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(30)迫る危険
しおりを挟むローリエの集で話し合い、とりあえず雫のいる別荘の特定を急ぐことになった。東雲は監視カメラの解析、立夏先輩は生徒会メンバーや
奏多にさりげなく探りを入れる、俺と香は生徒たちに聞き込みという役割になった。
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・
- 2年A組
今日も今日とて奏多は流星にベタベタだ。流星に話しかける隙も無いため、流星がどう思っているかわからない。たぶん迷惑はしてるんだろうなと顔から読み取れるが。
前に座っている流星と奏多を見ながら考え事をする。
(別荘について知ってる人……?奏多が北原さんと一緒に別荘にいたことを考えると3年なら知ってる人がいるか?手っ取り早いのは東金先輩に聞くことか。先輩も複雑な立場っぽいけど話してくれるかな。)
「おい!藤岡!やばいって!」
「……」
(放課後……いや昼休みに東金先輩に話を聞くにいくか。)
「藤岡!」
「なんだよ!」
「藤岡くん?」
「げっ!先生……」
(この先生寝てるやつとかに厳しいんだよな……)
「何回も呼んでいるのに全然気づきませんでしたね?」
「……すみません。」
「罰として昼休みに社会科準備室の片付けしといてくださいね。」
「えっ!?」
「もちろんお昼を食べてからでいいですよ?」
「いやあの……昼休みはやりたいことが……」
「ん?」
「片付けします。」
(まぁいいや、片付けぐらいすぐ終わるだろ。それが終わってから先輩に話聞きに行こ。)
「藤岡……頑張れよ。」
「おう。片付けとか得意だし大丈夫だと思う。」
「へぇー!社会科準備室って、魔窟って呼ばれるぐらいぐちゃぐちゃらしいからやりがいあるんじゃないか?」
「魔窟……?」
「そう!資料の雪崩が起きまくってるみたいだぜ、」
「え……」
やばい仕事を頼まれたようだ。
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- 社会科準備室
ご飯をかきこんで、社会科準備室にやってきた。
魔窟と言われるほどなので覚悟を持って扉を開ける。
ガラガラ
扉を開くと日の光で室内がキラキラと照らされている。綺麗だと一瞬思ったが、よく見たら開けたときに舞い上がったほこりに光が当たっているだけだった。
(ほこりっぽ!てか足の踏み場がないくらい紙が散らばってる……。先生はファイルに入ってない紙は捨てていいって言ってたが、量どんだけあるんだよ!?)
散らばった紙を踏みつけながら窓に近づき、換気をする。片付けの開始だ。
本棚から落ちている本を戻したり、ファイルを順番通りにしたり、散らばった紙を回収したりしていた。すると1冊の本に写真が挟まっていた。男性とこの学園の制服を来た男子が写っている。
(これは北原さんと……東城先生?2人で写真を撮るぐらい仲が良いのか?)
・
・
・
大方の片付けは終わり、あとは大量の紙が入ったゴミ袋を外のゴミ箱に入れれば終わりだ。本当は雑巾で拭き掃除もしたかったが、時間がないので掃き掃除だけして終わりにした。
ゴミ袋を持ち上げて外へ向かう。
「おもっ!」
紙だとしても集めるとだいぶ重量がある。重さでヨロヨロと廊下を歩いていると声をかけられた。
「藤岡くん大丈夫?」
「えっと……君は?」
「俺はD組の田中なんだけど……ふらついてるのがみえて。」
「そっか。いやちょっとこれが重くてさ。でもこれ捨てたら終わりだし大丈夫だよ!」
「じゃあ俺が持とうか?」
「いや俺が頼まれた仕事だしいいよ!」
「俺のほうが力持ちだと思うし持ってくよ!」
「あっ!」
なかば強引にゴミ袋を奪われた。まぁ持ってくれるというのだから甘えてもいいかもしれない。
「「……」」
(気まず……なんで何も話さないんだろうか。)
「えっと……田中くん話したことあったっけ?」
「いや話すのは初めてだよ。藤岡くんは目立つから知ってる。」
「あー、親衛隊隊長だしな!」
「……ねぇ藤岡くんは会長のことが好きなの……?」
「んー、好きだよ!」
(人としてな!)
「……」
(え?また黙っちゃった……。)
そのまま黙ったまま、ゴミ箱の前まで来た。田中くんがゴミ袋を投げ入れた。
「田中くんありがとう助かったよ!」
「……」
「田中くん?」
「……俺のほうが藤岡くんを大切にできるよ。」
「え?」
ガシッ
田中くんがよくわからないことを呟いたかと思うと、俺の手首を掴んで歩き出す。あまりに強い力で振り払うことができない。
「ちょっと!何?痛いよ!」
「……」
「昼休み終わっちゃうよ!?」
「……」
田中くんは黙ったままだ。どこかへと連れていかれそうになっている。
(まずい!ただでさえ社会科準備室は人気のないところにあって、ここのゴミ箱も人気がない。俺が連れ去られてるところを見たやつがいないし……。こいつも力強いし!てか痛いんだが!)
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・
手首を掴まれたままだいぶ歩き、よくわからない倉庫前まで来てしまった。かすれた字で保健委員会倉庫と書いてあるような気がする。
「おい!何してるんだ?」
もう終わりだと思ったとき、誰かの声がした。
「会長!」
「幸輝!おまえの知り合いか?」
「違います!」
「そうか。ならおまえ幸輝に何してる?」
「……」
「?何か言え?」
「あんたのせいで!!」
会長が現れ、助かったと思ったのもつかの間、田中はナイフを取り出した。
「な!田中くん!やめなよ!」
「藤岡くんがいけないんだよ。会長親衛隊隊長なんかになっちゃうから……。俺は去年からずっと君を見てたのに……。」
「アホじゃないか?話しかければいいだろ。それに幸輝は今は俺のものだ。」
(会長ー!なんで煽ることを言うんだ!相手はナイフ持ってるんだぞ!?てかいつの間に俺は会長のものになってるんだ。)
ブンブン!ビッ!
