えの問題もあって、多くは火魔法。次いで土魔法、水魔法。最下位が風魔法になるそうだ。風は見づらいからな。
 六の鐘に合わせて撃つとなるとやはり火魔法がよく見えるのだろう。

 なるほど。ならば俺たちもカオテッド住民として参加した方がいいんだろうな。
 先頭を歩く俺は後ろを振り向いて侍女たちに声を掛ける。


「撃てるやつは盛大に撃っていいぞー。但し武器(魔竜剣)使うの禁止なー」

『はいっ!』

「ご主人様、よろしいのですか?」

「祝い事には参加するべきだろう。俺たちだって一応カオテッド所属のSSSランク組合員なんだし」


 ただでさえ『カオテッドの英雄』とか言われてるんだからな。祝い事には積極的に参加した方が侮蔑や非難から避けられるだろう。

 ……と思ったのだがエメリーの心配はそうではなかったらしい。


「<聖なる閃光ホーリーレイ>!」「<炎の破城矢フレイムバリスタ>!」「<|岩礫連弾クラッグコメット>!」「<水竜咬進撃>!」「<氷柱連弾アイシクルコメット>!」「<闇の奔流ダークストリーム>!」「<魔力凝縮><氷柱連弾アイシクルコメット>!」「<聖なる閃光ホーリーレイ>!」「<聖なる閃光ホーリーレイ>!」「<氷柱連弾アイシクルコメット>!」「<炎の破城矢フレイムバリスタ>!」「<炎の破城矢フレイムバリスタ>!」


 ――ドドドドドドドド!!!!


『うおおおおおおおっ!!!』


 ド派手。そして大歓声。

 あー、うん、そうか、盛大にとなればこうなるのか。
 いやまぁいいんじゃないかな。最上位魔法でも。住民の皆さんも、もうある程度分かってるだろうし。侍女たちは楽しそうだし。

 しかし馬車旅で鬱憤が溜まっていたのか、侍女たちは<カスタム>したMPに飽かせて絶えず撃ち続けながら大通りを練り歩くはめになった。

 ……祝い事だからね。仕方ないね。





 その日の夜、俺たちは全員で屋敷の屋根に上った。
 自力で上った者も居るが、大抵は天使組とケニによる空輸だ。
 周りは高級住宅地だからうちと同じような三階建てが多いが、さすがに屋根から見ると見晴らしが良い。

 景色にはしゃぐ皆を見渡し、声を掛ける。


「じゃあ改めて。今年一年いろいろあったけど皆には感謝している。俺にとっては初めての事ばかりで皆に苦労を掛ける事も多かったと思うが、出会えた事、そして共に今ここに居る事を嬉しく思う」


 笑顔の侍女、泣きそうな侍女、神妙な顔つきの侍女、色々だな。


「俺の最終目標は【平穏】なんだが、来年はまだ何かと忙しいとは思う。乗り切れるよう共に協力してもらいたい」

『はいっ!』


 ――カァン――カァン――カァン――


「おっ、六の鐘だな。じゃあ少し早いが俺の地元の挨拶で、一緒に『昇魔の儀』をやるぞ。みんな武器を準備しろ。魔竜剣でも何でも使っていいからな」

『はいっ!』

「じゃあ行くぞ!」


 俺も黒刀を構え、<飛刃>の準備をした。


「新年明けましておめでとう! 撃てええええええ!!!」


 ――ドドドドドドドド!!!


 それはまさしく色とりどりの花火だった。
 カオテッドのどの場所よりも綺麗で、誰よりも天高く昇る光。
 しばらく撃ち続けるそれに、俺は首が痛くなるほど魅入っていた。


 後日、本部長やメルクリオから「やりすぎだ」と苦言を呈されたのは言うまでもない。


~Fin~
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

処理中です...