【完結】異世界召喚されたのに命を狙われまくるなんて聞いてない。

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第二王子に会う方法

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    次の日、再開されたおじいちゃん先生の授業を終えた後、魔力訓練をしていた場所に向かう。ライナス王子にはアルウィンが直接俺が魔法を使えたことを報告してくれて、今日無理やりだが時間を作ってくれたらしい。
    朝目覚めたときにこの感覚がなくなっていたらどうしようと思っていたが、身体の奥から聞こえるコトコトという音は健在で、俺は緊張と興奮を隠しきれぬまま北塔の屋根付き広場へと到着した。

「ついに僕のおかげで魔法が使えるようになったというのは嘘ではなかろうな?」
「王子!忙しいのに来てくれてありがとう。昨日初めて浄化魔法が使えたんだ」
「ふん、やってみるがいい」

    俺たちのすぐ後にライナス王子も到着して、俺は早速浄化魔法を使ってみることにした。他の魔法を試してみたかったが、アルウィンが暴走の心配もなく一番手軽に出来る魔法だからともう一度浄化魔法をすることに決めたのだ。
    アルウィンに毎日やっていてもらった浄化魔法をイメージして指先に集中する。身体の奥で蠢いていた何かがゆっくりと指先の方に流れていく感覚がある。そして指先を自分の方へと向けると、昨日と同じく爽やかな風が通り、お風呂に入った後のような余韻に包まれた。

「…出来た!」
「ふむ、本当に出来ているではないか。魔力量はどのくらいだ?」
「1日1つ初級基礎魔法が出来るくらいの量です。まだ浄化魔法以外は試していませんので例外がある可能性はありますが、ミトの身体への負担を考えても妥当かと」
「なるほどな。今後は魔力量を増やす訓練に切り替えるぞ」
「それってどんな訓練?何をするの?」
「基本的に人の魔力量というのは固定されていて増えも減りもしない。だがそれがすべて目覚めていればの話だ。まだ眠っている魔力をすべて引き出すために俺や騎士の魔力を流して反応させる。今までは俺だけと魔力訓練をしていたが、今後は騎士、お前の魔力もこいつに必要だ」
「かしこまりました。喜んで協力させて頂きます」
「アルウィン、ライナス王子、2人のおかげで初級だけど浄化魔法が使えるようになったんだ。本当にありがとう。そしてこれからもよろしくお願いします!」
「もちろんだ、ミト」
「ふん!ほとんど僕のおかげだけどな!」

    不貞腐れたようにそっぽを向いた王子だが、その口角は時折ゆるみそうになっていて、喜んでいるのを一生懸命隠しているようだ。相変わらず素直じゃないなと思いながらも、俺はきちんと浄化魔法を使えたことが嬉しくてにやける顔を抑えきれなかった。

    しかし俺は今日、もう1つやるべきことがある。ちらりと北塔の裏に見えている5つの後宮を見やる。その中でも右から2つ目の建物の窓に人影が見えないだろうかとちらちらと気にしたが、残念ながらこの距離だとよく見えなかった。

    アルウィンと王子が俺に次はどの初級基礎魔法をやらせるか議論している間、後宮に近付くためにはどうすればいいだろうかと考える。俺を殺そうとするほどの秘密が第二王子にあるのなら、第二王子に会ってみれば何か分かるかもしれないと思ったのだ。

    そしてもう1つ。第二王子に秘密が隠されていると思う理由が、国王の聖魔法による結界が突然残り10年ほどしか持たなくなった原因が、第二王子にあるのではないかと思いついたからだ。
    今まで聖魔法を取得することだけを考えてきたが、そもそも俺が召喚された原因は国王の聖魔法が徐々に力を失っているからだ。
    ついさっき、ライナス王子は人の魔力量は固定されていて増えも減りもしないと言っていた。つまり、国王の魔力は減っていないのに聖魔法の力が弱ってきているという不可思議な現象が起こっているのだ。

    ライナス王子にそれらのことを話したいが、アルウィンがいる前で話題を出していいものか迷う。しかし俺の頭では良い案は思い付かないし、どうせアルウィンは俺の護衛としてそばにいる時間が多いんだから協力してもらうしか道はないなと判断した。

「…なので、しばらく浄化魔法をやらせる方が負担は少ないかと」
「だが早く生活魔法くらいは使わせた方が良いだろう。水を温めるとか灯りをつけるとか、便利なものを覚えさせることで眠っている魔力に影響を与えさせたい」
「しかし1日1つしか使えないのなら魔法をかける対象が大きい方がより魔力を引き出せるかもしれません」
「それは一理あるな…ふむ、ならばこの1週間はまず浄化魔法のみをやり続け、1週間後の魔力量の変動によってその後を決めることとしよう」
「同意見でございます」

