マントを拾っただけなのに

右京之介

文字の大きさ
1 / 1

マントを拾っただけなのに

しおりを挟む
    「マントを拾っただけなのに」

                     右京之介

 ボクは公園の片隅で、丸まった赤い布のような物を見つけた。
 これは何だろう?
 さっそく手に取って、広げてみた。
「すげえ、スーパーマンのマントみたいだ!」
 ボクはあたりを見渡して、誰も見てないことを確認すると、赤い布を首に巻いてみた。
大きさもちょうどよく、どこから見ても、スーパーマンだった。
茶色い野良猫が不思議そうにこっちを見ていたが、ボクは気にせず、両手を空へ向けて突き上げると、「トォーッ!」とジャンプしてみた。
 ――飛べなかった。
がっかり。これは飛べないマントか。

 だったら……。
ボクは「オリャー!」と叫んで、全速力で走り出した。
「あっ、変なお兄ちゃんが走ってる!」
ボクの隣を小さな男の子が追い抜いて行った。
 ――少年に負けた。

だったら……。
ボクは全身の力を込めて、「ソリャー!」とシーソーを真ん中から持ち上げてみた。
ビクともしなかった。
地面にへたり込んだボクを、さっきの茶色い野良猫が不思議そうに見ていた。

だったら……。
富士山の高さは? 分からない。
五十七×六十三は? 分からない。
フランスの大統領は? 分からない。
ボクはまたがっかりした。
赤いマントを羽織ってみたけど、空は飛べないし、足は速くならないし、力持ちにもならないし、頭も良くならない。

 なんだ、ただの赤い布か……。
 全身の力が抜けてしまったボクはベンチに座りこんだ。
さっきの茶色い野良猫がピョンとベンチに飛び乗って、ボクの隣に座った。
そうか!
このマントを着ると、野良猫が仲良くしてくれるんだ。
「やあ、猫くん。今日はいい天気だねえ」
ボクは野良猫に手を差し伸べた。
猫はシャッといって、ボクを威嚇すると、一目散に逃げ出した。

ボクはマントを脱ぐと、元あった場所に丸めて置いた。
木陰に隠れてそっと覗く。
 誰かが拾って、スーパーマンごっこを始めないかなあ。
 しばらくして、腰のあたりをトントンと叩かれた。
 振り向くと、さっきボクを走って追い越した少年が立っていた。
「あれはボクが置いたんだよ」少年は言った。
「えっ、何のために?」ボクはきいた。
「マントと勘違いした人がスーパーマンごっこを始めるのを見て、笑い転げるためだよ」
「えっ、あれはマントじゃないの?」
「おじいちゃんが赤いフンドシを作るため、押入れに入れていた布だよ。ボクが勝手に持って来たんだ。なのに、マントと思い込む人がいて」
「つまり、ボクは……」
「今日、三人目のスーパーマンだよ!」
 ボクは少年に騙されたことが悔しくて、こう言ってやった。
「ヒーローがたくさんいるほど世界は平和になるんだ」
 しかし、少年はボクの強がりをスルーして、
「お兄ちゃん。ほら、向こうを見て!」
 若い男が赤い布を広げて、首に巻こうとしていた。
「あっ、クラスメイトの陸くんだ!」ボクの友達だった。
 陸くんはマントを装着すると、両手を空に突き上げた。
「トォーッ!」
 ボクと少年はその姿を見て、笑い転げた。
「四人目のスーパーマン誕生! その名は陸くん、 ハハハハ」
 しかし、ボクと少年の笑い声はたちまち消えた。
 陸くんが赤いマントをひるがえし、空に向かって、飛んで行ったからだ。
「赤フンで飛べたよ!」「マジ?」

                       (了)
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

サッカーの神さま

八神真哉
児童書・童話
ぼくのへまで試合に負けた。サッカーをやめようと決心したぼくの前に現れたのは……

処理中です...