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(38)学園の闇を暴け
しおりを挟むこれからおこなう作戦の内容はこうだ。
俺たちの誰かが商品としてオークションに出る。その現場を撮影。その間に顧客データなどを東雲たちに送信する。データ送信と撮影が完了したら全員で脱出する算段だ。
本当は取引に関わっている人間を1人残らず捕まえたいのだが、いかんせん俺たちだけでは力不足だ。警察に資料を見せて動き出したところで、ここに到着するには時間が足りないだろう。
「じゃあ誰が一番に出品される?」
「……響、その言い方やだわ笑」
「ごめんねー笑」
「じゃあ僕が!たぶん一番最初に捕まったはずだし。」
「な!いや俺が出るよ。」
商品役として誰が行くかという話になった。すると雫が立候補をした。俺はそんな危険なことをさせるわけにはいかないと思い、立候補した。……だが一斉に反対された。
「「幸輝!」」
「幸輝くん危ないよ?」
「どうせ誰かがやらなきゃいけないんだ。なら奏多に一番嫌われてる俺がいいんじゃないか?たぶん嬉々として出品するぞ?」
「確かに幸輝、なぜか奏多先輩に嫌われてたな。」
「ですよね。」
「奏多は気に入った人は商品にしないで、自分の近くに置いとくこともあるからちょうどいいかもね。」
なんとか説得できたようだ。会長と響の口添えもあって、嫌われてるなら商品にされてもおかしくないと皆納得してくれたみたいだ。
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「じゃあ幸輝これつけてね。」
「え?手錠?」
「うん。一応商品だよーってアピール!」
「なるほど……」
そして手錠を手首につけられていると、急に響が俺の耳元に口を近づけてささやいた。
「雫のかわりに立候補したんだろ?ちゃんと守れてるじゃん。カッコいい男になれたんじゃないか?」
思わず俺は言い返す。
「……いや、守れてないからここまで来たんだ。」
「そっか。じゃあまだまだ努力しないとな?」
「そうだな。響も伝える努力したら?」
「え?」
「もう守る努力はしてるから後は心配させないだけだよ。」
「幸輝も言うようになったなー笑」
2人でこそこそ話をしているところから少し遠いところで、会長たちが距離が近くないかと騒いでいる声は俺たちには聞こえていなかった。
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・
・
俺は手錠をつけられて響についていく。香もその後ろから手錠をつけられた演技をしながらついてくる。香は取引の撮影係だ。壇上の袖からこっそりと撮影をしてくれる役割だ。
雫は響がまとめてくれたデータを地上にあるパソコンで東雲たちに送信する役割だ。その護衛として流星や生徒会メンバーがついている。生徒会メンバーは何人かこちらの護衛についてくれようとしたが、結局脱出するときに迎えに来てもらう算段になった。
「櫻井さんこんばんは。そちらが商品の?」
「えぇ。探しだすのに苦労しましたが、ちゃんと出品しますよ。」
「そうかー!良かった良かった。」
オークション会場に向かう途中で響が声をかけられた。そのお客らしき男は仮面をつけているが、目線がわかりやすい。俺たちのことを値踏みするようにじっとりと見つめてくる。
響は軽く話したあとうまく流して歩きだす。俺たちもその男の横を無言で通りすぎた。
(気持ちわるー!まぁもともとこんなオークションに関わっている時点でキモいがな。)
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- オークション会場
とうとうオークション会場に到着した。先ほどは客席の方にいたが、今度は壇上にいる。変な感覚だ。
俺たちがついたことに主催者らしきおっさんと学園長の北原湊が気づいたようだ。それに奏多や前年度生徒会メンバーも気づいたようで近くに寄ってくる。隆弘先輩と野口も壇上のすみに立っているが、こちらに寄ってくる気配はなかった。……東金先輩だけいない。
「響ー!持ってきてくれてありがとー!」
「全然。とりあえずこの2人連れてきたけど大丈夫だった?」
「うん!朔也とかは友達だから正直商品にするか悩んでたんだ。」
「奏多!おまえはなんて優しいんだ!」
「奏多、優しい。」
「さすが優しいね。僕が好きになるはずだよー!」
「もう皆言い過ぎだよー!」
(人間のことを持ってくるとか商品とか言ってる時点で優しいもくそもないだろ。……洗脳でもされてるのか?ん?近づいてきた。)
……コソ
「忠告聞かないからこんなことになったんだよ?……優しいご主人様に決まるといいね笑」
奏多が俺にだけ聞こえるように囁いた。……後悔するのはおまえらの方だよ。
「とりあえず目玉商品が見つかったことだし、オークションを開催しようか。お客様を待たせているしね。」
「了解でーす!」
オークションが開始されるようだ。俺と香は響に舞台袖へと連れられていく。主催者たちは壇上へと戻っていった。
香と響に目配せをするとそれぞれ頷いてくれた。香はこっそりとカメラを覗かせている。
「会場にお越しの皆様、大変長らくお待たせしました。これよりオークションを開始いたします!」
ワーワー!