    2人の熱い議論は終わったようだ。俺のために真剣にいろいろと考えてくれている姿にじーんと胸が温かくなった。2人の意見を聞いていたことを首を縦に振ってアピールし、俺は口を開いた。

「分かった!1週間は浄化魔法だけを使ってみる!2人とも本当にありがとう!」
「ふん、調子にのって間違っても1日2つ使おうとなどするなよ。死にたくなければな」
「もちろんしないよ!ねぇ、話は全然変わるんだけどあの塔に第二王子っているんだよね?」
「あぁ、そうだが?突然何の話だ」
「ほら、第二王子にまだ会ったことがないからさ。ちなみに王妃にも会ったことないし、ご挨拶とかしなくていいのかなぁって思って」
「なんだ、母上に会いたいのか?母上は後宮の問題をまとめるので手一杯でお忙しい。お前に会っている暇はないぞ」

    この国ではどうやら女性は政治に関与してはならないという法律があるようで、王妃は普段、社交の場にたまに出るものの普段は5つの後宮で起こる問題事の対処や環境作りに尽力しているらしい。
    だから中々王宮には来ず、国王と会うには国王自らが後宮を尋ねるそうだ。しかし国王が尋ねたとなると嫉妬の渦が巻き起こり問題の種となるため、中々夫婦の時間は取れないんだとか。
    ライナス王子も同じく、後宮にはライナス王子目的で入った妾などもいるため、あまり近寄らないようにしているそうだ。女性の嫉妬ってそんなに頻繁に起こって恐ろしいものなのかと話を聞いただけで武者震いした。

「じゃあ第二王子には会えないかな?ずっと療養しているなら外にも出られなくて1人寂しいかもしれないし、話し相手くらいにはなれると思うんだよね」
「ミト、国王様ですらデロリー様に許可を貰えず中々会えないと言っていただろう。第二王子への面会を希望するならデロリー様に頼んでみるしかないが、希望は薄いと思う」
「…そうだったね」
「駄目元でデロリー様に聞いてみようか」
「それはやめておけ!おい、お前も余計な真似をしようとするな。第二王子は療養しているのだ。お前が訪問したせいで病状が悪化したら何を言われるか分かったものじゃないぞ」
「た、確かに…アルウィン、ありがとう。やっぱり王子の言う通りだから宰相には何も言わないで大丈夫。早く良くなるのを願うしかないね」

    ライナス王子の目が余計なことを言うなとお怒りになっているのがひしひしと伝わってくる。これでアルウィンが宰相に言っていたら、余計に宰相を警戒させて俺は狙われることになるかもしれない。
    しかし簡単にアルウィンが第二王子への面会希望を宰相に聞こうかと言い出したということは、アルウィンは第二王子の秘密について知らない可能性が高いなと思った。まぁ、そもそも第二王子に何か秘密があるということも推測でしかないから的外れの可能性もあるが。

「僕はまだやるべきことがあるから先に戻るぞ。いいか、決して余計な真似をしようとするなよ?」
「は、はーい…今日は忙しいのに来てくれてありがとね」
「なるべくお前の魔力量を増やすために時間を作るようにはするがそれでも僕はかなり忙しい身だからな!おい騎士、しっかりとこいつが暴走しないよう見張っておけよ」
「かしこまりました」

    瞳を光らせながらライナス王子が去っていく背中に手を振る。最後の言葉は、俺が魔法を使いすぎたり魔力暴走をしないようにするためでもあり、俺が勝手に第二王子に会いに行くことがないように、の二重の意味が込められているんだろうなと苦笑する。

「ミト、そろそろ喉が乾いただろう。魔法を使い始めの頃は喉の乾きや空腹も早い。夕食にはまだ早いが、軽食でもとろうか」
「言われてみればそうかも。ありがとう、アルウィン。本当に浄化魔法が使えるようになっていて嬉しくて舞い上がりそうだから、俺が暴走しそうになったら止めてね」
「もちろんだ。あれだけ頑張ってきた事がようやく実を結んだのだから舞い上がる気持ちも分かるがな。俺も自分の事のように嬉しい」

    さらりと俺の頭を撫でながら優しい笑みを浮かべるアルウィンに胸がキュンとする。頬の傷跡が屋根の隙間から入った夏の日差しに照らされていて、神秘的だと思った。

「そういえば今朝、エレノア様からまた文が届いていた。返事の手紙を書くか?」
「あ、そうだね!そうする!」

    軽食を食べたら早速エレノア様の文を読んでお返事を書こうと決めながらアルウィンと歩き出して、唐突に閃いた。第二王子に会うために一番良い方法があるではないか、と。
    俺は早速手紙の文章を考えながら、心の中でライナス王子に手を合わせた。7年も会っていないという第二王子に秘密がないわけがないから、何としてでも会いたいのだと言い訳をして。問題は、隣のアルウィンに打ち明けるか、打ち明けないかだった。

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