死にたがりな魔王と研究職勇者

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勇者は魔王を倒しに行くものでしょう?③

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・・・じゃないの?

・・で・・と思うんだけど




話し声が聞こえる。


でも、ギースたちの声ではないし、誰だ?

私は死ななかったのか?

パタン



扉が閉まる音にルイードはそっと目を開ける。


目を開けるとそこは見知った天井で、ベッドに寝ている状態のようだった。


勇者に刺されて死んだと思っていたが、自分は生きているらしい。身体は痛み、身体は動かないが処置がされていることがわかる。

なぜだ・・・?

目線を周囲に向けると、天幕の外に一人人がいるようだった。

警戒し、無意識に結界を張ろうとするが、魔法が封じられているのか身体に電流のようなものが走った。

「うっぐ・・・」

呻き声に気づいたのか、誰かが近づいてくる音がした。

天幕が横に引かれ、外の灯りが入ってくる。
眩しさに目を細め、顔の見えない相手をただ睨みつけることしかできない。


「起きましたか。」

声に聞き覚えがあり、相手は自分が戦っていた紫髪の魔術師だった。

警戒を解かず、相手の出方を見ていると

相手も厳しい表情で

「魔法は封じてますので、何もできませんよ」

そう話すと魔王に背を向け、扉の外に出ていく。

自分は捕らえられたのか。
身体が動かないためか、拘束具はつけられていないが、魔法は封じられており、どうやらこの部屋全体には結界が施されていて逃げる事は叶いそうにない。

ベッドの上で少し身体のこわばりを解くが、すぐにあることを思い出し、無理やり身体を起こし、ベッドから転がり落ちた。

「ギース・・・!皆・・・!」

床に這いつくばり、ドアに向かおうと進む。数メートルの距離を移動することが難しい。

ガチャ


あと2メートルのところでドアが開いた。

上を見上げると

「何をしている」


金髪の勇者が淡々とした表情で立っていた。

再び警戒し、動かない身体を無理やり動かし、勇者から距離を取ろうとするが、うまくいかない。

勇者が近づき、手をあげる。

攻撃される!

目を閉じて痛みをやり過ごそうとするが、

身体が浮き、驚いて目を開けると勇者に担がれていた。

「!?・・・はなせ!」

振り払おうとするも、力が出ず、そのままベッドまで連れていかれ、降ろされた。

「まだ怪我が回復してないから動かない方がいい。」

勇者は戦いの時とは別人のように穏やかな表情で話しかけてきた。

しかし、ルイードは警戒を解くことはできない。
死を受け入れていたが、生きているのであればやらなければならないことがあるから、やられるわけにはいかない。ベッドの端に這って移動し、距離をとる。

「魔王が起きたと聞いたからちょっと話が聞きたいと思ったんだが、その様子だと答えてくれそうにないな。」

ルイードの様子を見て勇者は苦笑し、

「またくる」

と言い残し、さっさと扉を開けて出て行ってしまった。


その場に残されたルイードは

「なんだったんだ」

肩の力を抜ききれず、しかし疲労した身体の眠気に抗えず再度眠りに落ちてしまった。
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