田中がナイフを振り回した。会長の腕にナイフがかすったようだ。
「うるさい!俺のものにならないなら……藤岡くん一緒に死のう?来世は恋人になろう?」
「会長!」
「藤岡くん!あんなやつの心配しないでよ!俺だけ見てよ……?」
腕を掴まれたまま、田中が近づいてくる。会長は腕を抑えながらいつ割って入るかタイミングをはかっているようだ。
(これは絶体絶命では……?)
ガラガラ
「あ……?おまえら倉庫前で何してるんだ?」
「「東城(先生)!」」
「黒崎おまえ先生つけろっていつも言ってるだろ。生徒会メンバーは誰もつけて呼ばないな。」
倉庫から東城先生が出てきた。
「……先生であろうと俺と藤岡くんの邪魔するやつは……」
「あ?」
シュッ!ドガン!
田中が先生にナイフを向けた瞬間に、先生はナイフを蹴飛ばしそのまま蹴り倒した。田中はナイフを飛ばされた際に動揺で俺の手首を離したらしく、田中が蹴り倒されるときに俺が巻き込まれることはなかった。
「先生!助かりました。」
「あぁ素人が持ってるナイフなんて大したことないからな。」
「東城助かった。幸輝の手首が強く掴まれてたから見てほしい。」
「それなら会長も!ナイフがかすって怪我してます!」
「あー、どっちも見るから保健室に一緒にこい。その前に警備員呼んでくる。」
この後すぐに警備員さんが来て、田中を連行していった。たぶん田中は退学になるだろうと言われた。すべての処理が終わったので、俺と会長と東城先生で保健室へ向かう。
・
・
・
- 保健室
「じゃあまず黒崎からなー。」
「いや幸輝から……」
「血がまだ止まってないだろ?だから止血先にすんだよ。」
「分かった。」
「はい。終わり。次藤岡な。」
「お願いします。」
「うわっ。手形にあざになってるな……保冷剤渡しとくからちゃんと冷やしとけよ。」
「ありがとうございます。」
「それで……あれはどうしてあの状況に?」
俺は社会科準備室を片付けたこと、そこからあそこまでの経緯を話した。
「そういえば会長はどうしてあそこに?」
「あぁ生徒会室で仕事してたら外から声が聞こえてな。気になって見たら不穏な感じだったから。」
「そうなんですね!助かりました!」
「といっても俺は何もできなかったがな。」
「んだよ黒崎、カッコつけたかったか?悪いな笑」
「東城!」
「先生つけろ。」
会長と東城先生が軽いテンポで会話している。仲がいいんだな。
「そうだ!片付けしてるときに東城先生と北原さんが写ってる写真があったんですけど……」
「北原さん……?あぁ北原先生か。」
「北原先生?」
「俺を更正してくれた先生だよ。卒業できたのも先生のおかげだ。」
「へぇー。その先生と連絡をとったりは?」
「最近はあんまり……。いや?なんか来てたな別荘を新しく買ったから来ないかって。忙しくていけてないけど。」
「そういえばその北原先生?ていうのは話したことないが、俺も最近別荘に誘われたな。」
「え!会長も?誰にですか?」
「あの夏祭りで会ったろ?北原奏多だ。」
「たぶんそちらの2人叔父と甥っ子の関係です。夏にプライベートビーチの別荘で知りました。」
「「なるほどなー。」」
2人は北原さんと奏多について納得したように話している。気になるのは2人が別荘にそれぞれ誘われていることだ。
「2人はどちらの別荘に招待されたんですか?」
「俺、地図あるぞ。送られてきた。」
「俺も」
「すみません。転送してもらってもいいですか?」
2人から地図を転送してもらった。やはりそれぞれ違う場所の別荘のようだ。
(北原さんはいくつ別荘を持ってるんだ……?特定するの大変だぞ……くそっ!)
「そういえば黒崎、気になってることがあるんだが。」
「ん?なんだ?」
「なんで北原奏多がまた学園にいるんだ?」
「いや俺もわからない。ただ涼宮さんに協力してくれって言われたから。」
「おまえ涼宮大好きだもんな。」
「な!人としてです!幸輝!勘違いするなよ!?」
「え?あ、はい。」
(あぁ会長も男との噂は立てられたくない系ね。)
「とりあえずおまえらのクラスには連絡しといたから無断欠席にはなってないぞ。」
「「東城(先生)!」」
「事情は教師にしか共有してないから他に話したきゃ自分で話せよ。」
「わかりました!」
俺と会長は保健室から出た。
「幸輝……おまえが嫌がらせをしてないと信じてる。だが、親衛隊が良くないことをしていることは事実だな?」
「はい。すみません。止めきれなくて。」
「まぁ奏多先輩があれだからな。俺たちもどうにか良い塩梅で止められるように努力するよ。だから……」
「親衛隊をまとめてみせますよ。隊長ですから。」
「期待している。」
(きっと雫がいる場所に行方不明事件の真相があるんだ。それを解決すればすべてがうまくいくと思う。会長も何か立場があって大っぴらに味方できないんだろう。努力するしかないな。)
会長と約束し、改めて覚悟を決めた。
すでに放課後になってしまったので、教室には戻らず東金先輩に話を聞きに行くことにした。
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