その一言で会場の熱気が一気に上がった。異様な光景だ。
そこから様々な商品が発表された。あの盗品部屋で見かけた盗品の数々(ほぼゴミ。何に使うのかは不明。)や学園内で隠し撮りされたであろう写真の数々。
ついに俺が壇上に出されるようだ。響がつれていくのかと思ったが、あのおっさんが俺を連れ出しに袖までやってきた。おっさんに引っ張られて、スポットライトの下へときた。俺の姿が見えたことでより会場の熱狂は高まったように感じる。
ワーワー!ワーワー!ヒューヒュー!
「皆様!お待ちかねの目玉商品です!造形は可愛らしく、少し反抗的ではありますが、調教しがいがあると思います!」
(……最悪な謳い文句だな。)
「では最低金額は1000万から!」
「1500!」
「2000!」
「3000!」
「4000!」
・
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・
「1億!」
「10億!」
「「……」」
「他にいらっしゃいますか?……いらっしゃらないようですので10億で決定です!101番様がご購入!」
どうやら購入者が決定したようだ。だが買われるつもりはない。舞台袖に目を向けると香は無事に撮影できたようで何度も丸を作っている。響の方にも連絡が来たらしく、耳に手を当てながらこっちを見ている。……響もおっけーポーズを出した。
壇上ではおっさんとお客がやりとりを終えたらしく、こちらへと手を伸ばしてくる。
「じゃあこの商品をもらうよ。今日から私が君のご主人様だよ。」
「いいえ。俺は商品じゃありません。」
「「え?」」
俺は手錠を自分の手首から外した。
「もうチェックメイトですよ。」
「……君は何を言ってるのかね?」
「証拠はもう押さえました。もうこのオークションを行うことはできません。」
「ハッタリはやめたまえ。それに君が証拠を押さえていようが、ここで処分してしまえば何もなかったことになるんだよ。」
「その心配はありません!」
「響!?」
袖から響と香が飛び出してきた。奏多が理解できないという顔で叫んだ。
「こちらを見てください。ここに招待された人物の名簿です。」
「それにちゃんと動画撮ったからね!言い逃れはできないよ!」
「……そんなもの今処分してしまばいい!」
「もう外部の協力者にこのデータは送信済みですよ。」
「なっ!」
ざわざわ……ざわざわ……
自分たちが逮捕されるかもと知り、お客が焦り出した。いち早くここから逃げ出そうとしているものもいるようだ。まぁ証拠が残っているため逃げたところで捕まるやつは捕まるだろう。そう諦めていたとき、階段に続く扉が大きく開かれた。……薄暗くてよく見えないが生徒会メンバーが助けに来たのだろうか。
バン!
