死にたがりな魔王と研究職勇者

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死にたがりな魔王

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死にたがりな魔王

ドォォォォオン

城の外壁が崩れる音がする。
もうすぐここに勇者が来るだろう。

・・・もう少し、もう少しでこの命も終わる時が来る。

今世紀の魔王、ルイード・アリステルドは黒煙の上がる窓の外を見ていた。
その横顔には生気はなく、目元には濃い隈、眼には覇気が無く感情の抜け落ちた表情であった。
髪にも艶が無く、雪のように白いが、毛先だけは黒くなっている。

魔王は従者もなく、一人窓際の椅子に腰掛けている。
部屋は氷河の中かと思われるほどの冷気が漂っている。


わずかに残る魔力で周囲の状況を見る。勇者は城の外壁を結界ごと破壊してからわずか5分だが、すでに城の中に侵入を果たしているようであった。
人数は5名。
魔王城を攻めいるのには少ない人数だ。
それだけ力の強いものが集まっているのだろう。

「ハッ」

ルイードは笑った。
抜け落ちた表情から一点、悲しげに、嬉しそうに。
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