夢をいかがですか?

右京之介

文字の大きさ
1 / 1

夢をいかがですか?

しおりを挟む
      「夢をいかがですか?」

                    右京之介

ボクの目の前に三つの赤い風船が横に並んで浮いていた。
これは夢じゃないかと思った。でも、ボクは夢に付き合ってあげようと思った。
ここで無理に目を覚ますこともできたけど、久しぶりに見た夢だから大切にしなくちゃ。
さあ、夢の中へ……。

まずは、一番右の風船を指で突っついてみた。
――パン!
 赤い風船が割れて、あたりが真っ白になった。
とても大きな音がしたけど、ボクの部屋に、心配したお母さんが駆け込んで来ることはなかった。――やっぱり夢なんだ。
 白い煙の中から一本のエンピツが現れた。
 なんで昭和の文房具が出てくるの?
今はシャーペンの時代だよ。
エンピツなんて誰も学校に持って来てないし、家では九十歳のひいおばあちゃんが日記を書くのに使ってるだけだ。ああ、悪夢だ。
でも、これはボクへのプレゼントに違いない。クリスマスも誕生日もまだ先だけど。
はい、プレゼントは末等のエンピツでしたー!
本来ならここで終わる。でも、これは夢だ。もっといい物をもらってやる。ルール違反かもしれないけど、夢だから許してもらおう。
ボクは真ん中の風船も突いてみた。
――パン!
また大きな音がして、風船の中からゲーム機が出てきた。
やったー! 欲しかったやつだ。いいぞ、ボクの夢!
でも、ここで終わったら男がすたる。風船はもう一個残ってるんだ。
もっといい物が出てくるに違いない。
ボクは夢中で三個目を突っついた。
――パン!
最後の風船からはマウンテンバイクが出てきた。
すごい! これはボクがこの世で欲しかったナンバーワンの物だ。
小さな風船の中から、大きな自転車が出てくるなんてやっぱり夢なんだ。
あきらめずに三個の風船を全部割ってよかった。
夢をあきらめないでという昭和の歌があったっけ。
 あーあ、楽しかった。
さて、そろそろ朝だろう。目を覚ますとするかな。
真夏の夜の夢はこれでおしまいだ。

 目覚めた場所はいつものボクの部屋だった。
部屋中を見渡してみたけど、エンピツもゲーム機もマウンテンバイクもなかった。
 あるわけないか。だって夢だもん。これが現実だ。

 ボクは部屋を出て、キッチンに向かった。
お母さんがハムエッグを焼いていて、ひいおばあちゃんが一人でテーブルに座っていた。テーブルの上にはたくさんのエンピツが並んでいた。
「えっ、どうしたの、このエンピツ?」
ボクは驚いて尋ねた。
こんなことになってるなんて、夢にも思わなかったからだ。
「それがねえ」ひいおばあちゃんは不思議そうに言う。「朝起きたら、ここにエンピツが三十本も置いてあってねえ、おかしいねえ」
 ひいおばあちゃんは日記を書くためのエンピツを一年で一本使う。
 つまり……。
「ひいおばあちゃん、これはあと三十年生きてくださいというプレゼントだよ」
「へえ、そうかねえ。百二十歳まで生きるなんて、なんだか夢のようだねえ」
 ボクが見たエンピツの夢が現実になったんだ。
 エンピツの夢は夢占いではどういう意味なんだろう?
まあ、意味なんてどうでもいいか。
ホントはゲーム機かマウンテンバイクがよかったのだけど、三十本のエンピツも最高だ。
だって、あと三十年間もひいおばあちゃんとこうして会えるのだからね。
なんだか、夢先案内人になった気分だなあ。それとも夢追い人かなあ。
 ボクはふと窓から外を見た。
 二個の赤い風船が空を飛んでいた。
 きっと今夜、誰かの夢の中へ現れるのだろう。

                           (了)
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

ナナの初めてのお料理

いぬぬっこ
児童書・童話
ナナは七歳の女の子。 ある日、ナナはお母さんが仕事から帰ってくるのを待っていました。 けれど、お母さんが帰ってくる前に、ナナのお腹はペコペコになってしまいました。 もう我慢できそうにありません。 だというのに、冷蔵庫の中には、すぐ食べれるものがありません。 ーーそうだ、お母さんのマネをして、自分で作ろう! ナナは、初めて自分一人で料理をすることを決めたのでした。 これは、ある日のナナのお留守番の様子です。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

雪の降る山荘で

主道 学
児童書・童話
正体は秘密です。 表紙画像はフリー素材をお借りしました。 ぱくたそ様。素敵な表紙をありがとうございました。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

ふしぎなえんぴつ

八神真哉
児童書・童話
テストが返ってきた。40点だった。 お父さんに見つかったらげんこつだ。 ぼくは、神さまにお願いした。 おさいせんをふんぱつして、「100点取らせてください」と。

稀代の悪女は死してなお

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」 稀代の悪女は処刑されました。 しかし、彼女には思惑があるようで……? 悪女聖女物語、第2弾♪ タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……? ※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。

処理中です...