「失礼します。」
静かなトーンでありながら、よく通る声が壇上まで聞こえてきた。突然の登場で会場が一瞬静かになったこともあり、ここまで聞こえたのだろう。
「副会長……!」
「副会長?白銀先輩?」
「いや俺のときの……。涼宮とかと一緒にやってた人だよ。」
(あっ!雫が連絡してたっていう前会長を探してた人か。)
「皆様お帰りにならないでくださいね。といっても周りはもう包囲されているので逃げることはできませんが。」
そう言いながら壇上へとやってきた。
「えっと……どうしてここに……?」
「あなた方が繋いだ結果ですよ。」
「繋いだ?」
「光の上学園で大切な人がいなくなってしまった人は何人もいるんです。私はそんな人たちと協力してどうにか解決しようとしていました。しかし卒業してしまうとあまり関われなくなってしまった。
そんなときにあなたの彼女さんから連絡がありました。あなた方が提供してくる情報はとても役立ちました。そして今回のオークションの情報を連絡してくれましたね。なのでここまで来れたんですよ。」
「ずっとあなたも戦ってたんですね。」
「えぇ。特に何も成し遂げられなかったですけどね。彩音さんがこの場所を突き止めてくれたので助かりました。」
「彩音!?」
「……響くん安心してください業務連絡しかしてませんよ笑」
「……別にそんな心配は……」
前副会長がにこやかに説明してくれるのとは反対に、主催者組は信じられないような顔で見てくる。
「では北原さん、東さん、前生徒会の皆さん一緒に来ていただけますか?」
コソコソ
「……響、誰?東って。」
「北原さんの近くにいるおじさん。」
「あぁ、あの主催者っぽいおっさんか。」
名指しされたメンバーは各々、怒りや悲しみ、絶望、驚愕などの表情を浮かべている。奏多が何かを話しだそうとした声に被せるように、学園長の北原さんが声をあげた。
「あはは!ふふふ……」
「何がおかしいんですか?」
「いえ、やはりこんなときが来ると思っていたんですよ。ね、東さん?」
「何を言ってるんだ!こんなことになって大損だ!想定なんかしてない!」
「……私はこんなことをしたくはなかった。でも取り返しのつかないところまで来てしまっていた。」
「後悔してるってことですか?」
「後悔?もちろんしてるさ。だからこうすることで全てをなかったことにする。」
「え?」
突然笑い出したかと思えば、北原さんは真顔になって何かのボタンを取り出した。
「おじさん!それなんなの?僕たちが助かるボタン?」
「あぁ奏多。私たちを救うボタンだよ。押せば皆あの世で幸せになれる。最初からやり直すんだ。」
「「「な!あの世!?」」」
ポチッ!……ドガン!ドカン!ドカン!
北原さんがボタンを押したかと思えば、どこからか爆発音が聞こえてきた。……爆弾の起爆ボタンだったらしい。会場中がパニックになった。
「やばい!爆発音が止まらない!」
「早く逃げないと!この建物が崩壊するか、火事が起きるか何かしら危険であることにかわりない!」
皆で出口を目指すことになったが、後ろを振り返ると北原さんは壇上に立ったままだ。
「悪い!俺、ちょっと戻る!」
「え?こーくん!」
俺は壇上へと向かった。香は俺を引き留めようとしたが、人混みに流されてみえなくなった。
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・
「あの逃げましょう!」
「……藤岡くんだったかな。どうして戻ってきたんだい?」
「あなたが立ち止まったままなのが見えたので。」
「……」
「死ぬつもりですか。」
「あぁ。私は罪を犯しすぎた。生きてはいけない人間だよ。」
「……そんなことはないと思いますよ。」
「どうして?君も君の友人も危険な目にあわせたんだよ。」
「俺のことを助けてくれた先生がいたんですけど……その人があなたを尊敬してるって言ってたんです。俺はその先生がいなかったら、ひどい怪我をしてたかもしれない。……結果的にあなたにも俺は救われたんです。」
「……」
「その先生は東城理人先生って言うんですけど……」
「……!東城くん。……そうでしたか。」
「あなたがやったことは許されないけれど、これから悔いを持って生きていけばいいと思います。それで誰かを助けることにもなるから。」
「……本当に若者というのはいつも大事なことを思い出させてくれる。生きて償っていこうと思います。」
「良かった……。じゃあ急ぎましょう!危険だし!」
「そうですね。」
俺たちは走り出した。あんまり出口の方向を覚えていなかったので、北原さんの後に続く。まだ至るところで爆弾の音がしてるし、所々崩壊し始めている。
ドガン!ドシャ!
近場で爆発音がしたと思えば、北原さんと俺の間に天井が落ちてきた。怪我はなかったが、通れなくなってしまった。
「藤岡くん!聞こえますか!怪我は?」
「聞こえます!怪我はしてません!北原さんは?」
「私もしていません!ですがこちらまで来るのが難しいかもしれないです。他にも出口がありますから、そちらに回ってください!」
「わかりました!」
俺は別の出口を目指すことにした。
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